真実
「見えたでワカバちゃん。あれがマリリアナ区最大の町『ヨークタウン』や」
眼前に広がる町を指差しクロトラはそう言う。
「総人口10万人、東の国全体の約半分の穀類を貯蔵してしている。そこからついたヨークタウンの別名は『東の国の穀物庫』だったか。フン、大した別名だな…名前負けなんじゃないか?」
「いやいや東の国においてのヨークタウンの存在はマジで大きいんやで。だから悪魔どもも国の中枢都市ではなくここを潰しにきたっちゅうわけや」
ワカバはフンッと鼻で笑い、こう後に続けた。
「…そんなことさせるわけがないだろ。 悪魔は一匹たりも生かして帰さない、皆殺し決定だ」
ワカバは悪魔に対する強い『憎しみ』を込めてそう言う。
「………じゃあまず町に入って聞き込みからやね」
その頃紅葉とリリムは昨晩戦闘のあった森に戻ってきていた。
「うーん…どうやらワカバたちは町に向かったみたいだな。俺らも急ごうぜリリム」
「……………」
紅葉の問いかけに対し、リリムの返答がこない。
「おーい…おーいどうしたのリリムちゃん、リリムさん、リリムっちー。なんで無視しやがるのかな?」
「……………」
(…返事がない…ただのしかばねのようだ…)
「おい…どうしたよリリム。せっかく助けてやったのになんで不貞腐れてるんだよ? 反抗期かな?」
「…べつに…助けてくれなんて言ってませんし、反抗期でもありませんし…」
「助けられたのは事実だろう。この俺に、この俺様に」
「つい数時間前まで悪魔にやられた気絶してたくせに自惚うぬぼれないでくださいよ先輩」
リリムはじと目を紅葉に見せてそう言う。
「ウッ…痛いところを突いてくるじゃないかリリム、だが一つ言わせてもらうけどな、あの状況下でお前が勝てる確率は小指の先程度だったと思うぞ」
「なら私も言わせてもらいますけどねえ、先輩は私の実力を低く考えすぎなんスよ。私が本気になればあんな奴ら」
「どうにもならねえよ、お前程度の実力じゃどうにもならない。わかったならもう行くぞ。ここで口論しててもしょうがないからな」
「……先輩は…本当の私を知らないから……」
誰にも聞こえないように、リリムはうつむきながらそう言った。
「……ん…何か今言ったか?」
「ふん、何も言ってません!! 早く行きますよ先輩ッ!!」
リリムは一人早足で町へと向かう。
(…なんだよこいつ情緒不安定かよ)
〜同時刻〜
「どうだいチルちゃん、これが紅葉くんのチカラの根源となるものだよ」
ハルカは不敵な笑みを浮かべそう言った。
「これって…いやでもこれはおかしいのですよ。こんな事って…ありえない」
「そうだよね…ありえないよねこんな事、でも本当にそうなんだよ。これが真実なのは事実だ。まあでも、紅葉くんのチカラを思えばこれも納得だよね」
今ハルカが開いている禁書のとある一文にはこう書かれていた。
【異世界からの勇者は人と魔の血を引く者なり】
「紅葉くんは初めから膨大な量の魔力を持っていた。魔力の概念すら無い異世界から来たのにだ。でもこれが、紅葉君に悪魔の血が流れているのだとすれば納得だね」




