かくれんぼ
現在時刻9時05分
紅葉は山の中をただひたすらに走っていた。
リリム探しを始めて約三時間が経過したが、まだ見つからない。
(みんなのように魔力で大まかな場所を特定できりゃなあ)
異世界に来てまだ数ヶ月の紅葉は、魔力を感じ取る事を苦手としていた。
ワカバとリリムが紅葉を追跡したように、それは特定の人物を探すことにおいて真価を発揮する。
しかし、紅葉にはそれがまだ出来ない。
(待てよ、そういえば……一回だけハルカから教わった事があるな)
話は、俺がこの世界に来てすぐくらいまで遡る。
そよ風の気持ちいいある日、俺はハルカに稽古をつけてもらっていた。
「いいかい紅葉くん、魔力を探知するのはコツがある」
一つ、相手の姿を頭の中に思い浮かべ集中力を高める。
二つ、相手の魔力を思い浮かべて探す。
ハルカの言う魔力探知、それのコツはその二つだけだった。
「…それって意外と簡単なんじゃねぇか?
その二つさえ覚えりゃいんだろ?」
コツはたったの二つだけ、これならば俺でも余裕そうだとそう思った。
それを受けて、ハルカも答えた。
「この二つ目が難点でね…魔力が誤差なく完全にシンクロしないと探知はできないんだ。しかも、中には魔力を完全に消せる人もいるからね。うまくいかない事が多い」
なるほどな…確かに、誤差なく魔力をシンクロさせるのは難しそうだ。
「…それじゃあ修行に移ろうか紅葉くん」
「ああ…よろしく頼むぜハルカ師匠」
はてさて、一体どんな修行をするのやら。
厳しい修行になると思うが…俺の生死に関わるような修行は勘弁してもらいてぇな。
「うむ…それじゃあ修行の始まりだ。最初の修行はかくれんぼだ!」
…………っは……?
今コイツ…かくれんぼって言わなかったか?言ったよなかくれんぼって。
「ルールは超簡単!! 制限時間以内にお互いを見付け出すこと、鬼役は交互にやるとしよう。制限時間は太陽が沈むまでだ。かくれんぼの範囲は…デットタウン全域」
…本当にただのかくれんぼじゃねえか。
ただ…範囲が尋常じゃなく広い。
この町がどれだけ広いと思ってるんだハルカのヤツ。
かくれんぼとか、そういうレベルの話じゃないぞ。
「それじゃあ僕から鬼ね。十分後にスタートだから紅葉君ももう隠れていいよ」
いやいや、もう隠れていいよじゃなくて。
「いーちにーさーんしー」
ハルカが目をつぶって数を数え始めた。
「おい待てよハルカ、デットタウン全域ってそんなもん見つかるわけねえだろ、かくれんぼにならねえよ」
「じゅうさん…じゅうし…じゅうご…」
……………………。
全く聞く耳を持たない、これは話が通じないパターンだな。
しょうがない、かくれんぼしてやるか。
俺の異世界での始めての修行は、かくれんぼだった。
修行No.①かくれんぼ
ルール:①制限時間は日が沈むまで。
②鬼は交互に行う。
③かくれんぼの範囲はデットタウン 全域で行う。
参加者:葉隠紅葉(勇者ランク1)『初級勇者』
ハルカ・フォルン(勇者ランク10)
『超級勇者』
長めの回想に入ります。
これから頻繁に出てくる『魔力探知』の修行です。
引き伸ばしとか、ネタ切れとかそういうのじゃないんで。




