第二十話 夜明け
ファイはユーラのほうへ一直線に走って行き高く飛び上がった。
__腕力 わんりょく
__衝撃波 しょうげきは
波動とこぶしが激しくぶつかり、互いの威力を相殺した。舌打ちしたファイはそのまま地面へ着地した。ユーラとファイは互いににらみ合いながら次の動きを読みあっている。
(こいつなら、ここで磁力をだして距離をとるはずだ。ならば)
__磁力 じりょく
__寒波 かんぱ
両者の間に距離が生まれたとき、ファイは凍てつくような寒さに襲われた。戦闘で上がった体温が一気に下がっていく。
(これはまずい。何とかしなければ)
__電力 でんりょく
地面を走る稲妻がユーラの体に体当たりした。体がしびれる。ユーラは膝立ちになった。ファイはこのチャンスを最大限生かすべく攻撃を加えた。
__腕力 わんりょく
ファイの狂気を帯びている拳を見たユーラは思い出した。自分の父親にされていたことを‥‥‥
ユーラは体をひねって横へよけ、ファイの攻撃をかわした。ファイのこぶしが地面に当たり、轟音が鳴り響く。地面には亀裂が入った。ファイがユーラのほうを向くと、ユーラはしゃがみながら手をファイのほうへ向けていた。ユーラの目にさっきよりも強い殺気が醸し出されている。
「死ね! クソガキ!!」
__衝撃波 しょうげきは
(やばい、よけろ!)
ファイはすぐに回避行動を開始したが、時すでに遅く衝撃波をもろにくらった。ファイは吹き飛ばされた。攻撃が当たったのを確認したユーラは一息つくと小ばかにするように一笑した。ユーラはゆっくりと立ち上がりファイが吹き飛ばされたところへ歩いていった。
(やっと死んだか)
一方、ファイはがれきの下にいた。さっきの攻撃で背中を強打し、さらに脇腹に鉄パイプが刺さっている。抜こうとすると出血多量で死ぬことぐらいは医者でなくともわかる。ファイは血の味を感じながらこの状況をどうやって切り抜けるか考えていた。アドレナリンが大量に出ているのか思ったほど痛みを感じていない。それほど体が興奮状態にあるということだろう。それは長くは続かない。体の痛みが鈍感だということはそれだけ限界を感じずに無理ができてしまうということだ。限界を迎えるとこの場合死ぬということになる。ファイは頭をフルで回転させた。そして、一つの考えが浮かんだ。ユーラはがれきの目の前に来た。
「まだ生きているのか!」
ユーラはがれきに向かって力強く叫んだ。返答はおろかがれきの音すらなかった。
ユーラがこの場を後にしようとするとがれきの中から突如として音が聞こえた。それは、がれきが吹き飛んでくる音だった。
__磁力 じりょく
ファイは自分自身とがれきをしりぞけさせた。ファイが奥へ吹き飛ぶ代わりに無数のがれきがユーラめがけ飛んで行った。ユーラは衝撃波などである程度防いだが数回くらった。その一個がユーラの右太ももに当たり、一部が削れ血が噴き出た。ユーラは立っていられなくなった。そこへファイが歩いてきた。血を出しすぎたのかふらふらしている。
「へへっ、ざまぁみろ」
「まだ、私は生きているわ。それが、どういう意味か分かるわね」
ユーラの右目にまた前髪がかかる。左目はまるで動物が狩りをするときのようにしっかりファイをとらえている。ファイめがけ手を構えた。
__超音波 ちょうおんぱ
ファイは聴覚を一時的に失った。その一瞬の隙にユーラはすべてを懸けた。
__波間現水 はかんげんすい
ユーラの後ろから大きな衝撃波がファイめがけ飛んでくる。ファイはそれを見るとすぐに相殺しようと動いた。
(ここで決着をつけてやるぜ!)
__脚力 きゃくりょく
ファイは足が地面にめり込むほどつよく踏み込んだ。そして
__腕力 わんりょく
ファイは飛んでくる大波へ向けてこぶしを突き出した。二つの力が激しくぶつかり合った。互いにすべてを懸けた大技である。だが、ファイはほんの少し利口だった。大波を殴って軌道をずらしファイの斜め左へ受け流した。そしてファイは踏み込んだ足から稲妻を走らせた。
__電力 でんりょく
ユーラの体を稲妻が蝕んだ。ついに、ユーラは倒れた。
(勝った)
ファイはふらふらになりながらもユーラが倒れているのを見た。
(ほかの奴らを助けるぞ、動けおれの体!)
とぼとぼと歩いているファイの後ろからじょじょに二度目の大波が来ていた。さっきくらった超音波で耳が聞こえず大波が後ろから迫っていることに気付かなかった。ファイは後ろからの大波をくらった。ファイは吹き飛ばされ、地面にたたきつけられ、頭を強く打った。この時まだユーラは生きていた。だがもうすでに虫の息だった。
「相打ち‥だね‥‥ファイ」
ユーラはそのまま死亡した。
ファイは後頭部から大量の血を流した。ファイはなんとかして体を動かそうとしたがついにできなかった。
午前六時四十三分六秒、命の灯が消えた。
次回は1月8日21時に公開です。




