3,天災がもたらすもの
朝食が終わると移動が始まる。馬車には商品と物資、休息中の傭兵さんが寝ているので、活動中のメンバーは徒歩になる。
交代で何人かが馬に乗って移動するみたい。
みんなある程度荷物を持っているけど、私は自分の布鞄だけだ。
まぁ鞄の中には水袋とロープ、大きくて重い革袋しか入っていないけど。
革袋を乾かしたことで少し軽くなったような気がする。
踏み固められたでこぼこ道は思ったよりも歩き難くて、私は数時間で息が上がってしまった。
みんなは重そうな荷物を持っているのに、私が真っ先に音を上げたら迷惑を掛けちゃう。
そう思って頑張っていると、馬に乗ったラズロウさんが近寄ってきて言った。
「だいじょぶかぁちびっこ? はぐれたら危ねんだから、無理そうならそう言いやがれ」
「だ、大丈夫です。ちゃんと歩けますってうわぁっ!?」
問答無用とばかりに首根っこをひっつかまれて、馬の上に持ち上げられてしまった。
「怪我だって簡単に治るもんじゃねんだから、子供が無理すんな。歩けるかも知れねえが、もう遅れそうになってんぞ」
言われて気が付くと、いつの間にか私は隊列の後ろの方に位置していた。
最後尾から馬で警戒していたラズロウさんだから気が付いたのかも知れない。
「ご、ごめんなさい」
「まったく。お嬢ちゃんにゃ働いてもらわないといけないんだから、倒れられたら困るんだっつの」
ラズロウさんは私が落馬しないように片手で支えてくれながら手綱を握りなおした。
ラズロウさんは優しいけど何と言うか、素直じゃない感じの人なのかな。ツンデレか。
お言葉に甘えて、素直に休ませてもらう事にした。
ラズロウさんに背中を預けると、私の頭の上でラズロウさんが安心したように息をつく。
やがて太陽が私達の真上に差し掛かる頃、空には黒い雲が垂れ込み、すっと気温が下がり始めた。
元の気温は高くなかったけれど、なんだかゲリラ豪雨の前触れみたい。
「雨が来そうですね」
「ああ。しかもかなり厄介な雨だ」
私が言うとラズロウさんが忌々しげに言った。
厄介な雨っていうのは何だろう。豪雨は確かに厄介かもしれないけど、旅の間は独特の嫌さがあるんだろうか。
やりとりのすぐ後にはもうぽつりぽつりと粒の大きい雨が落ちてきた。
私の頭にぼすっと何かが被せられる。
うっかり悲鳴を上げると頭の上から心外そうな声。
「予備の帽子だ。かぶっとけ」
ラズロウさんが予備の鍔広帽子を貸してくれたのだった。
ツンデレおじさんめぇ。ありがとうございます。
やがて雨足が強まり、大きな水滴に重い物が混じるようになっていった。
私の腕に雨にしては重い、まとわりつくようなものが当たったので目をやると、茶色い泥が肌を汚していた。
「えっ?!」
「嫌な予想が当たっちまったな」
ラズロウさんが舌打ちして、馬から降りた。
「ここからは歩く。馬から降りるぞ」
そう言って馬から抱いて降ろしてくれたラズロウさんも、あちこちが泥で汚れていた。
◇◇◇◇◇
強い風が雨と泥を私達の身体に叩き付ける。
今回の雨は私が思っていたような豪雨じゃなかった。
この世界にはファンタジーな悪天候や災害がいくつもあり、私達が遭遇したのは「泥嵐」と呼ばれる酷い天候だった。
豪雨に加えて降り注ぐ泥は当たれば痛いし、泥が積もる訳だから移動は困難になる。
馬車の車輪が埋まり、滑って動けなくなることも。簡単に取り除けないし、雪と違って溶けもしない。
ラズロウさんの言う通り、「厄介」だった。
「くそっ、このままじゃ泥に埋まっちまう!」
フレイさんが馬車を押しながら、盛大に悪態をつく。
壁や屋根のある野営地に着くか、雨宿りが出来そうな地形を見つけないと本当に泥に埋まってしまいかねない。
幸いなのは危険な野生動物が災害を察知して出て来なくなることだ。
もはやそれ以前の問題になりつつあるが。
休んでいた傭兵さん達も馬車から降りて、泥に難渋する馬車を押したり、馬の身体から手で泥を落としたりしている。
みんなが全身泥だらけだ。
私とラズロウさんも馬に泥がなるべく当たらないように盾になった。
「ぶぁっ!」
私の顔に泥の塊が直撃して、目に入った。
目が痛い!
