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第五話 あの村

 イアンとフブキが一息ついたとき、そこへヒロとサーガをおぶったファイが来た。ヒロは歯をくいしばって悶絶しているゲントルを見てイアンに尋ねた。

「そいつは?」

「ヴェロヘラの一員だ。ファイが抱えている奴は?」

「そのトップらしい」

「そうか。‥‥なぜ気絶している?」

「いろいろあったからな!」

ファイの自信にあふれている様子を見て、イアンは何となく察した。サーガが気絶しているので、仕方がなくゲントルに対し質問を始めた。

「なぁ、お前らはなんでこんなことをしている」

「あぁ? てめえらに話す義理はねぇ」

「そうか。その傷、もっとえぐってやってもいいのかな」

イアンの冷ややかな視線と、地面に何度も刀を突き刺す音をゲントルは聞いたが、さすがにそれくらいでは話さなかった。

「おい、イアン。もっといい方法があるぜ!」

ファイはにやにや笑いながらヒロの刀を取り、サーガの首に刀の刃を向けた。

「ファイ!」

ヒロは止めようとしたがイアンに制止された。フブキはどうしていいか分からずおどおどしている。

「おいてめぇ! 話さなきゃこいつ殺すぞ!」

「おいおい‥‥」

ヒロはファイをもっと監視しておくべきだったと後悔した。ゲントルは下を向き、歯を食いしばった後、自分たち過去について話し始めた。


 十六年前。サーガとゲントルは親友だった。小さな村で生まれた二人だが、彼らにとって村は小さくても人々が活気づいているので何も気にならなかった。サーガは気になっている人がいた。その子は二人とよく遊んでいるサーガの幼馴染でピンク色のリボンをつけたかわいらしい女の子だった。サーガは不器用ながらも彼女に思いを伝えようとしては思いとどまる日々を過ごしていた。ゲントルはよくサーガから相談を受けていて、そして親に聞きアドバイスをしていた。ゲントルはいつか二人がくっつくことを楽しみにしていた。ある日、全身血だらけの男が村に来た。その男が村の住民から介抱されると、男は話した。

「この国の大戦士は自分たちの私欲に地位を乱用している!」

もちろんサーガやゲントルも含め誰も信じなかった。だが、それが悲劇を招くこととなった。

その日、その子は家業の手伝いをしていた。その女の子の家は鍛冶屋であった。朝から働いていた母が風邪にかかり急遽駆り出されたのである。サーガとゲントルは村から少し離れた丘でそよ風を感じながらただ茫然と空を見ていた。その時、ゲントルは村の家から火が出ているのが見えた。二人はできる限り早く村へ戻った。そこにいたのは、腹部を鋭利な刃物のようなもので貫かれているサーガの両親の死体と燃えている家だった。サーガはただ立ち尽くした。何が起こっているのかわからなかった。だが、ほかの家でも火災が起きていた。村全体が火の海になった。サーガは二分ほどたったままだったがすぐに走り出した。ゲントルは自身の家へ向かった。自分の両親が無事なことを祈って。だが、それは無駄となった。家は燃えていた。後から分かったことだが、家の中に両親と思われる焼死体があった。しかし、いずれも燃える前に絶命していた。サーガの親と同じく鋭利な刃物で刺されていたのだ!

 ゲントルは地面に目を落としたままふらふらと歩いていた。その時、血まみれの男を見つけた。その男も同じく死んでいた。ゲントルはこの男のせいだと直感した。体が煮えたぎるような怒りに襲われ、男の死体を何度も蹴りつけた。頭に血管が浮き出て塩の味がする涙が絶えずこぼれた。

(こいつのせいで村が、父さんが、母さんが……)

ゲントルは自身の靴が血まみれになるまで蹴っていた。すると、若い男の子の声がした。後ろを振り向くと、サーガが立っていた。サーガの目が死んでいるのがすぐに分かった。そして、彼の手には、ピンク色のリボンが握られていた。だが、そのリボンも七割ほどが黒い。サーガは闇の中にいた。どのくらいの時間がたったのだろうか。ゲントルはある人物に気付いた。そいつは、村の住民を手に持っていた斧で脅していた。だが、その斧は突如形を変え、槍となり、その住民をさした。その後国軍は隣の国のテロリストによるものだと報道した。しかし、サーガとゲントルは信じなかった。なぜなら、その者が来ていた服は、国軍の軍服だったからだ。そこから、二人は反パラダイムを掲げて動いていたのである。そのためにいろんなテロ組織のもとへ出向いたが、どこもただ人を殺すことに執着しているばかりであげくの果てに二人は命を狙われる羽目になった。国軍が最近になってようやくそれを潰し、残党を二人で一掃したことで二人はついに活動を始められたのだ。そして、最初に軍事基地を攻撃し例の大戦士が出てくるのを待ったが、結局現れなかった。次の機会を模索しているちょうどその時にヒロたちがやって来たのだった。


 ゲントルは一通り話終えた後、ばたっと横に倒れた。ゲントルはついにやけどの痛みに耐えられなくなったのだ。ファイはヒロに刀を戻した。そのときヒロは動揺していた。

(本当に国軍の人間が村の住民を虐殺したのだろうか…)

「こいつらの妄言だ。忘れろ」

イアンは冷たく言い放った。だがその瞳の奥にある炎は揺れ動いていた。ヒロは彼らが嘘を言っているようには感じられなかった。やがて、ヒロたちは二人を連れて凱旋した。

ファイは国軍に入るために軍の士官学校に入った。士官学校では生徒は全員準戦士という階級になる。これは三等戦士の一つ下である。ファイは順調に訓練していた。少し気性が荒いが、成績はほかの生徒より群を抜いてよかった。

サーガとゲントルは刑務所に収監された。ここでは強制労働をさせられ、それをサボった者、脱獄しようとした者、能力を使ったものは何かしらのペナルティが加わる。しかし、それがどんなものなのかは受けたものしかわからない。ただ確かにいえることはそのペナルティを受けたものは全員廃人となっていて、それが受刑者の見せしめになっていることだ。サーガはその様を目に焼き付けた。

次回は12月9日21時に公開です。

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