違和感
緊張感が室内に張り詰める中、一人涼しい顔で写真を手に取り眺めるリリムの姿がそこにはあった。
そんなリリムに、俺は違和感と共に恐怖のようなものを感じた。
「目撃情報から推測して、その怪物は『ベヒモス』でしょう。ここまで大きいとなるとおそらく数百年は生きているはずッス」
冷静にそう一言言って、写真を元の位置に戻す。
「ベヒモスだと!? しかしあの獣は人間界には存在しないはずだが…」
ラニーニャはそう言うと、さらにリリムは続けた。
「これは推測ッスけど、ベヒモスは連れてこられたんじゃないッスかね。昨日戦った悪魔たちに」
「…どうしてそんなことが言えるだよ」
なんか、昨日悪魔と戦ってからリリムの様子がおかしい気がする。
普段のこいつなら、こんな緊迫した会議でもヘラヘラしてるような奴なんだ。
違和感…いや、不信感のようなものを俺は感じていた。
「昨日、悪魔の一人が言ってたんス、『今回の戦いでは軍隊は必要ない、寧ろ邪魔だ』と、これってつまり、軍隊に匹敵する何かを連れてきていて、それは軍隊を巻き込むほどに巨大だということならないっスかね?」
「…お前、今日は随分頭の回転がいいんだな。変なものでも食ったのか?」
やはり今日のリリムは何かおかしい。
しかし、俺はこの違和感の理由を知る由もなく、リリムに何かできるわけでもなかった。
「…たまたまです」
「…たまたまねえ」
「…ええ、たまたま…そういうことでいいじゃないですか? モミジ先輩」
俺はこれ以上、リリムたいして何かを問いかけることはできなかった。
これ以上問い詰めたら、こいつはボロを出してしまいそうで、それが何故か怖かった。
「うむ、モンスターがベヒモスだとわかったところで、『対悪魔&対ベヒモス』の対策を考えるとするかのう。ではまずベヒモスだが、誰が相手するのじゃ?」
「それは私とクロトラ殿でお相手しよう。巨体が売りの相手なら、私とクロトラ殿のスキルが最適だろう」
「ワシもその案に賛成やね。悪魔とやるより気楽でええし」
俺もこの意見には賛成だった。
ワカバのスキルは効果範囲が広くて鈍い、1対1には向かないスキルだ。
ワカバ一人でレートSのモンスターを相手するのは荷が重いから、超級勇者のおっさんがサポートするのも妥当だ。
「じゃあ、俺は悪魔どもの相手をするわ。負けっぱなしじゃ納得できねえ」
昨日はヤられたが、今度は負けねえ。
「私も先輩と一緒に悪魔の相手をします。先輩だけだと荷が重いでしょう」
荷が重いとは、全く失礼な奴だ。
先輩を立てるという器量はこいつにはないのだろうか。
「皆頼もしいな。ワシはこの町に残り市民の避難と保護に回るとしよう、勝利の報告期待しているぞ皆の衆」
ワカバ「おまかせを」
クロトラ「まかしとき」
リリム「了解ッス」
モミジ「余裕だぜ」
〜名も無き洞窟〜
「さて、敵も戦力を揃えてきているわけだが…昨日のような不甲斐ない戦いはできないわよウィネ」
「うん大丈夫!! たくさんご飯食べたからもう負けないもん」
「明日には仕掛けるつもりだけど、おそらくこっちにはリリムお嬢様が来るでしょうね」
「でも、どうしてリリムお嬢様は敵に回ったんだろうね。人間なんかの方持っちゃってさ」
「さあね…わかんない。まあでも、戦うんならひねり潰すだけよ。たとえリリムお嬢様だろうとね」
「でも勝てるのかなこの戦、相手も相当の手練れが揃っているわけだしさ。私らとベヒモスだけじゃ負ける可能性だって」
「大丈夫心配ないわ、私たちは負けない。『真打ち』は最後に現れるてこそ本物なのよ。すでにあいつが向かってるわ。『喧嘩ジャンキー』の問題児が」




