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【作品打ち切り 改訂版に移行しました】ニートな俺が山でスキルを習得させられて強くなったし、お金が必要なのでダンジョンで働きたいと思う  作者: MRプロジェクト
ゴブリン集落戦

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34/63

僕は今後悔をする為に

山田さん視点です。

「あ、あの狭山さん、本当に帰るんですか?」


 僕は五歩先を歩く艶やかで長い髪の女性、狭山さんに聞いてみた。それに狭山さんは振り返る事なく淡々と足を運びながら答える。


「山田さん、私は帰ります。川端さんも逃げる気がないでしょうし、ほおっていきましょう」

「え……」


 自分から聞いていながら、ぽかんと口を開けた。

 それは辛辣、いや、その発言は人としておかしな発言であるからか。

 たしかに僕も、後ろ髪引かれつつも逃げているから何とも言えないが、でもこれくらいは分かる。「人としておかしな発言」と。


 心底腐った女性だ。僕はそう思った。


 ただ、そう言う僕も腐っていないとも言い切れない。だって同じように逃げようとしているのだから、当然だろう。でも、やはり思う。


「いや、でも、ほらっ。なんか気になりません」


 例えば、大丈夫かなー? って。

 言葉としては曖昧だ。


「何をですか? ……もし生死がどうか考えているなら聞きますが、あなたは嶋崎さんの異常性を理解して言っていますか?」


 それでも、しっかりと言葉を残す狭山さん。その言葉に僕はドキリと心臓を動かした。


「……バケモノ、そう思うのも、あなたも同じでしょ?」


 あの、無限の強さのような、あり得ない、力。反射能力……。それを知っているが故に言える、思える異常性。近寄りがたいと思うのも___違う。近寄りたく無いと思うのも普通であると。


「で、でも。助けに入るべきでは?」


 そう言っている僕だが、助けに行く勇気もないのに、助けに行かないの? なんて聞いている時点で人の意見に頼ってるし、自身の意思なんて元からないと言っているようなもの。


 僕は言い訳を言い訳に、言い訳を吐いているだけであると、自身でも分かりきっていた。


 バックから温くなった天然水を取り出し飲む。温いが、頭は少しだけクリアになった気がする。


 僕は渋々と自身の意思であの場から逃げているし。

 遠目からでも、戦いの激しさが見えると言うのに。助けに行こうともしない。

 情けない。


 そんな事を思っていると、さっきの話の返答が来た。


「あなたは、何をもって助けるんですか」


 グサリ。そんな音にならない音を感じながら、狭山さんの後ろ姿を見つめる。


「もし、力とか言うのでしたら雀の涙にもならないと思います。貴方はゴブリンの動きが見えましたか? しっかりと」


 嶋崎さんが剣を振り抜いた時、その瞬間の事だろうか。たしかに、寸の行動すら捉えていなかった。分かるようになったのは、ゴブリンの首が足元に転がった時。


「……加勢したところで逆に足枷になるかと。それにですよ、私達は河田さんを連れて行くしか無いんです。都合のいい話ですが、言い訳をするとしたら私は嶋崎さんが助ける事を優先にしているから、その意図を汲み取って行動しています」

「……」


 そんな言葉にどこか納得している自分。

 この言葉に縋って行動している自分。

 自分であるのにそれが怖く感じた。


 僕は、何がしたいんだろ。

 分かりきっていながらも、助けに行こうと考える。それでいて、他人に意見を委ねている。多分自分の事だ、助けに行こうとなっても僕は行かないだろう。


 グサ


 自分でありながら、自身で自身の臓腑を傷つけている。自分が自分を見つめると、自身を傷つけることに繋がるのは、昔から気づいていた。特に、自分の芯の柔らかさとか、あやふやな感じ。


