スピンオフ 秋桜・金木犀
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島を脱出した後、秋桜と金木犀は、それぞれの家へ戻ることなく、2人で旅に出ることを決めた。
秋桜は伸びをしながら笑う。
「体は大丈夫~?」
金木犀も微笑み返した。
「私は平気です。秋桜様の方こそ……」
「金木犀が居れば問題ないよ~。」
その言葉に金木犀は笑顔を見せるものの、どこか心配そうな表情を浮かべていた。
「行くよ~、金木犀。」
「待ってください、秋桜様。」
2人の口座には、優勝賞金が振り込まれていた。
月狼が最後に残してくれた贈り物だった。
そのおかげで、2人は何も気にすることなく旅を続けることができた。
山へ行き、海へ行き、遺跡を巡り、遊園地では子どものようにはしゃぐ。
行きたい場所は、全部行く。
それが2人の旅だった。
山頂から見える景色を眺めながら、秋桜が呟く。
「綺麗だね~。」
「本当ですね。」
金木犀も景色に見惚れながら答えた。
しかし、その表情は少しだけ寂しそうだった。
「あの戦いがなければ……。」
秋桜は首を横に振る。
「でも、月花大戦がなかったら~。」
「私たちは出会えなかったよ~。」
金木犀は驚いたように秋桜を見る。
「秋桜様……。」
「だからさ~。」
「これからは2人で、いっぱい楽しもうよ~。」
その言葉を聞いた金木犀は優しく微笑んだ。
それ以降、2人が月花大戦の話をすることはなかった。
遺跡では神秘的な空気に包まれながら静かな時間を過ごし、
遊園地では閉園間際まで遊び尽くした。
ジェットコースターも観覧車も、お化け屋敷も。
すべて乗るまで帰らないと決めていた。
「楽しいね~。」
「はい!」
「今まで、こんなこと出来ませんでしたから。」
秋桜は笑う。
「もう自由だからね~。」
海では2人で水着を選んだ。
秋桜は可愛らしいフリル付き。
金木犀はパレオ付きのビキニ。
「金木犀はスタイルいいからね~。」
「そんな……恥ずかしいです。」
照れながらも金木犀は秋桜を見つめる。
「秋桜様も、とても可愛らしいです。」
「あ~、子ども扱い~?」
「ち、違います!」
「可愛い水着を着た秋桜様が、本当に可愛かったので……。」
「冗談だよ~。」
秋桜が笑うと、金木犀は少し頬を膨らませた。
そこへ1人の男性が近づいてくる。
「君、可愛いね。」
「俺と一緒に泳がない?」
すると金木犀は反射的に秋桜の前へ立った。
「秋桜様には近付かせません!」
男性は困った顔になる。
「いや……俺が誘ってるのは君なんだけど。」
「……私ですか?」
「うん。」
「行こうよ。」
金木犀は丁寧に頭を下げた。
「申し訳ありません。」
「私は秋桜様と泳ぐ約束をしていますので、お断りいたします。」
男性は苦笑しながら去っていった。
秋桜はその様子を見て笑いが止まらない。
「金木犀らしいね~。」
「もう、秋桜様!」
2人は顔を見合わせて笑い、その後も夕暮れまで海を満喫した。
水平線へ夕日がゆっくりと沈んでいく。
「楽しかったね~。」
「……はい。」
しかし金木犀の表情はどこか曇っていた。
「どうしたの~?」
「この先……私たちはどうなるのでしょう。」
「いつか……。」
秋桜は静かに金木犀を見つめる。
「金木犀。」
「嫌じゃなければさ~。」
金木犀も真っ直ぐ見つめ返す。
「ずっと一緒にいてくれないかな~?」
「私は、ずっと金木犀の隣にいたい。」
「私じゃダメかな~?」
金木犀は少しも迷わなかった。
「ダメじゃありません!」
「私も、一緒にいたいです。」
「私も……秋桜様の隣にいたいです。」
秋桜は優しく微笑み、そっと金木犀を抱きしめた。
「金木犀。」
「秋桜様……。」
金木犀も抱きしめ返す。
どちらからともなく笑みがこぼれた。
夕日は静かに水平線へ沈み、2人の影だけが長く砂浜へ伸びていく。
それからも2人は旅を続けた。
目的地を決める日もあれば、気の向くまま歩く日もある。
どこへ行くかよりも、誰と歩くか。
それが秋桜と金木犀にとって、一番大切なことだった。
2人の旅は、これからもゆっくりと続いていく。
今後もよろしくお願い致します。




