役者出揃う
ようやく、ハルカたちはマリリアナ区ヨークタウンの上空に到着した。
空を飛ぶハルカたちの眼下には、逃げ惑う人々や荒れ果てた森の姿が広がっていた。
「ひどいもんだな。わずかな時間でこの地区の自然は壊滅的か。こりゃ復興にも時間がかかりそうだ」
「ねえ見てよジルマあれ!!」
喋るジルマの背中に乗るハルカはあるものを見つけ、バンバンと肩甲骨付近を叩いた。
「痛っ!!? なんだよハルカそんなに騒いで。そんなに強く叩かなくても見てや…る……!!?」
そう途中まで喋って、ハルカに支持された方向に目を向けたジルマは言葉を失った。
とてつもない魔力と魔力のぶつかり合い。
爆音とともに広がる衝撃波が大地を削り森を破壊し山を砕く、そういった光景をジルマは目にした。
「なんだよあれ………」
さながら核兵器のような圧倒的な破壊力を持つ二つの魔力を見て、言葉を失ったジルマ。
超級勇者であるジルマが言葉を失ってしまうとは情けないと思ってしまうかもしれないが…
否ッ!!
情けなくなどない、それは仕方のないことなのである。
そしてジルマはあることを思い出し、そして考えた。
数十分前のことだが、ハルカは確かに言っていた。
“暴走したモミジくんは最強だ”と。
最強…そんなことほとほと信じてはいなかった。
弟子可愛さに言った言葉なのだと。
遠くに感じた大きな魔力さえ、なんかの勘違いだとさえ思った。
しかし今思えば、それは『勘違い』ではなく『間違い』だったのかもしれない。
俺はモミジという一人の勇者の力量を見誤り、間違った。
眼下の大地で戦う二つの魔力。
その二つの魔力の強大さたるや、おそらく国一つを相手取っても五分五分といったところだろう。
もしもこの二つの魔力のうち、一つがハルカの言うところのモミジくんなのだとするなら、間違いなくその男は…
最強だ!!
「ハハッ……これほどとはね。確かにこれは最強だ…逆立ちしても勝てっこない」
ジルマは誰にも聞こえない声で、聞かれないようにそう言った。
「ん? 何か言ったかいジルマ」
「何か言いましたかジルマさん」
(チッ勘のいい奴ら…いや、耳のいい奴らめ)
「なんでもないよ!! ひとまず下に降りよう」
「そうだね、じゃあ街に降りようか」
「そうですね、街になら仲間もいるはずですし」
ジルマはゆっくりと高度を下げ、ヨークタウンに向けて着陸を始めたの。
〜〜〜〜〜〜〜〜
その頃、ワカバとクロトラはモミジの救援に足踏みしていた。
モミジとアマイモンのバトルが過激化し、想像をはるかに超える規模になったことが理由だ。
「どうして止めるクロトラ!! アレを見れば今モミジが普通じゃないことくらい貴方ならわかるはずだ!! 一刻も早く加勢する必要があるんじゃないか!?」
「普通じゃないからこそ今は行くべきやない。あないな中に行くなんて命捨てに行くようなもんや。もう少ししてから助けに行くべきやでワカちゃん」
「あなたが行かないのなら私一人でも!!」
二人が口論していると、上空から声が聞こえる。
「おーい二人ともー!!」
「ワカバさーん!!」
それはハルカとチルの声である。
ワカバか上を見上げると、ハルカとチルが大きな翼を生やした少年に乗りゆっくりと降りてくる様子を目にした。
まるで予想だにしていなかったこの登場に驚き、そして、同時に興奮した。
「は、ハルカ殿!!?」
ハルカが来てくれた、それはワカバにとって吉報以外の何物でもない。
ワカバの顔からは思わず笑みがこぼれた。
二人を乗せたジルマはゆっくりと羽ばたきながら地面に着陸した。
「やあワカバちゃん久しぶり、と言っても一週間ぶりぐらいだけどね」
「どうしてここに!? 今は王都にいるはずでは!?」
「話は後、今モミジくんが大変なことはみんな分かるでしょ。今はそっちが最優先、早くしないとモミジくんがモミジくんでは無くなってしまうかもしれない」
「モミジじゃ無くなる? それはどういう」
「だから話は後だって。とにかく急ごう、モミジくんの元へ!!」




