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第六話 疑念

 あれから二週間後、ヒロは国軍指令省内部にある図書館に来ていた。ゲントルが言っていた話の真偽を確かめたかったのだ。ヒロはその時の記録を棚から取り出し、そばにあった椅子に腰をかけ、机に記録を置いて読み始めた。その村にはテロリストの男が村に侵入し、その男が村に火を放ったと書いてあった。だが、ゲントルの話ではその男は血まみれだったはずだ。その旨はひとつも書かれていない。だが、一連の流れに矛盾点は見いだせなかった。

(やはり彼らの妄言だったのだろうか。いや、違う。とても彼らが嘘をついているようには見えなかった)

だがそれを証明できる人間はいない。ヒロは頭を抱えて机を見つめた。その頭の中では脳内をめぐる電気信号がものすごい速さで行き来していた。やがてヒロは気付いた。

(国軍の中に物の形状を変える能力の人間はいるのか)

ヒロはウェズのもとへ向かった。すでに時刻は十六時を超えていた。ウェズは仕事を終えてちょうど帰宅しようと国軍指令省の正面玄関を出た。国軍指令省は三棟に分かれていて、正門を通って少し進んだところにラウンドアバウトのような道があり、三つに分かれている。一つは軍の装備や訓練場がある棟、一つはウェズやヒロが勤めている国軍指令省本部の棟、そしてもう一つには図書館や軍の食堂がある棟である。道の真ん中には装飾された木がある。ウェズはあくびしながら鞄を左手に持って歩いていた。ちょうどそこへヒロが走ってきた。

「先輩!」

聞き覚えのある声にウェズは下を向いていた重たい首を上げ左に向けた。

「ヒロ、俺はもうそろそろ過労死する。後は頼んだ」

冗談を交えながらウェズは笑った。ヒロは返答に困り苦笑いをした。そして真剣な顔をして話し始めた。

「先輩、頼みたいことがあります」

ヒロがいきなり真剣に言うので思わずウェズも身構えた。

「どうした、急に」

「人事部に士官学校の生徒の情報がのっていますよね」

「あぁ。それが?」

「そこにのっている人の能力に関する情報をすべてください」

(何を言っているこいつは‥‥)

あまりの発言にウェズはうろたえた。

「とんでもない量だぞ」

「かまいません」

「一体何を探している?」

ウェズがそう聞くと、ヒロは口を紡いだ。ウェズはあきれて帰ろうと足を踏み出した。

「待ってください」

ヒロがウェズを引き留めゲントルが語った話をウェズに打ち明けた。しばらくウェズは黙って立ち尽くしていたが、やがて

「そうか。もしそれが本当だとすれば、その形状を変える能力の持ち主がいるということだな」

「はい」

「生徒の個人情報をお前に流す、か。ばれたら即軍法会議だな。こりゃ」

「‥‥わかった。俺も手伝う」

ウェズは振り向いてヒロに言った。ヒロは自分がやるからいいといったが、お前だけでは無理だと言いかえした。

「明日、資料を渡してやる。取りに来い」

そういってウェズは歩き出した。

「ありがとうございます」

ヒロは去り行く背中に深々と頭を下げた。

 翌日、ヒロはウェズからもらった資料を家でひたすら読んでいた。まるで山のように資料が積みあがっている。日中は仕事があるので時間が取れないので夜の間に読んでいた。一人ひとりの名前と顔写真、そして能力についての記録を右から左へひたすら読んでいく。そして、一日、また一日と過ぎていった。

 二週間後、ようやく渡された資料をすべて読破した。ヒロの目には相当濃いくまができている。とてつもない達成感と疲労が同時に襲った。だが、そこには形状を変える能力のものはいなかった。ヒロが時計を見ると、もう朝の四時だった。

 午前八時、国軍指令省に入ったヒロは、すぐさまウェズを探した。人事部にウェズは座って仕事をしていた。ウェズも同様くまができている。ヒロはウェズのデスクへ向かい声をかけた。自分のところになかったのでウェズのところに乗っていたのだろうと思っていたからだ。だが、ウェズは首を横に振った。

「全部読んだが、いなかった」

(やはりサーガとゲントルの妄言だったのか)

ヒロがあきらめて帰ろうとすると

「おい、どこへ行く」

ウェズが立ち上がって引き留めた。ヒロは不思議そうにウェズを見つめた。

「士官学校の生徒にいなかっただけだ。だが、能力を持つ国軍はまだいるじゃないか」

「それを調べないとまだ分からないぞ」

(士官学校の生徒にいない、能力を使う国軍の人間‥‥)

ヒロは考え、気付いた。

「大戦士‥‥」

「そうだ。ついてこい」

ウェズとヒロはある部屋に入った。そこには大量のコンピューターが並べてある。ウェズは手を空中でまるでキーボードを打つように構えた。

__デバイスハック

ウェズの能力は情報操作。ハッキングの記録を残さずデジタルの情報などを見る、さらには書き換えることができる力である。ウェズが国軍に入ったきっかけは戦士による勧誘だったが、それはこの能力を好き勝手に使われないよう制限するためだったのだ。もちろんウェズは承知の上だった。なぜなら、別に将来の夢がなかったので戦士の方々が職業を斡旋してくれるのであればありがたいことこの上なかったからだ。ウェズは六人いる大戦士の情報を見た。だが、この青い画面はウェズにしか見えないのでヒロから見るとただ空中を眺めているだけである。ウェズは、ある大戦士の能力を見た。そこには物の形状を変える能力と書いてあった。

「ヒロ、あったぞ」

ヒロはウェズからその大戦士のことを聞いた。大戦士は課ごとに一人いる。だが、その局のものしかその大戦士に会えない。なので、ヒロはイヴァイアに掛け合おうとしたのだ。

次回は12月11日21時に公開です。

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