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第十九話 罪

__閃光 せんこう

ヒロは一気に間合いを詰め、刀を振るった。だがナルゼブには硬化がなかった。ナルゼブはヒロの腹に一発けりを入れた。ヒロはさっき間合いを詰めた分もとに吹き飛ばされた。ナルゼブは体の硬化を解き、今度は石を拾いフブキに投げた。フブキはとっさに体をひねってよけた。フブキの横を通りすぎて土に着弾した石を見ると周りの地面がへこんでいた。ヒロはすでにナルゼブに斬りかかっていた。ナルゼブがそれを腕で防いでいた。だが、ナルゼブの腕から血がしたたり落ちていて刃が腕に深く刺さっている。

(なんでナルゼブは自分の硬化をわざわざ解いたの?)

そのときフブキはひらめいた。ナルゼブの能力は一つのものしか硬化することができないのだ。でなければわざわざ硬化を解いてまで石を投げる必要がない。弱点を理解したフブキは早速攻略へ向けて動き出した。一つしか硬化できないのならば、一方が攻撃を受け、もう一方が攻撃する。これを同時に行えばいい。フブキは一か八かの賭けに出た。ナルゼブは再度自分の体を硬化した。ヒロは刀を腕からに抜き、とっさに離れた。すると

__ウィンドスノア

ナルゼブの体に雪がまとわりついた。

「これであなたは攻撃できなくなった。どう? なんとかいったら?」

フブキはあからさまに挑発した。

「これしきのこと、恐れるに足らんぞ小娘」

ナルゼブは体の硬化を解いたと同時にフブキへ向けて足元に遭ったがれきを飛ばした。

フブキはよけることもせずただがれきが自分に降りかかっているのを待っていた。

(何をしている‥よけろ、がれきが来るぞ!)

__光柱 こうちゅう

ヒロはフブキを救おうと動き出したその時

「ヒロ!」

フブキがナルゼブを指さした。二人の目が合った。

(そういうことかっ!)

__閃光 せんこう

ヒロはナルゼブの間合いに入った。フブキに指をさされたことに気付き、ナルゼブはヒロが攻撃しようとしているのに気付いた。

 ヒロはナルゼブの背中を一筋に斬りつけた。血しぶきが上がり、地面に崩れ落ちた。ナルゼブはゆっくりと這いつくばりながら逃亡した。ヒロはそのまま走り出し

__光柱 こうちゅう

ヒロはフブキの前に立ち、何本もある光の柱でがれきをすべて受け止め防ぎきった

フブキが一息つくとヒロが突如彼女の肩つかんだ。

「何を考えている! おれが間にあわなかったらどうするつもりだった!」

「私、防御の技はあるのでそれで対応を‥‥」

「間にあってないじゃないか!」

「それは‥ヒロさんが来るのが早かったの‥で‥」

(ほんとはその通りだけど‥‥‥)

フブキは痛いところ突かれて口をもごもごさせた。ヒロはフブキを抱きしめた。フブキは頬がじんと温かくなるのを感じた。ヒロが抱きしめるのをやめ、フブキの目を見て言った。

「二度とこんな真似をするなよ。無事でよかった」

フブキはヒロの頬が若干赤くなっていて目元が少し涙ぐんでいるのを見てくすっと笑った。

「はい」


 イアンとサーガは連続で技をだし、ハームに攻撃の隙を与えまいとしていた。

__ファイアクロス

ハームへ燃え盛る十字架が飛んでいった。ハームはそれを軽々とよけた。するとよけた先へサーガが刀を突きだそうとしていた。

__キラーファング

それもハームはよけ、後ろに下がった。

(なんだ、こいつは。さっきからよけてばかりで何も攻撃してこない)

イアンはそう疑問に思っていた。サーガとしても、ハームがどうやってペナルティを課すのか知らない。

「はー。そろそろ攻撃をよけ続けるのも飽きてきたな」

「じゃあ攻撃してこいよ」

イアンはハームへ向けて走り出した。

「では、そうさせていただきます」

ハームはイアンのほうへ手をかざした。

__ボディフォール

イアンは突然激しい痛みに襲われ立っていられなくなった。体中に激痛が走り、動こうとするとさらに痛みが増す。突然倒れたイアンを見てサーガは混乱した。

「おい、どうした!」

イアンは声を出そうとしたが声を出そうとするとのどがひどく痛むため声が出ない。サーガはハームに斬りかかった。

「やれやれ、順番を待ってくださいよ」

サーガは激痛を受け地面に突っ伏した。ハームは苦しむ顔を見て気付いた。

「あれぇもしかしてお前、脱獄した囚人だろ。うちから逃げられたのはお前が初めてだよ。死ね」

サーガはそろそろ意識の限界に来ていた。だが、ここで意識を失うと確実に死んでしまうことぐらいはサーガも承知していた。

(耐えろ、耐えろ、たえろ!)