たまらず〈洗浄〉を自分に掛けると、瞬間的に私の体が軽くなり、目の痛みが消えた。
〈洗浄〉が泥を取り除き、私のすぐ近くに泥の山を築いたのだ。
手で顔を守りながら周りを見ると、積もった泥でどこが道なのかがさっぱりわからなくなっていた。
「ハルザーンさん! 泥から身を守らないと、道がもう見えねぇ!」
「こんなとこで止まっても生き埋めになるだけだ! せめて壁のある地形を探せ!」
誰かが叫んでいる。
泥嵐によって生き埋めになる、なんてことは珍しい事ではないという。それにしてもこんなに急に天候が変わるなんて。
隊商全体に緊張感と焦燥感が漂う。
その時誰かが叫んだ。
「おぉーいこっちだ! デカい木がある!!」
「よしっみんな馬車をあっちに動かすぞ! 手を貸してくれ!!」
私とラズロウさんが馬車の方に行くと、車輪が泥に埋まり、それを曳く馬が恐怖でいなないていた。
少しでも進みやすくなるかと車輪の辺りと馬に〈洗浄〉を使うと、少しは落ち着いて言う事を聞いてくれるようになった。
御者のゴーリーさんの表情が明るくなる。
しかし次々と横殴りに降る泥の雨で、すぐに同じような状態に戻ってしまう。
取り除いただけじゃだめだ。
泥を風上に寄せて壁を作ったら、車輪を守れないだろうか?
〈洗浄〉によって取り除いた泥を一方向に積み上げて泥の壁を作っていくと、車輪だけは何とか守ることができ、移動自体はだいぶ楽になった。
大木の下にたどり着くと、みんな大きな泥人形のようなありさまだ。
ここにはまだ泥の雨は吹き込んできてはいない。
「まだ何人かいないな。二台目の馬車の方か」
ゴーリーさんがそう言うと視界の悪い泥の雨の向こうに、もう一台の馬車の影が見えた。
二台目の馬車を助けに再び泥の雨の中に飛び込むと、今度はベルナールさんがついて来てくれた。
盾で泥から守ってくれるのは助かる。
大きな泥の塊が私にあたれば簡単に転んでしまうからだ。
泥まみれのまま泥の中に転んでしまえば、自分で起き上がらない限りは見つけてはもらえないだろう。
強く内包魔力を込めて有効距離と効果範囲を広げた〈洗浄〉で二台目の馬車と周りのメンバーが歩きやすくなるように泥を取り除き、低くとも壁を作る。
さらに改めて〈洗浄〉を重ね掛けて、大木までの道を示すと、隊商のみんなが騒がしく集まって来てくれた。
「あぶねぇ、マジで死ぬとこだった!」
「泥嵐は何度か遭ったが、今回は場所が悪すぎたな」
ホントですね。
馬車と馬の泥を〈洗浄〉で取り除き、馬車の脇に積み上げる。
馬車と大木を遮蔽にして、何とか緊急避難場所を構築した。
ファルナさんが〈水の防御円〉の魔法を使って雨からの防御結界を作ってくれた。
これでこの避難場所に強い雨が吹き込むことはなくなった。
本来の〈水の防御円〉に比べて少し広い範囲で、魔力を強く込めたらしい事がわかる。
馬車の脇に積み上げた泥の壁に〈乾燥〉を使って、泥に対する防壁に変えてから、周りに呼び掛けて、みんなに〈洗浄〉と〈乾燥〉を使って回った。
「おぉっ全身泥まみれでもうダメかと思った。荷物は無事か?」
「こんなぐちゃぐちゃなまま、ここで野宿かと思ってげんなりしてたんだ。ありがとうなシロクロ」
「シロクロさんがいてくれて良かった。僕の素材がダメになってないか気が気じゃなかったよ」
役に立てたようでなにより。
役立たずの落ちこぼれって言われ続けたから、こうして面と向かって感謝されると、すごく嬉しい。
