↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
46/77

三人の最強

「*******」

男の能力演唱が俺の耳に届く。


「消し飛べ…『炎王爆烈陣』!!」

男周りの空間が歪んだのが見えた。

その瞬間、男から生じた『何か』があたり一帯を消し飛ばし、紅葉を巻き込んだのは刹那のことであった。


午前5時34分

〜苔の密林〜


ふと気づくと、青みがかった空が広がっていた。

朝だと、紅葉はただ漠然とそう思った。


……朝…だと? どういうことだ?

俺は悪魔の女と戦っていた。その時はまだ夜だったはずだが…。

もしかして、気を失って…


「よう少年、気がついたか」


結構近いところから野太い声が聞こえた。

声のした方へ目をやると、あの大男が立っていた。


突然と現れたこの男。

紅葉はこいつのたったの一撃で気絶した。

こいつはいったい、何者だ?


「すまんな少年。能力の制御を間違うてなあ、君ごと吹っ飛ばしてしもうたわ。しかも、残念なことに敵さんには逃げられてしまったわ」

ガハハッと豪快に笑う大男のおっさん。


いやいや笑い事じゃあねえだろ。

とツッコもうと思ったが、やめておこう。

今するべきことではない。


「おっさん…何者だ? 敵か…それとも味方か?」

紅葉はそう質問した。

この男が何者なのか、敵なのか味方なのかなどの確認、これは現時点で一番必要な情報の一つである。


ポリポリと頭をかき、男は少し呆れ顔でため息を吐く。

「…言うたやろ少年。君を巻き込んでしまった、敵さんには逃げられてしまった、てな」

「………」

(確かに言ってた…かも)


この男の話が本当だとすれば、敵さんとはあの悪魔のことだろう。

それに、この男が敵なら紅葉が気絶している間に殺してしまえばいい話。

ならやっぱり、こいつは本当に味方?

だが本当に信じていいのか?

紅葉に何らかの利用価値があって、生かしているだけという可能性も0%じゃない。



一定の距離をとったまま、紅葉はその男を睨み続けた。


「安心しろモミジ。その人は敵じゃない」


とても聞き覚えのある声がした。

「…なんだワカバか、お前いたのかよ」

そこに立っていたのは黒髪の美しい少女。もとい幼女、ワカバだ。

「いたよ! ずっと貴様の周りをチョロチョロしてたよ!」

少し泣き目でそう怒鳴り散らすワカバ。

チョロチョロしてたってなんだよ。

ていうか、こいつなんで少し泣き目なんだ?


「お前、なんで泣いてるわけ?」

そう問いかけると、ワカバはムッとしかめっ面になる。

「……貴様があまりもに私に気づいてくれないから…その…悔しかったのだ」

うわっ何その理由、超カワイイ!

「…ッハハ。いつもお堅いワカバさんにしてはカワイイ理由ですこと」

思わず、いつもの憎まれ口が出てしまった。

「……ッ!!」

「……あっ、ヤバイ」

後悔先に立たずとはこの事だ。


堅物のワカバのことだ、こんな事言ったらどうせ殴りかかってくるに決まってる。

(…まあいいや、これもコミュニケーションの一つ、そう考えよう)


「かッかわい…わたしが…カワイイだと! それわ…その……あの」


(…あれ…なんか思ってたのとちがうな。

なにこの乙女な反応、ギャップ萌えでも狙ってんのか?)


