第二十五話 下火
午前十時二十八分二十五秒、ミルは周囲を警戒しながら歩いていた。すると、目の前に死体があった。
「ウェズ上級戦士官‥‥」
ミルはウェズの死を確認したのち、こぶしに力を込めながらその場を去った。
午前十時三十四分十九秒、イアンは廊下を走っていた。すると男が刀をもって立っていた。
(メイレス‥‥)
イアンは刀を抜いた。
「初めまして。メイレス大戦士」
「君は、イアン一等戦士か」
するとメイレスはイアンに斬りかかった。イアンは間一髪でよけたが右の頬から血が滴ってきた。床にはイアンの赤毛の髪が落ちていた。
(斬られた感覚がなかった、こいつの刀はとても鋭いのか)
イアンは態勢を整えメイレスに向かった。
__炎羅 えんら
イアンの刀が炎で燃え上がった。それを見たメイレスは少しだけ頬を緩めた。
__ファイアクロス
__闇夜 やみよ
イアンがメイレスを切ろうとしたとき突然メイレスの体が黒いもやになりイアンはそこへ刀を振り下ろした。イアンはメイレスが消えたことを悟り周囲を見渡しメイレスの行方をさがした。
「タングを殺したのはお前か」
メイレスはイアンの後ろにいた。イアンは振り向きメイレスを見た。
「そうだ!」
イアンは堂々とメイレスに対し言った。それを聞いたメイレスは刀を前に向けた。
__黒炎 こくえん
メイレスの刀が黒く燃え上がった。二人の視線がばちばちとぶつかり合う。イアンはメイレスから放たれる奇妙な波動に冷や汗をかいた。まるで暗い闇の中でもがくような感覚だった。
__ブースト
イアンは一瞬でメイレスに近づき刺突しようとした。
__マグマ
イアンが刀を突きだした瞬間
__暗転 あんてん
イアンの刀が回転するメイレスによる刀ではじかれた。仕方なくイアンはひいた。メイレスはそのまま回転したまま斬りかかった。イアンはベーゴマのように回りながらの攻撃をすべて防いだ。やがて回転をとめたメイレスはまたイアンと目があった。
__陽炎 かげろう
イアンは刀で円を描きそこに炎の渦が舞い上がった。メイレスは炎の渦を見上げた。しかしその目は死んでいる。
メイレスは弓を構えるように大きく右腕をしぼり、刀を炎の渦へ突き刺した。
__黒点 こくてん
無数の刺突技により炎の渦は何千個の火の粉になった。イアンは圧倒された。
(こんなことができるなんて‥‥だが!)
__火花 ひばな
何千個の火の粉が激しくもえあがった。さすがにメイレスも後ろへひいた。その時、イアンはそこへ突っ込んだ。
(次で決めてやる!)
__炎陽火躍 えんようかやく
イアンは高速でメイレスに近づきメイレスの右肩へ刀を当てた。メイレスは初めて目を見開いた。イアンは刀を振り下ろそうとした。だが力が入らない。するとイアンの右肩から血が噴き出た。左手で持っている刀がイアンの右肩へ振り下ろされていたのだ。
__闇夜魔鏡 えんやまきょう
肩に刺さっている刀がさらに深くまで切り込まれた。イアンはあまりの痛みに低く鈍い叫び声をあげた。やがてメイレスの刀が抜かれた。イアンはそのまま倒れた。右肩からの出血で床がたちまち赤色に染まった。イアンは呼吸するのでやっとだった。
(出血多量でもうじき死ぬ。放っておいても問題ないか)
メイレスは刀を鞘にいれ、イアンの刀を拾い去って行った。だんだんその音が小さく遠のいていく。イアンは音が聞こえなくなった。
イアンは考えた。復讐に全てを捧げたのは本当に正しいことだったのだろうかと。イアンに後悔はなかった。ただ、心の平穏はついに叶わなかった。
七三九年十月十一日、午前十時四十分三十九秒
イアンは静かに息をひきとった。
次回は1月18日21時、二話同時公開です!




