第七話 露呈
ウェズに感謝したあと別れ、午前九時、地域管轄司令官の部屋に入った。
「やぁ、ヒロ。この前はよくやってくれた」
青髪の男はヒロにそういった。ヒロは軽くお辞儀をしてさっさと本題に入った。
「イヴァイア司令官。ヴェロヘラの一人が自供しました」
「ほう」
イヴァイアは興味なさげに言いデスクワークを始めた。そんな彼を無視して話をつづける。
「それによると彼らの故郷の村がわが軍の一人に燃やされた、と」
「作り話もここまでくれば立派なものだな。ヒロ」
「えぇ。そうですね。ですが」
少し間を開けて、ヒロは話し出した。
「その村に火を放ち、住民を殺した人間は物の形状を変えられる能力を持っているらしいです。その能力は、ある大戦士が有しています」
書類を書いていたペンの動きが止まった。さっきまで緩かったヒロを見る視線がより鋭くヒロに突き刺さってくる。
「俺はその者と話がしたいのです。イヴァイア司令官。どうにか合わせてくれませんか」
「無理だ」
イヴァイアは書類をたたみ、席を立った。時間がたつにつれてヒロにかかる垂直な圧力が重くなっていく。イヴァイアは言った。
「ヒロ、お前はその話を信じるのか?」
「‥いえ。ですが俺は、ただ真偽を確かめたいのです」
「‥‥そうか。残念だ」
イヴァイアの手から水が生成されている。ヒロはイヴァイアの殺気を察知し刀を抜いた。その瞬間
__高潮 たかしお
速く強い波がヒロの刀にあたる。ヒロは部屋を吹き飛ばされ、さらに窓から落ちた。
(早く、受け身をとらなければ!)
__ブライト
ヒロは背中から落ちた。普通なら落下死していたところ、一時的に身体能力を向上することによってなんとか生き残った。だが、背中から全身に痛みが走る。ひしひしとくる痛みに耐えながら立ち上がった。ヒロは広場の装飾された木の上に落ちた。この前、ウェズに頼み込み、そして受け入れてもらった場所である。すると、面に響く轟音とともにイヴァイアが降りてきた。ヒロはすぐさま刃を向けた。
イヴァイアの能力は波。水を生成、そしてその波を操ることができる力である。
__渦潮 うずしお
生成された水が渦を巻いてヒロのほうへ向かってくる。ヒロは刀を構えて攻撃に出た。
__ライトロード
縦長の光線が渦を縦に切った。二つに分かれた渦が正門にある建物にそれぞれ直撃し当たったところがへこんでいる。ぼろぼろとコンクリートが壁から崩れている。ヒロはすかさずイヴァイアに斬りかかった。イヴァイアは笑いながらヒロに近づいた。
__波紋 はもん
イヴァイアを中心に同心円状に波が広がっていく。速さは遅いがその分当たればどうなるかわからないほどの威力があることは容易に想像できた。
__光柱 こうちゅう
ヒロの前に光放つ柱が何本も現れた。それらはイヴァイアの波からヒロの身を防いだ。イヴァイアは舌打ちして一時距離をとった。
「ヒロ、お前強いなぁ。俺はお前を戦士官に推薦しようとおもっていたのだがなぁ」
「さっき俺が言ったこと、認めるってことだな」
イヴァイアは何も言わなかった。その代わり‥
__高潮 たかしお
速く強い波がヒロの体にあたった。ヒロはあまりの衝撃にうめき声をあげたが、それよりはやく正門のさらに向こうへと吹き飛ばされた。ヒロはおそらく内出血を起こしていた。さらに頭からも血がでている。イヴァイアがゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
ヒロは刀を構えようと動いた瞬間、視界が薄れていきやがて倒れた。血を流しすぎて気絶したのだ。
「こりゃあいい。殺しやすくなった」
イヴァイアは鉄砲のように指をおった。
__鉄砲水 てっぽうみず
ヒロへ水の弾丸が向かっていく。ヒロの体に当たりかけたその時、弾丸は別の方向にはじかれ飛んで行った。
(誰だ!)
イヴァイアが不思議におもっていたが、やがてそれは驚きと恐怖へ変わっていった。ヒロをかばうように立っている刀を持った白髪の老人を見たのだ。イヴァイアはそれが誰なのか一瞬で分かった。昔、上級戦士官として国軍にいた男、カンダジゴロウだった。
「なぜ‥お前がここにいる‥‥カンダ」
「久しいなイヴァイア。ちょうど通りかかったから暇つぶしに」
ジゴロウは刀をしまい、腕を組んで右手の人差し指をヒロに指した。
「ところで、なぜヒロを殺そうとしている? まさか、お前らの悪行に気付いてしまったのか」
イヴァイアは震える手を地面に向けた。
__潮汐 ちょうせき
地面から大波が三つにわたってジゴロウに襲ってくる。ジゴロウはヒロの前に立ちながら刀を抜き構えた。ジゴロウの能力は花だ。花のように美しい斬撃を繰り出せる力である。
__花衣・黒真珠 はなごろも・くろしんじゅ
刀からでた黒い斬撃が大波を三つとも一瞬で刻んだ。イヴァイアはさらに攻撃をつづけた。
__高潮 たかしお
__渦潮 うずしお
速い波に続いて渦を巻いた波が襲ってくる。ジゴロウはまたゆっくりと戦闘態勢をつくりなおし、刀を振った。
__百合 ゆり
ジゴロウとヒロの周りを包むように白いドーム状の物体が出現した。そこへ波が通っていく。しかし、そのドームの中へ水は入ることなく本当にドームがあるかの如く波は通り過ぎて行った。やがて波は奥に止まっていた車にあたった。その車はもうすでに原型を保っていない。
__向日葵 ひまわり
ジゴロウの刀の先から黄色の丸い球が現れ、ジゴロウが刀を振りかざすとその球はイヴァイアのほうへ飛んで行った。次の瞬間、イヴァイアはそれにあたり、国軍指令省の入り口まで吹き飛ばされた。イヴァイアは吐血した。
「さて、こいつをつれておいとまするか。はやくしないと手遅れになる」
ジゴロウは刀をしまうとヒロの刀をもってヒロを担ぎ、どこかへ歩いて行った。
「待てよ‥‥カンダ」
イヴァイアは立って追おうとしたが気絶し倒れてしまった。ヒロを担いだ老人はすでに姿を消していた。
次回は12月13日21時に公開です。




