生徒会への挑戦状①
〜モミジの部屋〜
清涼感のある風鈴の音色が部屋全体にひろがる。
生徒会会長の薄野あかりは、机の上に置かれた麦茶を手に取り口を近づけた。
二口ほど麦茶を飲み、喉を潤し、一息ついたといったような様子だった。
あかりの双子の妹、薄野あずさも同様である。
あかりはふうっと大きく息をはき、次のように続ける。
「しかしまあ、この町の夏は暑いな。たしか今日の水無月町の最高気温は32度だったかな? いやはや、夏だからといってここまで暑いと心が折れるな」
僕たちの住むこの町の名前は水無月町。
太平洋に面している人口20万人程の比較的大きめの都市だ。
周りは山に囲まれているものの、決して田舎というわけではない。
町の中心部は、ビルが建ち並んでいるし、いろいろなものが売っている。
比較的発展している方だろう。
「…それより、早く本題に入らないか? そんな話をするくらいなら早く帰ってほしいんだが…」
正直、俺の部屋に2人をあげるのは反対だった。
家族に見つかったら面倒だし…なにより、すごく緊張する。
「まあそうせかすな。なに、小一時間程度で終わる」
「僕としては小一時間と言わず、今すぐにでも帰ってもらいたいところだがな」
「実はな、今回の依頼というのは『私からの依頼』なのだ」
「お前の依頼かよ!!」
結構な大声を出してしまった。
体をビクッとさせるあかり、一方テレビで相棒の再放送を観ているあずさはそんなものには目もくれず右〇さんの推理に聞き入っている様子だった。
「急に声を荒立てるな。ビックリするだろう」
そりゃ大声にもなるだろう。
でもまあ、少し声が大きすぎたかもしれない。
そこは謝ろう…。
「…悪かったよ…すみませんでした会長」
「うむ…わかればいいのだよモミジ庶務」
唐突だが、本題に入るとしよう。
「それで、頭脳明晰で容姿端麗のお嬢様はどんなお悩みをお持ちで?」
僕は目一杯の皮肉を込めてそう質問する。
「そんな言い方はよしてくれ。いくら事実でも、そんな言われ方はうれしくないぞ」
自分が容姿端麗で頭脳明晰のお嬢様だということは否定しないのか…まあ、いいけど。
カバンを開き、あかりは4枚の紙をテーブルの上に出した。
「まず、これを見て欲しい」
あかりにそう指示され、僕は紙に目を落とした。
まず一枚目、なにやら文章が書いてあるようだ。
2枚目、Aの文字がでかでかと書いてあり、その下に文章がある。
3枚目、A同様にBの文字がでかでかと書かれていて、その下に文章が書いてある。
4枚目、Cの文字と文章が2枚目や3枚目と同じように書かれている
一枚目の文章に目を通す。
『 挑戦状 ~生徒会2名へ~
この度は、北山高校生徒会の実力を知りたいと思い挑戦状を書いた次第だ。
しかしながら、挑戦状を書こうと思い立ったらよいものの、なかなかタイミングが無くつらつらと一週間が経っ てしまった。
まったくあの執事ときたら、朝早くから庭掃除なんぞして、挑戦状をポストに入れる隙も無い。
さて、それでは本題に入ろうか。
[A・B・Cの3人のうち、正直者はただ一人。残りの二人はウソつき者。3人の会話から、正直者を見つけよ。そしてA・B・Cの紙に書いてある指示に従い、場所を特定しろ]
A:わたしは正直者です。
B:Aはウソつきです。わたしが正直者です。
C:Bはウソつきです。ほんとうは私が正直者です。
さあ、正直者を見つけ出し、正解にたどり着け。 -星/英よりー 』
うん、なるほどな…さっぱりわからない。
正直者がだれかだって、そんなの僕が知りたいくらいだよ。
そのあと10分間、なんのひらめきもなくただただ頭を抱えて悩む僕なのだった。




