宿敵 3
「――行くぞォォッ!」
重く深い。この包丁をどこまでも深く振り下ろす。
「甘いね。僕ならほら、こういうことだってできるよ?」
操る無限のゾンビたち。それら全てを道具として扱うその姿。まさに髑髏の王。
「グギャうォッ!」
盾にされたゾンビの悲鳴。
「がウアァァああッッ!」
瞬間。左からは大量のゾンビが流出する。
「くッ――」
返り咲くのは真紅の華。的確に急所を狙い一撃で轟沈させるも数の暴力には勝てない。津波のように押し寄せるゾンビの猛攻にイラつきを隠せずにいた。
そしてこの数のゾンビたちを一人で捌くには無理があった。それゆえに――
「セージ? どうしたんだ?」
仲間の援護は戦闘開始から僅か数分で到着する。
「っておい! なんだこのゾンビの数はッ!?」
ここは二階。そして先ほどまでは三階にいたのだ。言うまでもなくすぐさま異変に気付くだろうよ。
「うわぁ~! すごい、経験値が沢山転がってる!」
このような絶望的状況下でゾンビを経験値と言ってのける天霧の図太さ。それは敬服に値する。そしてなによりも、この二人が戦に交えたことにより戦況は大きく傾き始めていた。
「う~ん。増援が来るとは思わなかったね……この学校にはもう残っていないと思っていたから。でもまさかまだ三人もいたなんて、僕も詰めが甘いなぁ……」
独り言をぶつぶつと。押されているにも関わらず、白哉は余裕の表情を保っていた。まだなにか、俺の想像を上回る。とんでもない切り札を持ち合わせていながら。
「うん。それじゃあ僕も本気だ。聖、簡単にくたばるなよ――」
刹那、白哉の背後からは"永遠に醜い紅い髑髏"が象られた。そして紡がれるのは新しいセカイの法則。
その型の名前は――
『求段、顕象――』
これこそが興梠白哉が求めた段位。
求段とはすなわち、求めし渇望を象るための詠唱にほかならない。ゆえに、この一瞬で組みあがる濁染の陣に対抗するための手段を俺は持ち合わせていなかった。
唯一、この状況を打開できるとすれば――凛子。お前しかいない。
「くッ!」
だがしかし、それよりも早く白哉の渇望は組み上がってしまう。
何者にもならない一途な想い。
それは格の違いを見せつけるには十分すぎる能力だった。
「なん、だよ……これ……」
その存在を一言で表すなら――絶望。
流れ込むのは興梠白哉の秘めたる渇望。
『この場で生きているモノなど、僕意外認めない。死ね、死ね、死ね。僕意外の人間など傀儡となって朽ち果てるがいい』
「白哉、お前……」
流れ込む渇望を前に、
「ふざけるなよ……」
俺はただ純粋に怒りを隠せずにいた。
やはり進歩していない。俺らの情を全て裏切り、よりによってこんなモノを喚ぶというのか。
覆した戦況も、倒したゾンビたちも、残らずまとめてどうでもいい。ただこの存在だけは決して認めないし許しはしない。なにがなんでも止めてみせる。それが夜喰聖十郎として、いいや。今を生きるものたちの教示だ。
ゆえに、それがどんなモノであろうとも俺たちの渇望には絶対に勝つことができないのだと教えてやる。学校全体を巻き込むであろう極大の破壊であろうと構わない。
『――蜘蛛糸・操璃腐乱人形』
だから俺は、絶対にこんなところで負けるわけにはいかない。たとえどれほどの全身全霊を振り絞ろうとしても……
「凛子ッ!」
俺たちが見せつける渇望の形はきっとある。
「ああ、任せろッ!」
それを白哉に分からせるんだ。勝機は唯一、そこしかない。
『雪の上、照れる月夜に、梅の花――』
これすなわち、月の明るい折に雪と花を遊戯的に掛け合わせたモノ。それは俺たち三人を表していた。
雪は聖十郎。
月は凛子。
花はつくね。
三人の渇望、もとい友情。
この感情を理解してもらわなければならない。
『凍り裂け、雪月花』
ここへ来て、俺たち三人の求段は完成する。
使用者は夜終凛子。
『求段、顕象――』
その右翼と左翼として――数多の祈りは顕現された。
『――神霊刀・月夜見尊ッ!』
お読み下さりありがとうございます!
中途半端で終わり申し訳ないです……




