なめすぎ
片足の腱を斬られたモミジは、足を引きずりながらウィネとの距離を取る。
(まずいな、腱を斬られたせいで足の感覚が無い。しかも傷口からの出血もかなりひどいな。この勝負、長引かせたらこちらの不利だ)
「….はあ、魔力はなるべく温存しておきたかったんだが、そうも言ってられないな」
「無駄だよ、もう勝負はついた。その動かない右足でどう戦うつもりかな?」
「…ハッ、お前ごとき片足ありゃ十分なんだよ」
(今度は手加減なしの全開の魔力でいく…持ってくれよ俺の理性)
『魔力全開解放』
モミジの魔力の限界値が、またもう一段階上跳ね上がり、同時にモミジの纏う魔力の色が徐々にどす黒く変化する。
それは、その姿を見た悪魔ウィネもその禍々しいモミジの魔力に後ずさりしてしまうほどに黒くおぞましい。
「…なんだよそれ、こんなのはもう人じゃない…ただの獣じゃないか。本能だけで戦うただの野生の獣だ」
「もう、後戻りはできねえ。自滅覚悟でお前を…倒す!!」
刹那、モミジは右足に全体重を乗せウィネの懐に飛び込んだ。
その速度にウィネは反応することができずに棒立ちの状態である。
「…な、なに!?」
ウィネが気づいた時には、モミジの拳は体まで数センチのところまで迫っていた。
(これは…避けれない!!)
ウィネは体を捻りモミジの打点をズラす。
急所を外されたモミジのパンチは、ウィネの腹部左側を捉えそのまま彼女をぶっ飛ばした。
数百メートルほど殴り飛ばされ、ウィネはその場に鮮血を吐いた。
「ゴホッゲボ………こんなのどう相手しろってんだよ」
(急所を外したのになんて威力!! あんなのまともにくらったらひとたまりもない!!)
モミジは休む暇を与えず、今度は右側頭部を左足で蹴り抜く。
ウィネは瞬時に反応し、体を半回転させそれを交わす。
モミジの一撃は、そのまま地面にめり込む。
その一撃は地面を砕き、あたり一帯を粉々に粉砕する。
モミジはふらふらと立ち上がり頭を抑える。
(クソッまだ出てくんじゃねえ…お呼びじゃねえんだよお前は!!)
モミジは、自分の中のバケモノを必死に押さえ込み、次の一撃に備え構えた。
「…ハア…ハア…時間がねえ、俺が意識を保てるのは、たぶん後一発だ。その一発で確実に決める!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ドゴオオオオオオオオオン!!
モミジが闘う戦場より東に十数キロ離れた地点にも衝撃と音が響きわたる。
「先輩の闘いは賑やかですね、こんなに離れていても今どんな状況か伝わる。こっちはそろそろ決着がつきそうだけどあっちはどうなってるのかしら? あなた気にならないサリエル?」
そう言ったリリムの眼前には、傷だらけで息を乱したサリエルが地面に座り込んでいた。
「ハア…ハア…ハアハアハアッ!!」
(強すぎる…魔王の血族とはこれほどまでか!! スピード、パワー、戦闘センス、どれも規格外過ぎる!!)
「あなたは気にしてる余裕はなさそうね。さてと…続きといきましょうか?」
サリエルはギリッと歯ぎしりしリリムに斬りかかる。
「ハアアアアアアァァァッ!!」
しかしサリエルの鋭い斬撃も、リリムを捉えることはできずに呆気なく空振る。
「単調、強引、力技…そんなんじゃ何回やっても私にあたらないわ」
「だったらッ…」
サリエルはリリムとの距離を取り、例によって魔眼を開眼する。
『爆眼:乱れ花火』
「これは…」
「モミジを倒した私の最強の技です。数百の火の弾に焼かれなさい!!」
無数の火の弾が、上空からリリム向かって降り注ぐ。
リリムは一切焦った様子を見せずに言った。
「それはこの前一度見ている。全く…芸がないなあ」
リリムは鞘から剣を抜きそれに向かって何かをささやきかける。
『***********』
剣は眩いほどに光り輝く。そしてリリムはその切っ先を無数の炎弾にむけた。
「斬り裂け《アゲハ》!!」
剣から放たれた一撃は、凄まじい勢いで加速しながら無数の火炎弾をかたっぱしから切り裂く。
光り輝くその斬撃は、さながら宙を舞う蝶のようである。
斬撃は全ての火炎弾を切り落とし、それを見たリリムは鞘に剣をしまった。
「そんな…私の魔眼を一撃で………」
「だから言ったでしょう。私の事舐め過ぎだって…ただのお飾りでお嬢様やってるんじゃないのよ!!」




