力不足
〜ヨークタウン仮設避難所〜
今回の戦闘に巻き込まれる危険を避けるため、ヨークタウンの市民たちは町から離れた場所に避難していた。
戦闘で負傷したリリムとモミジもこの避難所に運び込まれ治療を受けていた。
治療といっても、器具や薬などの医療品はほとんどなく、リリムとモミジの傷をどうにかできるような状態ではないのが現状である。
「先生、モミジの容体はどうなんですか」
この避難所までモミジを運んだワカバは、モミジを診察した医師にそう問いかけた。
「…酷いものだな。全身23箇所の完全骨折に38箇所の不完全骨折、両肩の脱臼、全身もれなく打撲、極め付けは内臓の複数箇所破裂、生きているのが不思議なくらいだ」
「…そう、ですか」
そうですか、としかワカバは答えることしかできなかった。
医師が口にしたモミジの容体、ワカバ自身に医学の知識はないにせよ、モミジの体がどれだけ傷つきボロボロであるかは手に取るように分かった。
これはモミジに限っての事ではなくリリムについても言える。
モミジより先に運び込まれたリリムの容体はモミジよりも深刻だった。
リリムを診察した医師が「いつ死んでもおかしくない」と口にするほどである。
本当ならば今すぐにでも戦場に戻りこの二人の仇を討ちたいワカバだが、今の彼女の実力ではあの悪魔に一矢報いる事すら難しいだろう。
(だからハルカは、私にモミジを救出させたのか。あの場で私が一緒に戦っていては“足手まとい”だから。
そのことをわかっているからこそ、その考えがりかいできているから、私は余計に悔しい。)
「私は…仲間の仇打ちすらできないのか………」
(今ほど自分の無力さを思い知らされたことはない。)
「落ち込んでる暇なんてないのですよワカバさん。モミジさんの体を拭いて包帯を巻くのですよ!!」
そう元気よく話したのは小妖精のチルである。
ハルカと共にこの地に来たチルは、その小さい体で避難所の数少ない医療品の運搬、そして負傷者の治療などを行っていた。
「大丈夫なのですよ。モミジさんが戦ってボロボロになるのはいつものことなのです。でもどれだけ傷ついてボロボロでもモミジさんは死なないのです。チルはモミジさんとの付き合いが一番長いのでそれがわかるのです」
そう言って、自分の体ほどもあるタオルを持ち上げ手際よくモミジの体を拭き始めたチル。
「私はッ…私は別に落ち込んでいるわけではないのだ。仲間がこんなにされたのに、何も出来ず仲間の安否を見守ることしかできない。それが悔しくてならないんだ」
「その気持ちはわかるのですよワカバさん。チルもいつもみんながボロボロになるのを見ていることしかできないから。チル達小妖精に戦うチカラはありません。仲間と一緒に戦いたくてもそれは無理なのです。だから私は、いつも願っているのですよ。みんなが勝てるように、生きて帰ってこられるようにと」
「………それでも、私は……」
「信じるのですよワカバさん。ハルカさんは、きっと私たちの分までボコボコに敵討ちしてくれるはずなのですよ。あの人ああ見えて、弟子想いの優しい師匠ですから」
〜〜〜〜〜〜〜〜
誰がこうなることを予測できただろうか。
いや、おそらくこの世の誰一人としてこんな展開は予測していなかったはずだ。
コレは神のイタズラで、神のみぞ知るというやつだろう。
まさかこんな辺境の森で超級勇3人が一堂に会し、はたまたその相手がソロモン72師団No.2だなどと…
「それにしても、僕らが3人で共闘するなんていつぶりだろうね」
「そうだな…まだハルカと俺が駆け出しの勇者だった頃に一度あったような無かったような…」
「ふふふ、あの頃はまだ2人とも鼻水を垂らしてたっけ」
「「それは無い!!」」
ハルカとジルマの息のあったツッコミが炸裂し一時的に場が和んだ。
「2人ともさあ、あの悪魔についてどう思う?」
ハルカは二人にそう問いかけた。
「強いな。おそらく今まで闘ってきた悪魔の中でも1番強い」
ジルマはそう答えた。
一方のクロトラは…
「んーまあまあやな。正直なところワシと五分五分ってとこかな( ´ ▽ ` )ノ」
若干ムカつく顔でそう言った。
「じゃあ1人で闘うか1人で、俺たちは別にそれでも構わないが…」
「よっしゃみんなで闘おう!!」
クロトラは勢いよくそう答え笑顔でハルカとジルマを見ながらグッと親指を立てた。
その様子を見て、「ああ、なんてウザいおっさんなのだろう」とハルカとジルマは思ったが、グッと感情を心の奥に押し込んだ。
「そうだねみんなで闘うのが正しい判断だと思う。あの化け物はそれほどの相手だ」
「同感だ。俺も一対一でやりあって死ぬのはごめんだ」
「しゃあない、大事なのはプライドよりも自分の命やからな」
3人の目線は一斉にアマイモンの方向を向き臨戦態勢をとった。
その様子を見ていたアマイモンは不敵に笑った。
「おうおうようやく終わったかよ。誰が最初に殺されるかの相談でもしてたのか? 心配しなくても、全員もれなく殺してやるよ」




