戦場
なぜだ? なぜ俺が人間に見下ろされている?
「ほら立てよ、まだやれるだろ?」
コイツは本当に人間なのか? なぜ俺の攻撃をまともにくらってこんなに元気なんだ?
「ハッ 無茶いうなよ…こっちはかなりガタがきているんだぜ…」
「フッ、アハハッ!!そのわりには目立った外傷はねえみたいだけど…お前って意外と謙虚なのな」
殺し合いをしているにもかかわらず、楽しそうに話す二人。
「さあ…第2ラウンド開始だ!!」
S級モンスター『フェンリル』
狼のすがたをした巨大なモンスター。ギリシャ神話などに登場する。
リリムとワカバは絶賛苦戦中だった。
「一つ提案、あれ…協力して倒さない? 個人のワンマンプレーじゃあれには勝てない」
「それはまた、画期的な提案ッスね…だが断る!」
「な! どうしてだ、今断る理由はないだろう!?」
「いやーだって私、ワカさんのこと嫌いなんスよねー」
「嫌い…私のことが嫌いだと、私はお前に嫌われるようなことをしたか?」
少し泣き目になっているワカバ。
「だって…ワカさんだけなんかずるいんスよ。ここ2日間見てて思ったんスけど、先輩はワカさんに対してやさしすぎると思うんス! なんか…『家族』と話してるみたいに楽しそうで…、あ!違うんスよ、べつに嫉妬してるとかじゃなくて…ちょっと羨ましいなーと…」
モジモジと少し恥ずかしそうに頬を赤くするリリム。
逆に少し暗い顔のワカバ。
「家族のように親しく…か、…だが私に言わせれば、それはあまり良いものでもないぞ…。なんでも私は彼の親族の一人にそっくりなのだそうだ。それを考えると女として見てもらえていないような気分になるんだ」
「なぜそんなにネガティブ思考なんすか…ほら笑顔ッスよ! いくら家族の顔に似てるからってそんなことはないッスって」
・・・・・・・・・・
「あーもうわかったッス! 協力するッス、そのかわりだんまりを決め込むのは卑怯ッスよ! あと辛気臭い話もだめっス、重い空気は苦手ですから。それから…さっきワカさんが嫌いって言ったのは撤回するッス…。私のなかのワカさんは、いつも元気で…少し堅苦しくて…でもそのギャップがカワイくて、はにかんだ笑顔がカワイイ、私の信頼できる数少ない友達だと思うんス。だから元気の無いワカさんなんて見たくないです、笑顔でいてほしいんです!」
恥ずかしそうにはにかむリリム、その様子を見てクスッと笑うワカバ。
「そうか…うんそうだな! でも、お前はおかしい奴だ…たったの2日一緒にいたくらいでよくそこまで言えたものだな」
「友情に付き合いの長さは関係ないんですよ」
「なるほどな…それじゃあ協力して倒そうか、あの怪物を…」
「了解ッス!!」
リリムとワカバはたった2人で、巨大な怪物に立ち向かうのだった。
一方その頃ハルカは…、
「1237…1238…1240…1243…」
これといった強敵にも出会わず、着実に敵を倒していた。
みんな大丈夫かなー?
まあたぶん…あの奥の方でバカげた戦い方してるのは紅葉くんだと思うけど…リリムちゃんとワカバちゃんはどこにいるんだろー?
あれ…今倒したの何体目だっけ?
1200?…1300? うーん…わかんないから1000から再スタートでいいかな…。
「おいおい洒落になってねえぞカラビア…形体変化してパワーアップとかどこのフリーザ様だよ!」
「この姿はべつにパワーアップしたわけじゃねー、俺のような上級悪魔は、人型に形体変化して強大すぎるチカラを制御してるんだ、それがさっきまでの姿。つまりこれが俺の本当の姿であり、俺の本当のチカラだ!」
話し終わると同時に、先ほどより一回り大きくなり悪魔の姿となったカラビアが紅葉に突っ込む。
避けきれない、紅葉はそう判断し咄嗟に防御の態勢をとる。
しかし、チカラを解放したカラビアの蹴りは紅葉を軽々と蹴り飛ばす。
天変地異にも匹敵するであろうかというほどの圧倒的チカラを前に、紅葉の防御は意味をなさない。
圧倒的なチカラと速さは、先ほどまでとはまったく比較にならない。
「おらどうした! さっきまでの威勢はどこいったんだよ!!」
さらに追い打ちをかけるかのように、地面へ殴り飛ばされる紅葉。
その破壊力をものがたるように、地面には大きな亀裂が走り、濃い土煙がしばらくの間立ち込める。
「どうだ人間! これが俺とお前の圧倒的なチカラの差だ!!」
地面に赤い鮮血がポタポタと落ちる。
紅葉に反応はなく、ジッと下を向いたままである。
「あ? どうした人間…今のダメージで声もでねえか?」
「…フッ、アッハッハッハッハッハッハはははははハハハハヒャはははははははああ!!」
まるで少年のように高らかに、心地良い大きな声で、不気味に笑い上げる葉隠紅葉。
それを見て、頭がおかしくなったのか…と不自然そうに紅葉を睨む悪魔カラビア。
「いいぜいいぜ最高だ!! 俺好みのパワーアップしたじゃねえか!! なんか物足りねえと思ってたんだよ。いい感じにテンション上がってきたし、こっからが『本気の死闘』の始まりだ!!」
「ッは! その言いぐさだとさっきまで本気じゃなかったみてえじゃねえか。…いいぜ、もっと俺を楽しませろ葉隠紅葉ーーーー!!」
「言われなくてもすぐ楽しませてやるよカラビアーーーー!!」
みたび正面衝突、二つの巨大な魔力がぶつかり合い、反発しあう。そしてプラズマがごとく、辺りに魔力の波紋が光と衝撃波となって広がる。
さながらドラ〇ンボールの戦いのようである。
しかし、このままでは紅葉に勝ち目はない。
地殻変動や天変地異にも比するチカラを解放したカラビアを相手にするのは、さながら星を丸ごと相手どるようなものである…
頭を鷲掴みにされ、体が宙に浮く紅葉。
「…いきがったわりにこんなもんかよ…どうしたもう降参か?」
「…っは 誰が降参するかよ!!」
紅葉は体をねじりカラビアの脇腹に蹴りを入れて脱出する。
しかしまあ、このままじゃ勝てねえな…こっちも腹くくらねえと。
ケイトからは止められてるけど…周りに人いねえし大丈夫だろ。
「最初に言っておくぞ、俺は悪くない! 悪いのはお前だ! もう骨が何本も折れてるし出血もヒドイ…だから俺は『能力』を使う!! 何より『死にたくない』し『負けたくない』からな」
「本当にマジで…『暴走』しても俺のせいじゃねーからな! ハルカに会ったらそう伝えとけ!!」