何人目かの〈洗浄〉でまだ話したことがない女性に話しかけられた。
泥が取り除かれると長い赤毛をポニーテイルにまとめた、金属鎧をまとった姿が現れた。その背に私の身長よりも大きな、包丁のような見た目の総鉄製の巨大剣を担いでいる。
「生活魔法ありがとうね! あたしは傭兵のヴィクトリア! 旅の間にあんまり汚いと肌や髪が荒れたりするからマジで助かったわ!」
満面の笑みで手を握られて、ぶんぶん振られた。
装備の傷みとかじゃなくて髪や肌の方が大事なのが年頃の女性っぽくて面白い。
「は、はじめましてシロクロです」
「シロクロちゃんね! なんか困った事とかあったら言ってね!」
そう言うとヴィクトリアさんは手を振って傭兵達の集まったあたりに去っていった。
背が高くて、引き締まって盛り上がった筋肉が格好良い女の人だった。
ヴィクトリアさんを見送っていると、向こうでファルナさんの白蛇が、こっちに顔を向けて舌を出し入れしていた。
◇◇◇◇◇
食事を作る際に包丁の切れ味が良くなっているだろうとダルさんに伝えると、試しに野菜を切って相当驚いた顔をしていた。
「す、凄い切れるようになってる! これも魔法なのかいシロクロちゃん?!」
「や、これは普通に研石で研ぎました。ダルさんもまめに研いだ方が良いですよ? 今回はちょっと水の方を確認させてもらっていいですか?」
「そりゃあ構わないが……水に泥が入ってないかって事かい?」
「ひょっとすると水が少し違うかもしれなくて……水って地域によって質が違うんですよ」
「へぇ……? それで、料理が変わるもんなのかい?」
「そうですね。どのくらい質が違うかにもよりますけど」
水樽に〈鑑定〉魔法を使うとこれまでとは明らかに違う内容の鑑定結果を得ることが出来た。
訓練場で〈鑑定〉を使っていた時は大した情報は出なかったのに、前世の知識が関係しているんだろうか?
(硬度300㎎/l。少し独特の苦みを感じるが毒はない)
硬度とか分かるんだと思って少し笑ってしまった。
ただまぁ〈鑑定〉の精度が上がったなら良い事なので喜ぼう。
確か硬度はミネラルが多く含まれている事で上がるので、〈抽出〉を上手く使えば硬度を下げられるかもしれない。
硬度を60㎎/lより下げられれば出汁が出やすく、飲みやすくなるはずだ。
出汁の取り方を確認して作業に入ってもらい、私は水樽を確認する。
うろ覚えの知識だけど、硬度を下げる手法はいくつかある。一つは蒸留する事で水だけを取り出す事。純水にするという事だ。
純水は混じりっ気のない水だから、究極の軟水であるとも言える。でも綺麗すぎて余計な雑味まで引き出したり洗髪に使うとキシキシするって言われてる。
他の手法では硬度成分を取り除く代わりに、別の何かを水に与えるっていうのがあったハズ。この代わりの何かが与えられることで、軟水には薄っすら甘みが出たりとろみが出たりするという仕組みだ。
問題はこの代わりの何かが何だったかなー、という事。
手元にあるものを見回してみると、小瓶に入れられた茶色みがかった塩が目についた。
塩……なるほど塩化ナトリウムなら良いかも知れない。
中学生くらいの時に水につけたナトリウムが水面を火を噴きながら暴れる実験をした記憶がある。
あの時は「こっわ……」と思うと同時に科学の先生の「ナトリウムは超寂しがり屋だから一人にするとこんな風に発狂する」という説明で何となくキャラ付けして覚えちゃったんだよな。科学の先生ありがとう、名前覚えてないけど。
