表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山田のシリアス異世界転生記 Everything is as planned  作者: 変な人
山田の脱出劇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/18

第五話 長い夜

カチリ。

 重い鉄扉が閉まり、電子錠が作動する音が地下通路に響いた。

 山田は硬いベッドの上に座り込み、大きく息を吐く。

 「……なんなんだよ、本当に。」

 返事をする者はいない。

 壁は分厚いコンクリート。

 天井には白い蛍光灯。

 窓はなく、外の様子はまったく分からない。

 ここが昼なのか夜なのかさえ分からなかった。

 頭を抱える。

 数時間前まで、自分は日本の高校で世界史の授業を受けていたはずだ。

 先生が昭和の話をしていた。

 退屈で眠くなって。

 少しだけ目を閉じた。

 それだけだった。

 気が付けば赤い旗の街にいて、戦車に囲まれ、今は地下牢。

 夢にしてはリアルすぎる。

 頬を思い切りつねる。

 痛い。

 「……帰りてぇ。」

 自然と言葉が漏れた。

 母親は心配しているだろうか。

 学校では失踪騒ぎになっているのだろうか。

 そんなことを考えるほど、この世界は現実味を帯び始めていた。

 ガチャ。

 鉄扉が開く。

 若い女性士官が食事を運んできた。

 無表情のまま机へトレーを置く。

 黒パン。

 白いスープ。

 見たことのない果物。

 山田は恐る恐る口を開く。

 「あの……。」

 女性は振り返る。

 「何でしょう。」

 「俺……これからどうなるんですか?」

 少しだけ沈黙が流れた。

 「知りません。」

 「命令を受けているだけです。」

 「俺、本当に何も知らないんです。」

 「普通の高校生なんです。」

 女性は山田を見つめる。

 その目には敵意も憎しみもなかった。

 ただ、どこか疲れたような色が浮かんでいた。

 「……明日。」

 小さく呟く。

 「え?」

 「明日、尋問があります。」

 「分かることは、それだけです。」

 それだけ言うと、彼女は部屋を出ていった。

 ガチャン。

 再び鍵が閉まる。

 「尋問……。」

 テレビでしか聞いたことがない言葉だった。

 警察みたいなものだろう。

 事情を説明すれば帰してもらえる。

 そう思いたかった。

 しかし。

 ここは日本ではない。

 異世界だ。

 常識など通用する保証はどこにもなかった。

 一方その頃。

 国家保安省地下九階。

 特別会議室。

 「対象はどう見ますか。」

 長机の上には山田の写真。

 現場写真。

 魔法陣の解析資料。

 それらが並べられていた。

 ヴォルコフ上級大将は腕を組む。

 「敵兵器である可能性は。」

 研究主任が答える。

 「否定できません。」

 「魔力反応は。」

 「測定不能。」

 「身体構造。」

 「ホモ・サピエンスと一致。」

 「魔法適性。」

 「ゼロ。」

 部屋が静まり返る。

 「魔法を使えない……?」

 「はい。」

 「しかし未知の転移魔法で出現しています。」

 矛盾していた。

 魔法を使えない人間が、史上最大規模の転移現象と共に現れた。

 説明がつかない。

 ヴォルコフは静かに言う。

 「ならば本人に聞くしかあるまい。」

 「薬剤の準備は。」

 「完了しています。」

 「精神鑑定官も待機済みです。」

 「……そうか。」

 短い返事だけだった。

 同時刻。

 第126開発区。

 現場では今も調査が続いていた。

 瓦礫の撤去。

 魔力残滓の採取。

 土壌の分析。

 兵士の一人が瓦礫の下から黒い金属片を拾い上げる。

 「なんだこれ。」

 手のひらほどの薄い板。

 傷だらけで、何か文字が刻まれている。

 だが読めない。

 「遺物か?」

 「ただのゴミだろ。」

 兵士は証拠箱へ放り込んだ。

 誰も気に留めない。

 ほんの一瞬だけ。

 金属片の表面に青白い光が走ったことを除けば。

 地下七階。

 山田は眠れなかった。

 目を閉じるたびに、あの巨大な魔法陣が頭に浮かぶ。

 戦車。

 銃。

 赤い旗。

 知らない言葉。

 そして女性士官の一言。

 「明日、尋問があります。」

 その言葉だけが、何度も頭の中で繰り返されていた。

 静まり返った地下施設で、時計の針だけが静かに時を刻む。

 誰も知らない。

 明日の尋問が、一人の少年の運命だけではなく、この世界そのものを大きく動かす最初の一歩になることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