六日目の朝
ハルカとチルが旅立って三日目の朝。
「なあ、一つ提案なんだが。その……モンスター狩りにいくなんてのは…どうでしょうか?」
俺はリリムとワカバにそう提案した。
「「却下‼︎」」
そして、提案は速攻却下された。
「先輩忘れたんスか? 『一週間運動禁止』の約束」
「もちろん憶えてる。でも、ハルカが出かけてからもう三日目だ。いっこうに帰って来る気配もないし、たぶんそうとうな長旅なんだろう」
ハルカが帰って来ることはまずない。
俺が約束を破った事がバレるとすればこの二人だ。
「もし約束を破ったら、先輩のことハルカ師匠に言いつけてやるッス‼︎」
「言いつける? ぬるいぞリリム。酸欠にさせて黙らせる方がいい」
この二人をどう丸めこむか、そこが問題だ。
「待て待て二人とも、その約束をしたのは六日も前だぞ。この通り俺は元気だし…もういいんじゃないか?」
「「却下!!」」
むう…なかなか手ごわいな。
「お前らも、俺の介護六日間は精神的に疲れただろう? どうだ…気晴らしに
「「却下!!」」
はあ、何を言っても無駄だなこれは。まるで聞く耳を持ってねえ。
こうなりゃあ仕方ねえ…『実力行使』、『強行突破』だ。
もういいや。ここに居もしねえやつのことなんて知るか。
「もううんざりだ、付き合ってられっかよ‼︎」
俺は、軽く飛び上がり、ハルカ邸の分厚い天井をぶち破った。
「な‼︎ あのバカ、無茶苦茶すぎる!!」
呆れ顔を通り越して、もはや唖然とするワカバとリリム。
その顔を屋根から見下ろす俺。
うん、じつに滑稽な眺めだ。
「アハハハハハハハハァ!!じゃあな二人とも。まあ一週間のうちには帰るから指をくわえて待ってろよ。じゃあなー!!」
俺は、屋根から軽く跳躍し、繁華街の方に向かった。
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『その』モンスターについて、情報はすでに入っていた。
というのも、それはハルカのおかげなのである。
超級勇者であるハルカには、毎日山のような依頼が届く。
その中に、気になる依頼が一つあった。
『Sきゅうもんすたーからわたしたちをたすけてください』
東の国にある、山岳地帯にあるとある村から送られてきたその手紙。
まだ幼さを感じさせるその文字からでも、事態の深刻さを理解できた。
これを書いたのは、おそらく子供だ。字体から察するに、たぶん十歳にも満たないほどの、小さな子供。
そんな小さい子供が、『たすけてください』とか、それだけでも異常事態じゃねえかよ。
というわけで、優しい俺は助けてやることにした。
と思い立ったはいいが……困ったな、本当に困った。
調子こいて飛び出してきたは良いものの、情報が少な過ぎる。
『わたしたちをたすけてください』だけじゃ、どうしようもねえよな。
はは、マジ笑うしかねえわ。
…仕方ねえ、とりあえず行ってみるか。差出人に会いに。
情報は…まあ村の連中に聞けばなんとかなんだろう。
というわけで、ノープランではあるがとりあえずS級モンスター討伐へ向かうことにした。
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『すみませんハルカ師匠。先輩を止める事ができませんでした』
「気にすることないよリリムちゃん。僕も、彼にはそろそろ我慢の限界がきているころだと思ってたし。むしろ、よく六日も『あの』彼が家でジッとしていられたと感服するくらいだよ。それで、彼は一体何処へ向かったのかな?」
『詳しくはわかりませんが…先輩の部屋から依頼書が一つ見つかりました。その依頼を達成しにいったとすれば、おそらく先輩は…東の国山岳地帯『マリリアナ地区』に、S級モンスター討伐に向かったと思われます』
ハルカは何かに納得した様子で、深々とうなずく。
「ふーん…なるほどね。わかったよ、仕事が終わり次第マリリアナ地区に向かうよ」
『お願いします。私とワカさんも今すぐ先輩の後を追います』
「そうしてくれると助かるよ。じゃあ彼の事はよろしく。私の分もきつくお仕置き頼むよ』
『はい!! それはもちろんッス。先輩は私たちを見事コケにしてくれやがりましたからねえ。腕の2本は覚悟してもらいたいっす!!』
電話越しでも感じ取れるリリムの気迫に、ハルカも少し気が引けてしまった。
「……あーうん…よろしくね。その…殺さない程度に…ね」
言わなくてもわかっているとは思うが、念のため『殺さないで』と念を押すハルカ。
「………はーい(笑)ップツ!」
電話が切れた。
「リリムさんからですかぁ?」
ハルカの肩に乗ったチルがそう言った。
「ああ…うん。脱走したらしいよ…紅葉くん」
「そ…それは…危険ですね、紅葉さんの命が」
「そうだね…本当に危険だね…いろんな意味で、彼の命が」
はーッと、深々と、本当に深々とため息をつくハルカ。
(まったく…本当によく問題を起こす人だな。頼むから死なないでくれよ…いろんな意味で)