「冷め切ってますね、一理ありますけど」


 一つ考えに浸っていると、影宮さんは顔を横に振り向かせて歯嚙みしながら言葉にしていた。その歯嚙みの意味は何なのだろう。

 でも、悔しさという感情は言葉を介して伝わってきていた。


「影宮さん、冷め切ってると言うのは酷いと思います」


 狭山さんは、河田さんの持ち方を整えながらそう言った。


「いやいや、そうでしょ? 僕ら班で仲間ですよ!? なんで、なんでそうも簡単に切り捨てられるんですか!?」


 感情的に、この歩いた距離だけの後悔を爆発させたかのような、そんな悲痛と叫びの声。

 その声が、チクリチクリと胸を痛くさせる。


「別に、切り捨ててはいませんよ……」


 狭山さんの微かな声。それはこんな静まり返った所で聞き逃がすはずかなく___


「それなら、何でなんです!」

「何でも何も、貴方は嶋崎さんの手を煩わせたいんですかっ」


 さっきも言っていた、(わずら)い。強大な力を持つ嶋崎さん。馬鹿げた速さのゴブリン。

 そこに凡人の自分達が居てもただの邪魔でしか無い事。


「私は結果主義です。後先考えれば、結果としてどちらが良い考えか分かりますよ」


 何処と無く、早まる歩み。


「結果主義ってあんたなぁ! スルーしてたけど、森に入った時の矢。完全にあんたを射抜こうとしてたでしょ! それにあんたが問いただした時も助けてもらっていて!」

「そうですよ。嶋崎さんがいたから今の自分がいます。というか前提に、もし嶋崎さんが居なければ全滅だったと」

「じゃあ何で!!」


 そうも簡単に切り捨てられるんだ! そんな言葉に足早に歩いていた狭山さんは、足を止めたかと思うと振り返った。


「私は別に恩知らずじゃ無いんです。どちらかと言えば恩なら誰よりも感じています。それに、何度も私は言っているでしょ、圧倒的に経験と戦力外なんですよ。だからあの場に残ろうとしないんです」


 それは誰よりも分かる気がする。

 と言うより、はっきりと嶋崎さんに言われた事だ。僕はその言葉に甘えて逃げてきた。怖いし、邪魔だと分かっていたから。


「それは自分可愛さですかっ!?」


 影宮さんの言葉は、僕の心でエコーした。


 ギリ

 そんな歯軋り。


 その歯軋りは、図星の疲れた僕たち2人のもものだった。狭山さんは「悲壮」に表情を変えつつも異論を唱えた。逆に僕は、ただ自分を見つめた。


「……」

「……自分可愛さならっ! 自分可愛さなら何なんですか。怖いんですよ、人間なんですから。それに、これは悪い行動じゃ無いんです。あの場所で邪魔で、他にすることといえば河田さんを運ぶこと。その時に逃げる事も含めて何が悪いんですか!」


 グサリ。胸をえぐられたかのような、精神的激痛。血反吐ではなく、息がつまる別の苦しさが僕を襲う。

 それは、僕の想いだからか。


「逃げる」。その言葉が、影宮さんの「自分可愛さ」という言葉と混ざるようにエコーが掛かった。


「……影宮さん。あなたがそう言うのでしたら、今からでも行ったらどうですか。人にそう言えるってことは覚悟があるからなんですよね。私は無いです、これが私が思う解決策で結果なので」

「…………くそっ!」


 ここを歩く者に、覚悟なんてありはしない。

 そもそも、出会い頭が奇襲から始まって、次にはデカイゴブリン。そして、普通のゴブリンが沢山。

 普通に考えたら「異常」な状況で、今生きてる事が「おかしな」くらいの危機に直面していた。どちらかと言えばここを歩いている僕達はおかしくて、内心は満身創痍だったり。


 初めての冒険者活動。「予期せぬこと」の積み重ね。

 今回は幸いにも嶋崎さんがいたから何とかなったが、もし居なければ死んでいた。


 でもそれって結局のところ人任せだったり。

 僕独り、何もできていなかったり。


 影宮さんは悪態を吐くと、ポケットに手を突っ込んだ。


「一体、なんなんだよ。ほんと」


 影宮さんがそう言うのを片耳に残しながら、僕を渦巻くこの感情に、頭を悩ました。


 僕は冒険者になれば何かが変わると思ってたけど、何も変わらなかった。あいも変わらず卑怯で、人任せ。

 仕事ですらロクに上手くいかなかったのに、冒険者なんていう命を賭ける仕事で自分を変える場所としてみているなんて。

 寧ろ「命を賭ける」なんて、簡単にしてしまっていて後悔していたり。


 僕は何なのだろう。

 何を考えてもその考えに全てが行き着く。


 嶋崎さん。あんな力を持っていながら世界を征服する訳でもなく、逆に家の借金を返すために申し込んだとか。それに比べれば、見つかるはずのない自分探しに身を投じた浅はかな僕とくれば……。


