修行完了
〜午後11時40分“ハルカ邸寝室”
「ふう〜………」
修行を終えた俺は寝室に戻りベッドに横たわる。
今日一日、ものすごく疲れた。
慣れないことをやったからだろう。
酷い疲労感と頭痛がする。
コンコンッ
ドアをノックする音が寝室に響いた。
「元気かい紅葉くん。ちょっと君に話したい事があるんだけど…失礼してもいいかな?」
この声…ハルカか。
「失礼するなら入れねえぞ」
「じゃあ失礼しない。お邪魔します」
ドアの部がひねられ、ハルカが入ってきた。
「なんだよこんな時間に。何か俺に用…か」
俺はハルカをジッと見つめる。
「なんだよ紅葉くん。人の体をジロジロ見て…欲求不満なのかい」
別に、欲求不満ではない。
ただ、ハルカの服装、および体型があまりにも幼稚で、少々眺めていたのだ。
上下いちご柄のパジャマは、一見して見れば小学生が着るようやつだ。
そして、それをさらに際立たせる幼児体型。
どっからどこまでが胸なんだか… 。
ハルカの年齢は俺と同じ17歳。
しかし、体型だけ見るととてもそうは思えない。
せいぜい中学生だ。
「は〜…ガキかよ、お前」
「ぶっ殺されたいのかい君はッ!!」
とてつもない殺気を感じる。
ハルカの両目に怒りと共に殺意が見て取れる。
「悪い…冗談だ」
〜〜〜
ハルカが俺の横に座った。
ハルカの体からは、甘い桃のような香りがした。
ああ…いい匂いだ…心が安らぐ。
「それで…どうだった今日の修行は。何かコツは掴めたかい?」
唐突にそんなことをハルカが聞いてきた。
「…全然だな。正直まだ俺には無理ゲーだと思うんだよ。ただでさえ魔力を感じる能力に疎い俺が、数万といる人の中からお前を見付け出すなんて」
「ふーん…なるほどねえ」
ふっとハルカは笑った。
「なんだよ…俺はなにか変なことでも言ったのか?」
「ふふ…一つ、君のはなしに訂正を加えるよ紅葉くん。君は魔力を感じるのが下手なんじゃない。感じ方がわかってないんだよ」
そうハルカが笑いながら言ってきた。
それがどういう意味なのか、俺はわからなかった。
「紅葉くんはこちらの世界の人じゃないからね、魔力という概念が君の中にはないんだ。だからこの修行をしている」
ハルカは身振り手振りを加えながら俺への説明を続ける。
「僕を見つけるにあたって、君は強制的に町にいる数万の人々の魔力を感じる必要がある。それがこの修行のみそだ。僕の家でチマチマ魔力探知を練習するよりずっと効率がいい。まだこちらの世界に来て日の浅い君には、より多く魔力に干渉して欲しい」
「…でも、俺にはまだ魔力探知の能力が…」
途中まで話したところで、ハルカが話に割って入る。
「そんなものは慣れだ。そこまで問題じゃない。そんなもの…君ならあと三日もすればコツを掴むだろうさ」
俺の横から、ハルカはスッと立ち上がる。
「話しは終わったから、僕はもう寝るね。おやすみ紅葉くん」
「ああ…おやすみ」
ドアを開けて、部屋に帰ろうとするハルカ。
「早く一人前になってくれよ紅葉くん。伝説の救世主が師匠におんぶに抱っこじゃあ…かっこ悪いからさ」
「…………」
去り際にそう言い残し、ハルカは部屋へと帰っていった。
……結局、何しに来たんだよあいつ。
〜〜〜〜
修行は二日目に入った。
気のせいだろうか、昨日より魔力が感じやすい気がする。
魔力の高低というか分布というか。
とにかく、昨日とは明らかになにかが違う。
昨日の今日だから…急になにかが変わる何てことはないはずなのに…でもこれは。
〜〜〜〜
二日目も、結局ハルカを見つけることはできなかった。
だが確実に俺は何かを掴みかけている。
俺は昨日、ハルカが言ったことを思い出す。
『君ならあと三日もすればコツを掴むだろうさ』
これなら本当に、明日には完成するんじゃねえか?
そして三日目である。
…なんだろうこの感覚は。
魔力が一つ一つハッキリとわかる。
昨日まではボヤッとした塊でしか捉えられなかった魔力が、一つ一つハッキリとわかる。
すげえななんだよこの感覚。
超能力者になった気分だ。
「ここから西に八キロ地点に強力な魔力がある…これはハルカのだ。間違いねえ」
地面を踏みしめて、そして離陸する。
一瞬のうちに上空五百メートルほどまで跳び上がり街全体を見渡す。
「いつまでも負んぶに抱っこじゃいられない。待ってなハルカ…お前なんて速攻追い抜いてやる!!」
その後、俺がハルカを見つけることができたかどうかは想像に任せるとしよう。