鍋一つ分の水を取り分けてから低レベル魔法〈抽出〉を使って硬度成分を少し取り出すと、手の中に白い粉状の物が一つまみに満たないくらい生まれた。
同じくらいの塩を投入して生活魔法の〈撹拌〉を使ってぐるぐるする。取り出した分だけ足したら良いだろうという雑な決め方だけど多分大丈夫でしょ。
ダルさんが材料を切りながら私の作業を観察していた。
「それはいったい何をやってんだい? 塩水を作るのか?」
「うーん、これはどっちかっていうと錬金術的な事ですかね。錬金術はちょっとしかかじってないので説明しにくいですが」
「あとで僕にもできる事なら、話を聞かせてよ。たとえ失敗したとしても興味がある」
塩が溶けきったところで小皿で水を味見してみた。うん。無味で舌触りが柔らかく感じる。
ダルさんにも味見してもらおうと思ったら、もう期待した顔でこっち見てたわ。
「味見してみてくださいダルさん。しょっぱくないと思いますよ」
「……本当だ。塩が入っているとは思えない。ほんの少しいつもと舌触りというか、味が違う気はするね」
「この水で出汁を取ってみましょう。きっと変化があると思いますよ」
上手く行っていれば出汁が出やすく、灰汁が出やすくなっているはずだ。灰汁取り頑張ってもらおう。
私は続いて小麦粉を使って良いかを聞き、麺とまではいかなくても「すいとん」くらいの具を作ってみようと考えた。
「小麦粉って事はパンでも作るのかい?」
「今回はもっと手軽にすいと……小麦粉を練ったものを具にしてみようかと思いまして」
「小麦粉を練る……? パンや麵は解るが、それは美味いのか……?」
「ちょっとだけ塩を多めに入れると塩味が素朴で美味しいですよ。これをそのお出汁で煮るんです」
ダルさんは今一つ納得出来ていなさそうな顔で、私が作る小麦粉団子を眺めていた。
「すごく綺麗に同じ大きさにするね。潰して平たくするのは何か意味があるの?」
「薄くする事で火の通りを良くするんです。生煮えは美味しくないですから」
「なるほど、綺麗な丸の方が良いのかと思ったけど、そういう意味があるのか」
緊急避難所の周りの強い風と泥が土の防壁に当たる音を聞きながら、鍋が沸騰しないようにダルさんと慎重に調理を続けた。
「この、灰汁? っていうのはたくさん出て来るけど、なんなんだい?」
ダルさんがお玉で灰汁を取り除きながら、聞いてきた。
「これはお肉や野菜の……なんて言ったらいいかな。とにかく食べたら美味しくないものが出てきてるんだと思ってください。丁寧に取り除いたら、その分臭みや雑味が減って、見た目も綺麗な、美味しいお出汁が出来ます」
「〈洗浄〉で取り除く事は出来る?」
?!
ダルさん凄いこと思いつくなっ?!
出来るだろうか。出来そうな気はする。
「思いつきませんでした。……たぶん出来ると思います。でも実験は後でやりましょう。もし失敗して味が無くなったら大惨事です」
「そんな事になったら今日は一段と恨みを買いそうだ。良いアイデアだと思ったんだが」
「良い結果になったら次から楽できますねー」
そう笑いながら調理していたら暇を持て余したのか、マルクスさんとゴーリーさんが様子を見にやって来た。
マルクスさんは急にご飯が美味しくなったことに興味が沸いて調理を見に来たと言い、ゴーリーさんはなんだろう?
