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もう一人のモミジ

ねっとりと絡みつくような嫌な魔力。その魔力の本質はどす黒い闇。まるで底なし沼のように深い深い闇。


最恐にして最悪のケダモノ。


紅葉の中に潜むそれは今、飼い主の理性を飲み込み体を乗っ取る。


ケダモノはゆっくりと立ち上がり叫ぶ。



アアァァァアアァァァAAAA!!!!



その魔力は形容し難いほどに強大にして極悪にして狂気。


禍々しいその魔力は光を遮り、地震の体を混沌に包む。


立ち去ろうとしていたアマイモンは立ち止まり、振り返った。


その顔には先ほどまでの余裕や愉快活発のどは一切感じられない。


先ほどまでまるで狩りを楽しむ獣のような表情だったアマイモン。


その顔は敵と対峙した時の獣の表情、牙をむき出し殺気を漂わせる。


アマイモンは時間にして数秒ほどの間眉ひとつ動かさずに紅葉だったモノを睨み続けた。


それは、紅葉の中のケダモノが強大な魔力を誇っていたという単純な理由だけではない。


目の前にいる勇者の、紅葉という一人の人間? の魔力とそっくりな魔力を持つ一人の男をアマイモンは知っていた。


その昔最強を謳った自分、仲間を殺した愚か者の自分を、チカラでねじ伏せ冷たい牢獄に送った男。



その男の名はサタン。



リリムの実父にして現ソロモン72師団総団長。


世界最強と呼ばれる男である。



「……………フハッおもしれえなお前。その感じ昔のサタンにそっくりだ!! それ故により一層殺したくなる!!」


アマイモンは全力で地面を蹴り紅葉に向け加速。

ソニックブームのような衝撃波を身にまといながら紅葉に殴りかかった。


その距離数メートルまで迫ったが、未だモミジは身動き一つしない。

両手をだらんと垂らし、焦点の合っていない両目でただジッと急接近するアマイモンを見ていた。


(この距離ではこの攻撃を避けるのはすでに不可能。どうやらその魔力も挙動もハッタリみたいだな)



「くたばれ金髪野郎!!」



ズドゴオオオオオオオオオン!!



アマイモンの一撃は確実に紅葉の腹部を捉えた。


それとほぼ同時に、けたたましい衝突音とともに周囲に衝撃が伝わる。


その衝撃は肉眼で見る事ができるほどに凄まじい。

これは決して比喩的表現ではない。

目に見える事実そのものなのである。


アマイモンの繰り出す拳を言い表すとするなら、大地を砕く地の魔王の一撃、必殺の一撃、音速を超える一撃、などと大それた呼び方はいくつも考えられるだろう。


確かに大それた呼び方ではあるが、そう呼ぶからにはそれに伴った実力があるということだ。


リリムを一撃で沈め、紅葉さえも一撃で沈めたその一撃の威力は疑いようもない。


腹部にアマイモンの一撃がめり込み、メキメキと嫌な音を立てモミジの体はぶっ飛ばされた。


この時点ですでに勝負はついたと、アマイモンは確信した。



しかし………!!



「……ククッ…アハハハハハハハハハハハハハ!!」



モミジは口から大量の血を吐きながらも、不気味に気色悪く高らかに笑う。



「……ッ…………ハア!!?」


その様子を信じられないといった表情でモミジを見つめる。


おそらくアマイモンの心情は、「何故こいつは俺の一撃を食らってピンピンしてるのか!?」といった感じだろう。


ゆっくりと立ち上がるモミジを、面食らった表情で見つめるアマイモン。



「ククッフククククカハハフヒヒハヒCAAAAAHIiii♪☆♪☆☆☆☆♪→→→♪!!」



文字で洗わせたのは冒頭だけであって、それ以降は言い表す事の難しい不協和音のような音だった。


一体全体紅葉のどこからそんな笑い声が出ているのかと疑問に思ってしまうほど不吉で不気味。


それは聞いていると不快に思ってしまうほどである。



「なんだよお前、ダメージの受けすぎで頭イカれちまったのか?」


「フハア…いや、いたって正常で通常運転だ。あいも変わらずいつも通りのイレギュラーモミジでゴザイマス〜☆☆☆☆(笑)」


「……コイツ………ッ!?」


それはアマイモンの一瞬の油断をついて起こった。


突然モミジは体操選手さながらの空中16回転23回捻りをしてアマイモンに飛びついた。



「アハッ頭イタダキッ!!」



アマイモンの頭を捉えたその蹴りの威力は、山を砕くアマイモンのパンチを超える。


手と足、パンチとキックでは威力に差が出るのは当たり前のことではあるが、それでもこの自体は想定外である。


「ガッハッッッ!!?」


ついにアマイモンは両膝から地面に崩れた。


「どうだどうしたどうしました!? もしかしてたかだか人間様の蹴りが効いちゃったのか!!?」


アマイモンにとって自分を見下す者、ましてそれが人間だなんて屈辱以外の何者でもない。


アマイモンは憤怒の表情で立ち上がる。



「てめえコラ金髪!! お前何者だよ!? というか俺に倒された直後何があった!! 明らかに明白に強さの次元がちがうだろ!! ドーピングでもしやがったか!? だとしたらそれはお前のチカラじゃねえ!! チンケな真似しやがって!!」


「ドーピング? チンケな真似? その解釈には少しだけ明確な差異がある」


「なんだと!?」



「俺は紅葉の闇、心の底にいるもう一人のモミジ。 モミジはあいつでモミジは俺、俺たち二人じゃない1人なんだよ」



モミジの言っていることを全て理解することはできなかった。

だが彼の身に何が起こったかはかろうじて理解できた。


「人格の入れ替わり…二重人格か!!」


「that right!!」



不敵に笑うモミジは次のように切り出した。



「これから始まる殺し合いは意味を持たない道楽。表の臭い正義感に塗りつぶされた綺麗なバトルじゃない。さあ悪魔、汚い汚い殺し合いとイコウカ!!?」































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