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目覚める闇

紅葉が林を掻き分けながら走っていると草木が無く赤茶けた土が丸裸になった場所に出た。


そこは先ほどまでリリムがアマイモンと戦った場所である。


「なんだここ……それよりリリムは!?」


辺りを見回すと、リリムと二メートルはゆうにある大男がいた。


リリムはすでに気を失っていて服もボロボロだった。


気を失っているというより生きているのかも定かではない。



「……………ッ!?……リリム!!」



紅葉は大声でリリムの名前を呼んだ。


だが彼女に反応はない。


その代わりに、リリムの近くに立つ大男が紅葉の方に振り返る。


「あん…誰だお前は……ああそうか、この女の仲間か」


男はそう言って男は不敵に笑い次のように続けた。


「ちょうどいい、お前俺の相手になれ。この女が壊れちまって暇だったんだ」


「……………ッ!!」


その言いように紅葉は当然我慢はできなかった。


自分の仲間を、リリムを傷つけておいて壊れたなどと。


(この野郎…まるでオモチャみてえな物言いしやがって!!)


次の瞬間紅葉の姿は消え、一瞬のうちにアマイモンの死角に入り力一杯後頭部を殴りつけた。


先ほどまでの戦闘で体はボロボロであった紅葉だが、怒りがピークに達し体の痛みなどはどこ吹く風である。


「この下衆野郎が!! ぶっ殺す!!」


もう一度アマイモンを殴り地面に叩きつけた。


「お前を速攻倒してリリムを治療できる場所まで連れて行く!!」


リリムが生きている保証はない。

それでも紅葉はリリムが生きていると信じてアマイモンとの戦いを続ける。


「ふーむ、まあなかなか。人間にしてはやるじゃねえか、これなら少しは期待できそうだ!!」


「カッ、ぬかせや!!」


一瞬のうちに2人の姿はその場から消え、スタートダッシュの爆発音だけがその場に残った。



アマイモンは紅葉が一歩目を踏み出したと同時に、全力で後方へ跳躍した。

それについて行くように前方へ跳躍する紅葉。

二人は入り組んだ森林の中をまるで猿のように飛び回り、ツバメのように高速で移動する。

二人の距離は縮まることはなく、また広がることもなく一定の距離を保ったまま数百メートルにわたって追いかけっこをした。


「フハッこの速度にも難なく付いてくるか。なかなかどうしてオモシロイ!!」


後方に振り返りアマイモンは、楽しそうに苦笑した。


「そうかよ。それならもっとオモシロイモノ見せてやる!!」


そう言うと紅葉はもう一段階スピードのギアを上げた。

紅葉とアマイモンとの距離はみるみる縮まり、あと少しで拳の届く位置まで迫った。


「もう一発お前のスッカラカンの頭殴ってやるよ!!」


「フハッいいね。じゃあ俺ももうちょい本気出そうかなッ!!」


目の前にいたアマイモンの姿が紅葉の視線から消えた。


紅葉がアマイモンを探していると、後頭部を鷲掴みにされその場に停止した。


アマイモンに鷲掴みにされ宙ぶらりんの紅葉。

体を上下左右に揺らしてを外そうとするがなかなか外れない。


「話せこの下衆ノッポ!! 痛てッ!!?」



アマイモンの握力は金属をも歪める。

アマイモンに鷲掴みにされた紅葉の頭はミシミシと悲鳴をあげる。


パワー自慢の紅葉だが、両手でアマイモンの手を引き剥がしにかかってもビクともしない。


(この野郎…なんて馬鹿力だ!!)


「おい金髪の勇者、お前人間にしてはなかなか筋がいい。腕力、脚力、敏捷性、どれも人間離れしてる。並みの悪魔なら対等に渡り合えるほどだ。だが…その程度では俺のような『本物』には通用しない」


アマイモンは見下したように紅葉を見つめて笑った。


「ハッ。自分で自分を本物とか恥ずかしくねえのか。聞いてるこっちが赤面モノだぜ!!」


「そうか、ならば本物の一撃というものをその体に体感させてやろう」


無造作に拳を振りかざしアマイモンは、未だ宙ぶらりん状態の紅葉の背中をそのまま殴った。


ゴパアアアァァァaaaaaaaaン!!


音速よりもはるかに早い速度で打ち出されたパンチは、まるで水風船が割れたような破裂音をあたり一帯に響き渡らせた。


おそらくそれがパンチによる音だとは誰一人として思わないだろう。


わかるとしたらそのパンチを体に直に受けた紅葉だけである。


「ガフッ!? ゴハッハ!!?」


なんとも形容し難い馬鹿げたその威力は、紅葉の想像を軽々飛び越えた。


すでにかなりのダメージを体に負っていた紅葉が、その一撃を耐えることは到底不可能であった。



「これが本物の拳。必殺の一撃だ金髪野郎!!」



アマイモンの言うところの必殺の一撃をまともに受けた紅葉はその場にうつ伏せに倒れた。


紅葉の体は激しく痙攣したのちに、動かなくなった。


その様子を見たアマイモンは、紅葉に背を向け歩き出す。



「あーあもう壊れちまった。半分壊れた不良品だったとはいえ、これでは俺の欲求をぶつける当て馬がいない。新しいのが必要だ」



〜〜〜〜〜〜〜〜



心の中で、何かが話しかけてきた。


「情けねえな。お前は自分の潜在的チカラの半分も使いこなせていない。変われ交代だ」


俺の中で、黒く不吉なモヤモヤが俺の理性を飲み込む。

必死に抵抗する俺だが、抵抗も虚しくどんどんどす黒い何かの中に引きずり込まれる。


「ヤッやめろ!!お前のチカラなんていらない。いつも俺を無茶苦茶にしやがってこのバケモノが!!」


「バケモノ? おいおい酷い言い方するじゃねえか。俺もお前も元は同じハガクレモミジじゃねえか。今あの怪物に勝ちたいなら、黙って俺に体を渡せばいいんだよ」


そうこう言い争っている間に、俺の理性は黒い渦に飲み込まれた。


それからのことは、俺は覚えていない。



「……………クハックフフッ…久しぶりのショータイムだ。あの悪魔にはせいぜい楽しませてもらおうか。あのハルカとかいう女の時みたいにな…」












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