05.問い詰め
「終わりました。早く行きましょう」
剣を納めて振り返る。
今も体内で迸る、微電流。
身体が痺れるそれは、ついさっき無理やり筋肉を活性化させる為にした代償。暫くしたら治るが。
「し、嶋崎さん……今のはなんですか」
やはり周りの人の異常を見る目が突き刺さる。怯えながら、何かを知ろうとする人間独特の好奇心。
「……」
俺はなにかを言うべきなのだろうか。
あれは、人間が出せる力を90%まで引き上げる半諸刃の技……と。
そう言ってそれが伝わるかと言えば、絶対に伝わらないことは目に見えている。
だから、今は無視するほうがいい。問い詰められるのは後でいい。
「早く行きましょ、死にますよ」
その言葉を聞くと、はっと___今まで忘れていたみたいにみんな走り出した。
多分、異常な俺の言葉だ。逃げないと死ぬという事に信憑性がついたのとこなのだろう。
「はぁ……」
溜息をついて頭を軽く掻いた。
だから先に行ってて欲しかったんだ。
この状況は面倒で怖いから。
でも、それは結局のところ他人のせいなのだろう。
これが導き出した結果。皆んなを殺したく無いという強欲に浸った俺が悪い。前もそうだったのに、学習しなかった俺が悪いんだ。
覚悟してからすれば良かったと、拳を強く握って走り出した。
巨大ゴブリンとの戦闘から20分後。
俺たちは森の出口を見据えられる距離までに近づいていた。
「……」
そして、漸く森から出ることができた。
「皆さん、もう森を越えたので歩きましょう。それと、嶋崎さん少しお話しよろしいですか」
狭山さんはそう汗を拭って言った。
他の人たちも汗をダクダクにしてへたり込んでいたりもしている___反対に俺は一汗もない。
疲れもない。
ここで、暴露するべきなのか。
それとも、黙秘し続けるのか。
どちらが正しい選択か、さっぱりわからない。
……でも、普通に考えれば、話した方が得策だろう。
「……いいですよ」
悠夜は両腕を組むと、近くにあった木にもたれ掛かってそう言った。
そんな悠夜の様子に、へばる男達も目を向けた。
狭山はそんな悠夜を片目に確かな確信を聞き出そうとした。
「では、さきの闘いでのアレはなんだったんですか。はっきり言って人間の動きじゃありませんよね」
今、アリージメントサーチは解除している。もう森を出ているし、あの山ならまだしもこんな開けた草原で敵が居たら目視だけで分かるからだ。
「はぁ……」
それで……なんと言うかやっぱり、素直に白状するべきなのか。
事実、隠せば余計に話が拗らそうな雰囲気だし。
まさか、こんな結果になるとは……。
話せない話。河田さんの暴走。大量の集団、これはもしかしたら集落なのかもしれない。
そして、あのデカイやつ以外のクリア出来ない感。
なんといっても、集団一つ5人以上の構成。配置間隔も戦ってたら次々に戦闘を繰り返してジリ貧になるところだったし。
デカイゴブリンから隠れたつもりだったが、見つかったし……。
本当ついてない。
深く、深くため息を吐く。
「……そう映るだけです。実際は人体活動力を無理矢理引き上げて動いただけで、直線しか走れないです。体の動きとしては、どちらかと言えばただの加速ですから」
いや、それが異常だと言うことは分かっている。
加速だのなんだのという言葉は、異常な様で、異常な話。
常人にとって「無理やり引き上げた」など、理解できるはずもない。だけど、話すしかなかった。
「あなたは、他にも力を記すことができますか?」
狭山さんは次に、追加してなんとも答えにくい質問をして俺を捉えにきた。
「……ありますよ」
「そ、それはどんな」
少し狼狽えたのか、言葉がつっかえていた。
「さっきのは出し惜しみでの結果です。まぁあそこまできたら、普通にこうなる事は自然な流れですね」
あの戦いの始めの段階は、本当にギリギリのラインで了解を取れていた。例に言えば剣道なども秒の世界として知られているから。
だが、時速何百の瞬間速度のアレはおかしい。
そんな事、おかしいなんて使う前から理解していた。
もしかしたら、隠れて過ごすということができれば今がなかったかもしれない。ただ、焦ったのは俺であることは忘れてはいけない。
この場で晒すことが俺の決断。たらればも意味を成さない。
「嶋崎さん。あなたは人間ですか」
素朴な……尤も、そんな事を聞かれる今が普通じゃないが、素朴な質問。
「人間です」
迷うことはない。それは間違えるはずがない事実。
「……証拠は」
「なんなら帰ったらMRIでも受けましょうか? それともアルバム、戸籍、住民票にマイナンバー、産まれた病院も教えましょうか」
はぁ……。
先が思いやられる。俺はこの先どうなって行くのか。
強さを生業とする職業、冒険者。
俺が強さを誇示した結果に今がある事だけは本当に忘れてはいけない。
どうやって和解するべきか、まだ検討はついていなかった。
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