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期待外れ

マリリアナ区:苔の密林



体が熱い、額から汗が滴り落ちる。


フードを被った謎の女との鬼ごっこは、すでに30分を過ぎようとしていた。


最初の5分はこの鬼ごっこも楽しかったが…さすがに『飽きた』な。


だからといって、こちらから逃げるのをやめるような事は絶対にしない。


というか、俺の性格上それは無理だ。



そもそも、アイツは何者だ?


いや、何者かなんて問題じゃあないな。


問題は、俺と速度スピードで張り合うような奴がなんでこんな辺境にいるかだ。


偶然なのか、それとも必然なのか…あるいは。



闇の中、怒号が響き渡る。


「いつまでも逃げていられると思うなよ!!」


謎の女は高速で移動しながら、手のひらをこちらに向けた。


「野郎ッ、何かするつもりか!?」


正直うれしかった。


さっきも言ったように、逃げの一辺倒にはもう飽きたからだ。


いい口実ができた。


これはもう、勝負するしかないだろ!!



体の向きを反転。


両足でブレーキを掛け、女と対峙する。


「おもしれえ、来いよ。全力で叩き潰してやる」

「こっちこそ、その減らず口を叩けないようにしてやる」

「ッハ、何言ってやがる。減らず口叩けなくなるのはお前の方だ」


俺は、拳を強く握りしめ、臨戦態勢をとった。



「はああああああ!!」 

(かざ)斬り・鎌鼬(かまいたち)


ヒョウウウッと、不気味な風鳴りの音がした。


何かが奴の手のひらから放たれたのを確認した。

大きさにして人一人分くらいだろうか。


風鳴りの気配が、徐々に近づいてくる。


辺りは暗闇に包まれている…が、俺はその気配を確実に感じ取れている。


「ガハハハッ! しゃらくせぇぜ!!」


ある程度全力で拳を振り抜いた。


風鳴る刃物は、一撃で掻き消され無残に四散した。



風鳴りの正体は『空気の圧縮体』だった。


おそらく、空気を高圧で圧縮し、高速で打ち出すことで空気の斬撃、もとい鎌鼬を作り出したのだろう。

風鳴りはその音。


いや、そんなことより…。


もろすぎる、想像より全然。

もう少し鋭利だと思った。もっと頑丈だと思った。もっと威力があるとおもった。

そう思ったが、実際はこの程度だった。



「うそ…そんな…ありえない。私の鎌鼬が」



コイツのスピードは大したもんだが…所詮それだけの奴か。


これじゃあ、俺の相手にはならねえな。


「おいおいこんなもんかよ…期待外れだなオイ!!」


「き、期待外れとか言うな!!」



大地を蹴り上げ、小柄なフード女に向かって猛進する。


そして、秒をまたがず刹那のうちに女の懐へ入る。


「ッッッ!!」

後方へ跳び退き一撃を回避した。


「ックソ、外したか。流石に速いな」


俺の一撃は目標に当たることなく、勢いそのままに地面を破壊した。

衝撃で地面が揺れる。


フードを被った女はそれを唖然として見ている。


「き、きききき貴様!! 期待外れとか言ってるくせに、なんで『全力』で潰しにきてるんだよ、死んじゃうだろ!! 少しは手加減しろ、少しは私を労われ!!」


…何言ってんだコイツ。


そっちから攻撃してきたくせに、手加減しろとか、私を労われとか…。

コイツ馬鹿じゃねえの。



「………お前、馬鹿なの?」

おっと、うっかり心の声が漏れてしまった(笑)。


「ストレートに言いすぎだろ!! それに私は馬鹿じゃない、訂正を要求する!!」


期待通りに良い反応しやがるぜ。

こうなると、こっちもいじり甲斐がある。


「悪かった、訂正しよう。お前は馬鹿じゃない、ちょっとだけ頭のネジが外れてるだけだ」


「言っていることはさっきと変わららないじゃないか!! 」


「いや、でもほら、ストレートじゃなくなっただろ(笑)」

「遠回しすぎて逆にウザい」



コイツをいじるのが少し楽しくなってきたなと、俺はこの時実感した。


……だが。

この楽しい会話も、次の瞬間、突如終わりを迎えたのだった。
























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