 あの人が完璧超人にしか見えない。


「嶋崎さんって、何なんでしょうね」


 呼吸混じりに声を出す。


「単純に言えばバケモノ。別に言えば地球外生命体とも」


 それに答えるのはやはり狭山さん。


「……でも、私はもう嶋崎さんの異常性を割り切ろうと考えてます。確かに化け物ですが、あの人なしでは死んでましたし、この私の命も、幾ばくかの正義でここに在りますから。少なくとも人間の敵では無いと信用します」


 狭山さんはまた歩みを進める。それを追うように僕たちも脚を動かす。


「……ですが、何度も問い詰めたことを後悔なんてしてませんよ。無条件で人が人を信じられますか?」

「いや。別に、そうとは思いませんけど……」


 人が良すぎるのも悪ければ、信用しなさ過ぎるのも悪い。でも、用心に越した事ない。それは、僕の人生経験でわかった事だ。だから、無条件で信用しないと言うのも分かる。

 だから僕は狭山さんにそう言った。


「でも、助けると言う事については嘘じゃなかったので信用したんです」


 そして、ポツリと沈黙の中で呟かれた声。

 それからまた、沈黙は続いた。


 何十歩、何百歩、時をかけ歩くほどに、背後の景色は遠のいて行く。1分、2分、3分、4分、5分。

 時が過ぎれば、後悔の思いもまた強まった。


 そして、再び声を上げたのは、狭山さんだった。


「私達は発想が甘かったんだと思います。ダンジョンは、私たちが思っているよりも遥かに危険。例えばゲームのような、あんな空想とは否にならない程に」


 軽い気持ちで来たのは揺るがない事実。

 肯定のみの答えに肯定を心の中で繰り返した。


「これは私だけじゃなく、他の人もそう思うのですが、冒険者としての覚悟をただ、決めきれていなかったんです。例えば、今のように魔物という存在に怯えて逃げたり、死ぬかもしれないなんて考えていなかったり」


 狭山さんは一息吐いて続けて言った。


「私たちは今、未知の領域にいるんですから、何が起きてもおかしくないんです。例えばそれが、後悔する考えでも、それが冒険者である私たちなんです」


 冒険者。死ぬ覚悟が必要である、本当に狩れば狩られる仕事。その認識がなかったこと。

 後悔する選択というのは、逃げたり、割り切ったり、見捨てたり、単純に後悔すること。

 言われれば言われるほど、そうであるとしか言えない。そうにしか思えない核を突く話。


 人間、死ぬことが怖いのは当たり前で。

 人間、利用し利用されるのも日常茶飯事で。

 人間、後悔することは常で。


 それをまとめて受け入れる。受け入れた上で、活動するのが冒険者。


「私は後悔しない選択をとります。冒険者なら、任務を達成するべきですし、あの人ならゴブリンを退けるという信頼はあります。だから私は逃げます。影宮さんは」


 徐に話を振る狭山さんは、影宮さんに話を振った。


「俺は……その…………」


 言い詰まる影宮さん。狭山さんは、影宮さんが何かを言う前に僕に話を振った。


「山田さんは」


 僕は……。そう言い篭る。


 僕は、どうしたいか。

 狭山さんと同じように逃げるのか。それとも別に、自身の偽善心で走り向かうか。



 僕は今どうしたいか。



 僕は冒険者で、人間。



 僕は逃げる……べきなのか。



 僕は何を後悔しているのか。



 僕は、僕は、僕は、僕は。



「狭山さん、影宮さん。僕、後悔してきます」


 僕は、我慢が出来なかった。

 こんな言いかたはあれだけど、一番この中でお年を召してかつ、劣っている川端さんですら残ったというのに。


 後悔しやずに、逃げるなんて出来ない。


 背中の革鞘のついたサイスをバックから取り出し、皮鞘を外す。


 そうして両手でサイスを構えて、僕は走り出した。


 自分可愛さの為に。

今回は山田さん主点でのお話でした。

逃げろと言われて素っ気なく逃げてきた山田さんたち。彼らはどう言う気持ちで逃げてきたのかを書かせていただいております。


米/次の話は嶋崎の視点に戻ります。


お読みいただきありがとうございました。


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