↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
役立たずちゃんの地味魔法脱走劇  作者: 兵衛門


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/16

14,情報収集

 シロクロの情報を聞くために、ここに売られてきていた魔法兵器、デュランとの面談をアヤメが要望すると、それは翌日に叶えられた。

 客間の一つに案内され、それから少し遅れてデュランとその世話役のモラニスがやって来た。

 アヤメは立ち上がって挨拶する。


 「モラニス先輩、お久しぶりです。トラブルで到着が遅れました」


 挨拶を受けてモラニスが片手を上げて「堅苦しいのは好みません。座ってください」と、背筋を伸ばすアヤメを制した。


 「遅れたと言っても泥嵐があったという報告はこちらにも届いています。大変だったでしょう。服もしわだらけになっていますよ。本題に入りましょうか」


 モラニスが座る前にデュランは適当に座ってしまっていて、アヤメとモラニスは同時に座った。

 アヤメは二人を見比べるようにしながら話し始めた。


 「今回の追跡調査は『シロクロ』と呼ばれていた第五期魔法兵器実験の欠陥品を対象にしています。対象は落第判定後、狩猟訓練の獲物とされ、ジョウゼンが崖から落ちたところまで確認しました」


 モラニスが頷きながら語を継ぐ。


 「ところが落下死したと思われたソレは生き残ってデュランの前に現れた、ということでしたね。ソレと遭遇した時のことを説明できますかデュラン?」


 話を振られたデュランは片眉を上げて訝しげな表情だ。


 「ちょっと待て。シロクロは主人と思われる連中と行動しておったぞ? それが落第判定だと?」


 モラニスが「ええ」と答えた。


 「成績データも残っています。標準的な人間の魔法使いと同程度か、それ以下の威力。しかも連続発動を続けたら、ほどなく体調不良になったと。これでは売り物になりませんね。そこらの魔法使いを雇った方が安上がりというものです」


 モラニスがそう断じると、不服そうにデュランが言った。


 「まぁ、あいつは確かに戦闘はからっきしだったが……」


 なんとなく長くなりそうだと思ったアヤメは行儀悪く割り込んで、聞き方を変えてみることにした。


 「そのシロクロを最後に目撃したのはどこです? 今どこにいるか、わかりますか?」


 気を悪くする風でもなく、デュランは快活に答えた。まるでその質問なら簡単に答えられるとでも言いたげだ。


 「わしが最後に見たのは四~五日前、南広場の朝市でだ。二人の男が子守でもするみたいに一緒にいた。どこに逗留しているかまでは分からん」


 デュランの言葉を補足するように、モラニスが前髪を掻き上げながら言葉を継ぐ。


 「それらしい子供を連れた行商人が三日前に東門から出ていきました。恐らくハルザーンキャラバンという隊商ですね」


 アヤメは身を乗り出して行き先を聞いたが、モラニスは肩をすくめるだけだった。

 それ以上は知らないという事だ。



 ◇◇◇◇◇



 木造平屋建ての小さな納屋。

 それは風雨を避けて物を仕舞っておけるだけの機能しかない粗末な小屋で、私達は数メートル離れた所から、その小屋を観察していた。


 屋根と壁の間に風を通す為なのか、結構な隙間があり、そこから巨大な蜂が出入りしている。

 帰って来る蜂の後ろ脚には花粉が大きな塊のように固められていて、シロクロは胸の内で「っしゃ!」と拳を固めていた。


 しかしあの巨大な蜂が蜜を吸えるようなサイズの花があるのだろうか。

 そんな花があるなら、目立ちそうなものだけれど、少なくとも見た事はない。


 ラズロウさんが納屋から視線を外さないまま、言った。


 「結構出入りが激しいな。四方すべてから出て来るが、北の方に飛んでいく個体が多い。思っていたより速度があるから、あれを打ち落とすのは厄介そうだ」


 私が何か言う前にバスキアさんが「というか無理なんじゃないか」と苦笑した。


 「普通のミツバチのような数ではないようだが、あの納屋を開けたら一斉に攻撃されるかもしれん。あのサイズの蜂なら、針も釘くらいの大きさがありそうだ」


 あっ、このままだと断られちゃう。

 そこで私は小さく手を挙げて「はいっ」とみんなの注意を引いた。


 みんながちらと私に視線を投げてから、納屋の方に視線を戻した。


 「ミツバチと同じなら、夜には巣に戻って大人しくしていると思います」


 「虫除けでも巣にぶち込むか?」


 「あー……それはやりたくないですね。怒った蜂が一斉に、なんてそれこそ自殺行為です。大きな布を壁と屋根の隙間に巻き付けて、蜂の出入口を塞いではどうでしょう? 布が膨らんだら、槍で一突きという事なら比較的安全に出来ませんか?」


 バスキアさんが「そんな大きな布はないんじゃないか?」というので、私も少し悩んでしまった。

 漁村なら網もあるだろうけど、ここは火山が見える丘陵地。


 うーん。


 私が唸っていると、今まで黙っていたファルナさんが「ねぇねぇ」と言い出した。

 何か妙案がありますか?


 「〈蜘蛛の巣〉の魔法を使ったらどうかな。うちだったら一時間半くらい保つよ」


 〈蜘蛛の巣〉!

 べたつく糸で出来た網を作る魔法だ。なるほどアレなら蜂を飛ばさずに処理できるし、処理が終わったら解除する事で消す事も出来る。


 「それです! ファルナさん、天才なんじゃないですか?!」


 「えへへー。シロクロちゃんも使える? 〈蜘蛛の巣〉」


 「私も一時間ちょい保たせられます!」


 小声で喜んでいると、ラズロウさんがピッと手を挙げた。


 「はいラズロウさん」


 「解決できそうなら今からやっちまうか?」


 待って待って待ってw

 

 「ちゃんと契約してからにしましょう。全員揃っている訳でもないですし、これから帰って来る蜂もいるはずです」


 こうして私達はデメテリアさんと契約し、巣とその内容物の撤去までする代わりに、それらは私と傭兵さんの報酬にするという事になった。もちろんそれとは別に、比較的安価に駆除の代金が傭兵さん達には支払われる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。