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【作品打ち切り 改訂版に移行しました】ニートな俺が山でスキルを習得させられて強くなったし、お金が必要なのでダンジョンで働きたいと思う  作者: MRプロジェクト
ゴブリン集落戦

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06.小鬼、猿如く

 問い詰められ、沈黙が続く。和解という打開策である「妙案」は一向に出ないまま草木の音だけが俺たちの耳をただ、撫でた。


「……もう帰るだけの体力は回復しましたよね。行きましょう」


 そうして、問い詰めは終わりなのだろうと思い帰ることを提案したところで、狭山さんは漸く口を開く。


「いや、あの、まだ話は終わって無いです」


 そう、小さい声で言うと狭山さんは声をつまらせつつも狼狽えながらはっきりと発声した。


「逃げないで下さい。あなたは、一体何者なんですか」


 瞬きのない目で、しっかりと見つめられる。

 あなたは何なのだと、問いただして。


「話をはぐらかして、言及を曖昧にしないで下さい。貴方が私達が想像のつかないほどの力を持っていることは分かりました。ですが、それは「現状」で、それを知ったと言う「結果」なだけ。私が……いえ、私たちが知りたいのは、貴方は何者なんですか」

「だから人間ですって」


 そう、俺は言っている。これで2度目だ。

 俺は人間だ。それに間違いない、正真正銘の人間。


「そもそもですよ、レベルという概念が存在しちゃったんですよ。こう言うことくらい暫くすればインフレしますって」


 と、冗談めかして(おど)けた雰囲気で弁解する。

 例えば、初レベルアップなら「どんな魔物でも」一匹で1レベルになるらしいし。


「たしかに、レベルという概念があることはわかってます。ですが、あなたのそれって、どう考えてもダンジョンによるものじゃないですよね。なんたって、今日が初めて冒険者として活動するわけですし」


 そういうと、風が肌をひとなでした。

 狭山さんは吹き上がった髪の毛を搔き上げると、再び俺を見つめる。


「…………はぁ。何といったらいいんだろう」


 うまく事を伝える。

 たとえそれが出来たところで、それは伝わったと言うのか。


「……僕は人間です。地球育ちの日本人男性。何度でも何度でも訴えます。僕は人間です」

「嶋崎さん。人間は脆いんですよ。アレが人間とか、人間は何なんだって話です」


 ギラリ


 そう、睨みつけられるかの如く___否。そう、たしかに蛇にも睨まれているかのような圧迫感があるこの「現状」。睨まれていない、ただ見つめられているだけだと言うのに睨まれていると言う錯覚。


 手に汗が。口が乾く。

 息は出来るだけ整わせる。

 だが、頬を伝うこの一筋の汗は隠せない。


「じゃあ僕が人間である事を証明するためにどうしたら信じてもらえますか」


 なんとなくそう吐いた言葉。それには何処か、デジャヴを感じるものがあった。


 それは確か、エレンが俺に問いかけてきたときのような。それに、怯えた自分を思い出す。


 そんな事を思い出しながらも、自然と話は続いて行く。


「そうですね___」


 狭山さんは小さく一息つき、息を飲み込み、吐き出して___


「そんなもの、知らないですよ。化け物が人間である証明をするなんて。逆に貴方をどう信じろと」

「……」

「私は、私達が見たあの姿が、貴方という何かと考えていますので」


 その言葉に心音が早まり、強く脈動する。


 手は鞘にかけられる。


「貴方は何ですか」

「……」



 そして___



 俺は剣を振り抜いた。


「きゃっ!?」


 その悲鳴が小さな木霊を放つ。


 狭山さんは突然なことに尻餅を付き、剣を落とす。その際にフワリと舞った髪の毛は2、3本散った。


 そのかわりというには汚いが、俺と狭山さんにはどちゃりと血が身体に付着していた。


「狭山さん! 大丈夫ですか!?」


 血を払い、森に振り向くその背後で、そんな言葉が掛けられていた。でも、分かるだろう。そこに転がる生首、ゴブリンの頭があるならどういうことが起きていたのか。


 そしてこの時、俺は納得していた。


 ゴブリンたちの移動が早かった理由。

 それは、猿のように木々を伝い、移動していたからだと。

 鋭利な爪には木の皮が薄く付いていることが何よりもの証拠だ。


 俺は荒立つ気持ちを整えて、目の前の魔物を見据える。


「皆さん、河田さんを連れて帰って下さい」


 剣を八相に構えて、魔力を作る。

 循環する魔力素はとても暖かで穏やかで、まるで包み込んでくれるかのような落ち着きをくれる。


 ゴブリン程度なら俺1人で何とかなる。


 事に意気込み、右足で草をちぎりながら下がらせていつでも飛び出せるように構える。

 魔物はもう近くにいる。


「……わかりました。助けて下さってありがとうございます」

「狭山さん!?」


 すると、了承して去ろうとする狭山さんに、川端さんは驚いていた。

 と言うよりも、周りの人も同じように逃げようとしていたことのほうにより驚いていた。


「わ、私は残りますからね」


 そう1人豪語する川端さん。


「川端さん、貴方が一番邪魔なんです。帰って下さい」


 この中で一番戦力外なのは、はっきり言って川端さんがダントツだ。斧だし、数が多くなる戦闘においてそれは相手にとって大きなアドバンテージになる。

 それ以前に、俺が自由に戦う上で邪魔だと言うこともあるが。


「それは認めることができませんね。だって、私たちは仲間ですよ」


 そんなの今は知らない。帰れ。


「帰って下さい」

「何でですか!」


 流石に数が多いからだよ。帰れよ。


「帰ってください」

「いやですよ、見捨てられません!」

「ほんと、邪魔だから、帰ってくれ。逃げてくれ。お願いだ。お願いします」


 ガサガササ___と草木が音を立て。

 タンッタンッ___と木を飛び移る。


 その音は鮮明に、間近に迫っている。


「ギャシャァアア!!」

「シィィァ!!!」


 距離的に30mもない。

 ゴブリンの青白い眼光は俺たちを確かに捉える。


「……帰って下さい。注意は促しましたから、邪魔をするならしりませんよ」


 死んだって。

お読みいただきありがとうございました

悪魔の証明……

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