「材料は別に普段と変わらないんですよねぇ。何が違うんです? あ、秘密だとかそういう事なら無理に答えなくても良いですからね? 僕はこの香草が料理の味に影響を与えた事が興味深くてですね、これとか薬草なのに料理に使われるとかもう……」
マルクスさんスゴイ早口っていうか近いです近い近い。
「私の故郷では沸騰させずに煮ることで、材料の味を引き出す調理法があって大体何の材料でもやっちゃうんです。丁寧に下処理して灰汁を取り除く事で臭みや雑味を無くすんです」
「ほう、大体なんでも! つまり肉や野菜だけでなく薬草などでも同様に?!」
「なんだったら骨とか」
「骨?! 骨を食べる事も可能だと?!!」
「さすがに骨までというのは一部の魚くらいですかね」
「魚ですか! 魚が美味しいと思った事はないですが魚は骨が美味しいのですか?」
「うーんどんな料理かによりますが、長時間じっくり煮込むことである程度小さい骨を柔らかくすることが出来たような。専門家なら詳しい事を知っているかも知れないです」
マルクスさんがどんどん迫ってくるので、引きながら答えているとダルさんがマルクスさんの首根っこを掴んで「いい加減にしろ、飯が作れねぇだろうが」と引っぺがしてくれた。
「そういえば調理中でしたねぇ、これは失礼」
ダルさんのおかげで正気に戻ったらしいマルクスさんは「またお話を聞かせてくださいね」と機嫌良く戻っていった。
ラズロウさんの言っていたのはこういう事だったのね……。
味見しながら塩を足したところで、調味料の箱の中に紐で厳重に封印された小瓶があるのを見つけた。
「この呪いでも封じたみたいな小瓶は何ですか?」
ダルさんに聞いたつもりだったけれど、応えてくれたのはゴーリーさんだった。
「そいつぁ超高級スパイスだ。その小瓶だけでも同じ重さの金貨と同じ価値があるが、うまく使いこなした料理は見た事がない。下手に触るなよ?」
同じ重さの金と同じ価値……胡椒じゃん。え、この世界インドあるの?
「これ、マルクスさんは知ってるんですか?」
「あいつには言うなよ。珍しい物と見れば何をしでかすかわからん」
なんかもう持ってるかも知れない気もするけれど。
それにしても胡椒か。私も欲しいなぁ。
「ところで」
ゴーリーさんが神妙な表情で言った。
「シロクロ。お前さん今日、何回生活魔法を使った? 十回二十回どころじゃなかったな?」
「回数は数えてないですけどだいぶ使いましたね」
「生活魔法で小遣い稼ぎしてる連中でも片手の指で足りるくらいしか使えないんだ。お前さんは明らかに常識はずれだ」
しまった。普通の人がどのくらい魔法が使えるかわからないうちに、思わず使い過ぎたみたい。
でも今回は命の危険もあったし、使える魔法を使わない訳にはいかなかった。
さすがに気味悪がられて、ここで追い出されちゃうかな……。
みんな良い人だし、追い出さないで欲しい。
どう役立つかをアピールできたら何とかならないかな……。
瞬間的に不安と警戒が頭の中を駆け巡ったところにゴーリーさんが言葉をつづけた。
「常識はずれだが……今回は正直助かった。お前さんがいなかったら少なくとも片方の馬車と、馬も何頭かやられていただろう。商品もだ」
えっ。
「だから今日くらいは飯を腹いっぱい食っていいぞ。魔法を使い過ぎると腹が減るって聞くからな」
「あ、あのっ。私、ここにいても良いんですか? 気持ち悪いって追い出したり、しませんか?」
あまりにも都合の良い展開に聞き直してしまう。
ゴーリーさんとダルさんが同時に答えてくれた。
「お前さんは命の恩人なんだぞ。追い出すわけないだろう」
「気持ち悪いなんて思わないよ、もっといろんな話を聞かせて欲しいくらいだよ!」
あっ良かった、大丈夫そう……。
そしてゴーリーさんが言ってくれた。
「ありがとうな」
視界がにじむ。
ずっと役立たず、落ちこぼれって言われてきて感謝なんてほとんどされた事がない。
ラズロウさんに借りた帽子越しに雑に頭を撫でられたおかげで表情がゴーリーさん達からうまく隠れたのは都合が良かった。
「だからしばらくお嬢ちゃんには頼らせてもらうからな。よろしく頼むよ」
「ハイっ、きっと役に立って見せますね!」
帽子で顔が隠れたままだけど、元気に返事が出来た、と思う。