顔を真っ赤にしたワカバは、まるで雑念でも振り払うようにブンブンと首を振る。

「ふ、ふん! 可愛らしさなど私には不要だ」

そんな可愛げのない事を言い出した。

「不要か…まあいいや。お前が不要だってんなら不要なんだろうぜ」

「不要だ、可愛さなどお飾りに過ぎん。私には必要ないのだ。勇者たるもの馴れ合わず、孤高で無ければならんのだ」

そうキッパリと言い切った。

しかし……

なぜだかはわからないが、そのときのワカバの顔は、紅葉には少しだけ…さみしそうに見えたのだった。



「…そんで、なぜこのおっさんが敵じゃないなんてわかんだよ。知り合いか?」

「いや、会ったのはおろか話したのも今日が初めてだ」

「初対面なのか? じゃあなんで」

「顔と名前はよく知ってるよ、勇者なら誰でもな。逆に貴様がなぜ知らないのか疑問なくらいだ」

「ウッセーよほっとけ。んで、このおっさんは結局誰なんだよ」

紅葉がそう問いかけると、ワカバは素直に答えた。

「この方は、世界に3人しかいない超級勇者の一人、クロトラ殿だ」

紅葉は少なからず驚いた。


ハルカと同じ超級勇者。

それは現時点で世界に3人しかいない、『人類最強』の3人。


「イヤーそないに立派な自己紹介、ワシ恥ずかしくなってまうわ。それに『クロトラ殿』なんてなんか性に合わんわ。ワシのことはクロトラさん、もしくわクロちゃんて呼んでな」


(これが超級勇者? このエセ関西弁のおっさんが? このとぼけたおっさんが!?)


あまりの予想外。

目の前にいるこのおっさんが、あごひげを生やし、下手をしたら街中でラーメン屋でもやってそうなこの中年が超級勇者。

あまりにも威厳がなさすぎて、紅葉も逆に心配になった。


「おっさん…そんなんでいいのかよ!?」

「…なにが?」

「いやすべてが…」

「………」

この時、クロトラの心が少しだけ折れたことは誰も知らない。


そしてこの場に、リリムがいないという事に紅葉が気づいたのは、こんな会話の数分後だった。


〜中央部隊第一級本部〜

その日は、朝から非常事態サイレンが鳴り響いていた。


「おいどうなっている!? 朝から何事だ!!」

部隊長と思われるヒゲを蓄えた男はそう怒鳴り散らす。

「緊急事態発生! 『中央部第一魔術図書』より、禁書が盗まれました!!」

「何だと!? あのセキュリティを…いったいどうやって」


部隊員たちが驚いたのは、禁書が狙われたという事より、むしろ禁書が盗まれたという事実である。

禁書が狙われる事は決して珍しくない。

頻度でいけば月一で狙われる。


禁書が狙われた数はここ10年の間で100回以上。

魔術師やテロリストや、はたまた悪魔。

多様な手口で約百年もの間狙われ続ける禁書、しかしながらただの一度も禁書が盗まれた事はない。


究極のセキュリティ。

ある一人の勇者の能力、百年もの間禁書を守り抜いた『絶対探知能力』。


「いったい何者なんだ? 侵入すら不可能に近い禁書の部屋から本を盗んだのは!?」



〜中央区繁華街一区〜

まだ店も開かない朝日と差し込む繁華街の裏路地、ハルカとチルそしてジルマの3人は呼吸を乱しお互いの顔を見合わせる。

「…はぁはぁ…ジルマ、君なんのつもりだい!?」

ハルカがそう問いかける。

「…はぁはぁ…あ? 何が?」

「どうして私たちに力を貸したかだよ。下手をしたら君だって犯罪者の片棒を担ぐかもしれないんだぞ」

強めの口調でそう言う。

「…ははっただの気まぐれさ。会議でハルカのあの話を聞いて興味が湧いた…ただそれだけだよ」

「そんな軽はずみな」

「ああもうしつけえなお前は、別に俺の勝手だろ 俺は俺の意思で勝手に行動したんだ。お前にとやかく言われる筋合いわねえよ」

ジルマは強くハルカを睨みながら言った。

そんなジルマを、ハルカも呆れ顔で見つめ返す。

「…はぁ、なんだか君…紅葉と似てるね。身勝手なとことかさ」

確かにと納得した様子で、横で話を聞いていたチルも首を縦に振る。

「知らねえよそんなの。とにかく…移動するぞ、弟子たちのもとに向かうんだろ。送って行ってやるよ…俺の能力でな」

そう言うとジルマはスッとしゃがみ込み、背中をハルカたちに向ける。

ジルマは送ってやるなどとぶらり散歩気分で言っているが、この都市から紅葉たちのいるマリリアナ区までは直線距離にして、北海道から九州までぐらいの距離だ。

「乗れよ二人とも。お前らでもマリリアナ区までは二日はかかるだろ。でも俺なら『半日』だ」

「半日…か」

『神速』の通り名はだてじゃないなと、少しだけジルマを感心するハルカなのだった。












































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。