第八話 反乱軍
ドォォォォン!!
凄まじい爆発音が地下施設全体を揺らした。
照明が一斉に消え、非常灯だけが赤く明滅する。
警報が耳をつんざくように鳴り響いた。
『警報。第六区画にて大規模爆発を確認。全職員は戦闘配置へ――』
アナウンスは途中で途切れ、激しいノイズに変わる。
「敵襲だ!」
「非常電源へ切り替えろ!」
「対象を連れて退避する!」
兵士たちが一斉に動き始める。
山田は拘束椅子に固定されたまま状況が理解できなかった。
(何が起きてる……!?)
その時だった。
バンッ!!
尋問室の扉が内側へ吹き飛ぶ。
白煙が部屋へ流れ込み、視界を覆った。
「撃て!」
兵士が叫ぶ。
銃声が連続して響く。
しかし煙の中から飛び出した黒い影は、驚くほど素早かった。
床を滑るように移動し、一瞬で兵士の背後へ回り込む。
「なっ――」
兵士は悲鳴を上げる間もなく気絶し、その場へ倒れ込んだ。
続いて二人目。
三人目。
煙の中では何が起きているのか誰にも見えない。
ヴォルコフだけが冷静だった。
「特殊部隊か……。」
その瞬間。
煙の奥から低い声が響く。
「こちら"灰狼"。対象を確認。」
「予定通り回収する。」
次の瞬間、部屋の照明が完全に落ちた。
真っ暗闇。
銃声。
怒号。
金属のぶつかる音。
すべてが混ざり合う。
山田は目を閉じるしかなかった。
数秒後。
誰かが肩を叩く。
「山田太郎。」
「立てるか。」
目の前には、防毒面を着けた男が立っていた。
黒い外套に身を包み、腕には見慣れない紋章が付いている。
「誰……?」
「説明は後だ。」
男は腰から小型の工具を取り出し、拘束具を外していく。
カチン。
カチン。
重い金属が床へ落ちた。
「歩け。」
「ここはもう長く持たない。」
「え、ちょっと待っ――」
男は山田の腕をつかみ、煙の中へ走り出す。
背後では兵士たちの叫び声が響く。
「逃がすな!」
「出口を封鎖しろ!」
「対象を奪われるな!」
しかし地下施設はすでに混乱の渦中だった。
各所で爆発が起こり、非常扉は次々と閉鎖される。
煙の中を走りながら、山田は必死についていく。
「あなたたちは何者なんですか!」
男は前を向いたまま短く答えた。
「その質問に答えるには、まず生きて地上へ出る必要がある。」
「走れ。」
その言葉と同時に、再び大きな爆発が地下を揺らした。
崩れ落ちる天井。
舞い上がる粉塵。
施設全体が悲鳴を上げるように軋む。
山田は知らなかった。
自分を救出したこの集団が、サピエス連合から「国家転覆を企てる最大の反政府組織」と呼ばれる存在であることを。
そして、この救出作戦そのものが、何者かによって仕組まれていたことを。




