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第二十七話 回想 後編

 七二四年五月七日、ジゴロウはヒロを救い、かくまった。その九年後の四月一日、ミルがジゴロウの部下になった。そしてノスという青年も同じ隊に入った。ノスとミルは互いに意気投合した。週末には二人で飲みに行くほどだった。ノスの能力は銃を生成する力だった。ミルは弾丸を生成する力だったので二人の相性はとてもよかった。だがその関係は長くは続かなかった。九月十七日、任務で敵と戦っているときにノスがミルをかばって撃たれ死んだ。ミルは生き延びたが深い絶望と後悔にさいなまれた。行きついた先は強くなることだった。どれだけ能力が強かろうが所詮は人間。急所を撃たれれば人間は死ぬ。ミルはジゴロウの下で銃の腕と体術を鍛え上げた。翌年六月一日、ミルは外務局の暗殺部隊へ異動になった。

 七三四年六月十二日、ジゴロウは同僚からある情報を聞いた。メイレスが職権乱用したとのことだ。ジゴロウは耳を疑った。しかし同時に無視もできなかった。調べてみると確かに不自然だった。いくら大戦士の息子を救ったとはいえ一番下からいきなりトップへ昇格はあまりにもおかしい、メイレスに聞いてみなくては。

 六月十五日二時三分、ジゴロウはメイレスにそのことを聞いた。

「メイレス、自分の権力を私欲に使っていないだろうな」

「カンダさん、なんのことですか。藪から棒に」

メイレスは当然嘘をついた。もちろんジゴロウはそれを見抜いた。ジゴロウは部屋を出た。扉がしまったメイレスは椅子に座り頭を抱えた。あのジゴロウにばれてしまった、このときメイレスの精神はついに壊れてしまった。メイレスは体の力が抜けた。そしてベルを押し、部下を呼んだ。

ジゴロウは悩んでいた。

(これではワースのときと同じだ。この前あった村の虐殺も一体なんの意味があったのか。そういえば同じころに中央管轄局の隊員が一人行方不明になっていたな。まさか、わしと同じく知ってしまったから‥‥)

 その日ジゴロウは家に帰った。このことを整理したかった。午後五時四一分、ジゴロウは家の扉を開けた。玄関にいたジゴロウは動くことができなかった。床に血を流した妻が倒れていたのだ。妻の死を認識すると同時に何人かの戦士たちがおそいかかってきた。ジゴロウはすぐさま反撃した。もちろん気絶程度だ。ジゴロウは公衆電話で同僚に電話をかけた。そしてメイレスがジゴロウ抹殺命令を出したことを知った。そこでジゴロウはメイレス討伐を誓った。

(メイレスをこれ以上生かしていてはまた惨劇がくりかえされる。それを阻止しなくては、それがわしにかされた任務だ。いや、これはただの綺麗ごとか‥‥)

 ジゴロウは同僚からメイレスの家を聞いた。そしてメイレスが一人になるタイミングを知った。

 同日午後六時七分、メイレスが帰宅したのを確認しジゴロウは襲撃した。このときライズはユーラの家で遊び、そのまま寝ていた。

 メイレスが家に入ろうとしたとき、ジゴロウがゆっくり歩いてきた。

「よぉ、メイレス」

「カンダさん‥‥いや、カンダ」

ジゴロウとメイレスは互いに刀を抜き戦闘に移った。

__薔薇 ばら

炎に包まれた刀がメイレス焼かんとしていた。メイレスは何回か太刀をよけ、攻撃に出た。

__暗澹 あんたん

ジゴロウのよりも黒い斬撃がジゴロウへ飛んできた。

__百合 ゆり

ジゴロウはそれで斬撃をさけ、走ってメイレスの間合いへ入った。

__風信子 ヒヤシンス

メイレスはかろうじてそれをよけた。だが、メイレスは横からくる攻撃をよけきれなかった。メイレスの腹部から出血した。メイレスはジゴロウと距離を取った。

__閻魔 えんま

ジゴロウがさっき入れた傷がたちまち回復した。メイレスは再度攻撃に出た。

__暗転 あんてん

メイレスの回転攻撃をジゴロウは刀で受け流した。

__長実雛芥子 ナガミヒナゲシ

メイレスの右肩、左肩、右わき腹、左わき腹を刺突した。メイレスはそのまま吹き飛ばされた。

__花衣・黒真珠 はなごろも・くろしんじゅ

ジゴロウはすかさず追い打ちをかけた。しかしメイレスはその場にいなかった。

__闇夜 やみよ

メイレスは黒いもやを使いジゴロウから離れていた。そこで傷を治した。完治したメイレスを見たジゴロウは静かに舌打ちした。


戦闘は丸一日続いた。それほどの激戦だった。

__向日葵 ひまわり

ジゴロウが放った黄色の球体をよけたメイレスは斬撃を放った。

__暗澹 あんたん

それをジゴロウはどうどうと真正面で待ち構えていた。

__松毬薊 マツカサアザミ

ジゴロウの目の前に現れた灰色の壁がメイレスの斬撃をそのまま跳ね返した。メイレスはそれをよけきれず重症を負った。メイレスは倒れた。そこへジゴロウがゆっくりと歩いてきた。このときジゴロウは勝ったと思っていた。その油断が相打ちのきっかけになった。

