戦いは裏から表
ズルズルと傷だらけの体に鞭打ってサリエルは歩く。
生きて帰り今回の戦いで起こったことを余すことなく仲間に伝えるため、何を考えているかはわからないが、現状皇女リリムは自分たちに敵対しているという事実を伝えるためである。
「あーあ全身ボロボロ…よくこれで生きてたわね本当に、早く帰って治療と療養をしないとだけどその前に」
サリエルがいまいるのは数時間前までモミジとウィネが激闘を繰り広げた場所である。
サリエルは西の国に帰る前にウィネを探しに来ていた。
ウィネがたとえ死んでしまっていたとしても、その生死を確かめる必要がある。
歩みを進めるサリエル、その前方に地面にうつぶせで倒れるウィネの姿を確認した。
「ウィネ!? あんた大丈夫だった!? 立てる!?」
近距離で話しかけるサリエルだったが、ウィネからの返事はない。
「………………ッッ…………」
(十分に覚悟はしていたつもりだったけど、ウィネとも付き合い長いからかな。とっても辛いよ)
「この小さな体、この細腕であのバケモノとよく戦ったよ。あんたは私の誇りだ」
サリエルは倒れたウィネを起こし、ゆっくりと背負った。
「あんたのことは私が責任持って西の国まで連れて行く。そこでゆっくりねむればいい」
ウィネの顔は悪魔ながらにしてまるで天使のようで、どことなく笑っているようだった。
サリエルはまぶたに溜まった涙をグッと拭う。
サリエルがしんみりと悲しみにふけっていたその時である。
グー……スー……グー……スー……ウン…
サリエルの背中付近から小さめのいびきが聞こえた。
グーーースーーーもう食べれないよエヘヘ………
今度は寝言混じりではっきりと聞こえた。
「はーまったくこのバカは!!」
そう言ってサリエルは、背負っていたウィネをポイッと投げ捨てた。
ドチャッ……………
「痛った!!……えー痛った!!? なになになにどうしたの何が起こったの!!?」
「おはようウィネ…お目覚めの気分はどうかしら?」
満面の作り笑いでそう言ったサリエル。
その様子を涙目で見上げるウィネ。
「うー……なんて事するんだよサリエル、怪我人に向かってさー。気分だって!?最悪に決まってるだろ!!」
「そう、私はとても損した気分よウィネ。死んだと思って色々としんみりしてたのに寝てただけだったんだから」
「損した!? 親友が生きていたというのに損したとか、あんたは本当に友達か!?」
「あーうんよかったよかった嬉しくて泣いちゃいそうよ」
そう言ってサリエルはまぶたに溜まった涙を拭って後ろを向いた。
(あーもう素直じゃないなーサリエルは。素直に嬉しいって言えばいいのにさ)
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血まみれで傷だらけのモミジは、荒い呼吸で地べたに倒れこむ。
それを仁王立ちで見下すアマイモンは笑いながら言った。
「どうしたよモミジ、さっきまでの威勢はよう」
悪魔軍ナンバー2アマイモン。
その実力たるやまさに最強にして最恐!!
暴走したモミジさえまったく歯が立たないほどに。
「…………………」
「はっ…もうしゃべることもできねえか? お得意の冗舌を殺す前に聞きたかったんだがなあ」
「…………………」
「…まあいいや、今楽にしてやる。天国に行けるといいな勇者さま」
………………………………………ッ
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「もうわかっただろ? お前の力を持ってしてもあのバケモノには勝てないんだよ。わかったらおれに体を返せ」
「うるせえうるせえうるせえウルセェ!! 俺より全然弱いくせしやがって図にのるなやクソが!!」
今起こっているこれは心の葛藤、表と裏の駆け引き。
どちらが主人かを知るための争いだ。
「俺は強い、お前よりも遥かにだ。俺に任せておけば全部全部全部上手くいく、いくに決まってる!! なのになんで、お前は俺を忌み嫌う!!? いつも俺を心の奥に閉じ込める!!?」
「確かにお前は強えよ、俺みたいな未熟者よりもずっとずっとだ。でもな、それだけじゃダメなんだよ。お前みたいなただ強いだけの理性とか感情のないフランケンシュタインじゃダメなんだ」
「ああ…言ってる意味がわかんねえよ」
「お前なんかがわかんなくてもいい、だがこれだけは言っとくぞ。俺の仲間を躊躇なく見境なく殺しにかかるお前に、俺が頼ることは何千何万年たとうがありえない」
俺がそう言い終わるとほぼ同時、もう一人の俺は光とともに消えていく。
その光は心の闇に差し込むように広がり、俺を縛り付けるどす黒いものを消し去る。
「あーあ、今回も時間切れか。残念無念というかなんというか」
「お前………」
「一つ、これからお前はお前よりも遥かに強い強大な敵と戦うことになる。今戦ってるあの悪魔よりも強い敵と対峙することもあるかもしれねえ。もし、そん時お前が腑抜けた戦いをするようなことがありゃ、そん時は今度こそお前の全てを飲み込むぜ!!」
「ああ、やれるもんならやってみろやクソ野郎が!!」
「ケケッ…これからお前がどう成長し、どう戦い、生き残るのか楽しみだ」
もう一人の俺は、モミジは光の中に消えていった。