__晦冥 かいめい

メイレスを中心に半径五メートルの地面から無数の斬撃が直上へ切り上げた。ジゴロウはそれに気づき直撃はさけたが右足を斬られかなり出血した。死なないにせよここでこれ以上の戦闘は厳しかった。

午前六時七分、様子を見に来たメイレスの部下が互いに血を流すメイレスとジゴロウを目撃した。ジゴロウはメイレスを殺すことを諦め逃走した。

 一年後、ジゴロウは人がこない森の中に家を建てて過ごした。食料は基本的に森の中にいる鹿などの動物を飼って過ごしていたが時々どうしても加工食品などが食べたいときは変装して市場へ出かけた。ジゴロウは市場の新聞を見た。そこにはジゴロウが指名手配されたと大々的に報道された。罪状は戦士を何人も斬り殺した殺人罪だ。ジゴロウは家に戻った。ブラックコーヒーをつくって飲んだ。いつもなら苦味があるが今日のコーヒーは、苦味はおろか水を飲んでいるようだった。同年、ライズを救った医者は見るに堪えない姿で発見されたそうだ。しかし、未だ犯人は見つかっていない。その一年後、ミルは戦士官に昇進した。メイレスはあのとき以降一人で行動することはなかった。宿を襲撃するときまで。


 ミルはがれきの一片を眺めていた。ジゴロウは割れた窓を見た。

「そんなことが‥‥」

「はぁ、どうだ? 満足したか?」

ジゴロウはミルに問いかけた。ジゴロウは立ち上がった。それに続きミルも立ち上がった。

「えぇ。満足しました。ありがとうございました」

ミルは微笑した。ジゴロウはミルの顔をムッとした表情で見た。この話をした人間はミルで三人目だ。ジゴロウはヒロのほかに一連の出来事をメイレスの情報を流した同僚にも伝えていた。もちろん秘密裏に。伝え終わって別れた後、同僚は事故死した。おそらくメイレスの差し金だろう。

 同僚が死ぬ数時間前、メイレスはある死刑囚に会っていた。その死刑囚は自分を死刑に処したことにし解放しろと言った。メイレスはそれを飲んだ。そして、その囚人は情報を入手し伝えた。メイレスはエカムに命じ、車を動かした。エカムは同僚めがけアクセルを踏んだ。メイレスは解放する前にその囚人を殺す気でいたが、牢を出た一瞬の隙を突かれ逃げられてしまった。そして、その囚人はあるカップルを襲いその彼氏に殺された‥‥。

「そうだ、一つお願いがあります」

ミルは思い出したかのように言った。

「なんだ」

「もし革命が成功したら、俺をもう一度軍に誘ってください」

「別に構わんが、なぜじゃ?」

ミルは少し天井を見た後再び微笑して言った。

「今退職しても年金はそんなに出ませんからね」

すこし間を開けて、ミルは床にスナイパーライフルを置き、構えのポーズをとった。それに応じジゴロウも構えた。ミルはジゴロウをみながら軽い口調で言った。

「俺は暗殺部隊です。あなたを倒さなくてはいけません」

「‥わかった。すぐに気絶させてやる」

「そう簡単にはやられませんよ」

ミルは右手を握り締めジゴロウへ向かった。ジゴロウはすらりとよけ、ミルの胴体へ一発殴った。ミルはよろけたがすぐに立ち直った。そしてまた殴りにでた。ジゴロウはまた同じ動きをとろうとしたがそこへミルの右足が疾風のごとく迫りかかってきた。ジゴロウもまた胴体に蹴りを入れられた。

「老人をいたわらんかい」

「全然老人のような動きしていませんよ」

二人はこの戦いをおのおの楽しんでいた。今度はジゴロウから仕掛けた。ジゴロウのジャブをミルは腕を合わせて防御する。ジゴロウがひいたとき、ミルは右から回し蹴りをした。右腕をまげて防いだジゴロウはミルへタックルしミルを転ばせ、背後をとって首をしめた。ミルは脱出しようともがいたがそれは不可能なことであった。やがてミルは気絶した。

ジゴロウはミルを安全なところに寝かせとなりにライフルを置いた後、廊下を歩いて行った。

次回は1月20日21時に公開です。

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