__火花 ひばな

イアンの刀から散った火花がやがて勢いよく燃えた。ハームは周りの火花が突然燃え盛ったことで息ができなくなった。ハームはとっさに二人から距離を取った。サーガの痛みは消えた。サーガが立ち上がり、ハームをギロリとにらんだ。

「こうやってゲントルを殺したのか、てめぇ」

「どうかな? もう覚えてないや」

サーガはわなわなと震えている。ついに理性が限界に達し、攻撃しようとしたその時

__ボディフォール

またもやサーガは激しい痛みに襲われた。しかし、今度は時間がかかりながらも着実に一歩一歩ハームのほうへ歩いている。

(絶対に殺す。ぜったいに!)

__火炎 かえん

イアンも刀を握りしめハームへ向けて走り出した。

「強いね、二人とも。そうだな、体の外側がだめなら内側から壊すか」

「そういえば、君たちの仲間の、なんだっけ? あぁ、ヤノフ。彼もこの技でこの場所を白状してくれたよ」

(ヤノフだと! あいつはもう既に死んでいるのか!)

イアンはそう考えた。

(‥こうなったら、もう一つの確実に殺すための技を使うしかないか‥‥)

 サーガがそう考えていたとき、ハームはイアンとサーガの二人に手をかざした。

__マインドフォール

サーガは目を開けると目の前にはゲントルがいた。

「ゲントル‥‥俺は、死んだのか」

サーガはゲントルに聞いた。だが、ゲントルは何も言わない。

「おい、ゲントル聞いているのか? おい」

ゲントルは立ったままなぜだといった。サーガはきょとんとしていった。

「なぜだってなにが?」

すると、ゲントルは突然サーガの首を絞め始めた。サーガは訳も分からないまま地面に倒れた。次第に首を絞める力が強くなっていく。

(これは、あいつの仕業か。俺に幻覚を見せてやがる。ただ、今はこの状況を何とかしなくては)

サーガはすぐ横にあった刀を取って、ゲントルを軽く刺した。ゲントルは手を放し、間合いを取った。

「ここから出たいのならば、俺を殺してみろ」

ゲントルはそういった。サーガは手が震えた。

(親友を殺せっていうのか。いや、割り切れ。あいつは虚構の産物だ!)

サーガは斬ろうとしたが、足が動かない。偽物だと分かっていてもなかなか踏み出せない。サーガの脳裏にできないという文字が横切った。すると、ゲントルが縄で攻撃してきた。サーガはそれをよけた。だが何度か反撃できる隙があってもどうしても攻撃で着なかった。だめだ。サーガは思った。その時、あることを思い出した。それは村が焼かれ、二人で国と戦おうと決めた日の会話だった。

「なぁ、サーガ」

「なんだ?」

「もしもこの先、俺が死んでもそれは俺の責任だからお前は気にするな」

「なんだ、気持ち悪い」

「だから、俺が死んでも後悔しないでくれ。先へ進んでくれ」

「‥‥俺が死んでもそうしろよ」

「あぁ。わかった」

(ゲントル、俺は先へ進むぞ!)

サーガは刀を握った。そして、ゲントルのほうへ突進した。ゲントルからの攻撃をすべて受け流しゲントルへ向け刀を振るった。

「ゲントル‥‥お前は死んだ。だから、俺はもう一度、確実にお前を殺す‥‥許してくれ」

__デスエアリー

この技はキラーファングの百倍の毒を出し、速攻で相手に効く技である。それをくらったゲントルは何もすることができないまま倒れ、しばらくして呼吸が止まった。サーガは目に浮かんでいる水を裾で吹いた。


(ここは、どこだ)

イアンは見知らぬ土地を歩いていた。イアンがしばらく歩くと、自分がどこにいるのかを思い出した。

(いや‥知らないわけがない‥ここは‥‥)

すると、後ろの方から砲撃の音が聞こえた。イアンが振り向くと、そこにはイアンを含めた何人かの国軍の戦士がいた。そしてそれに続いて大戦士、セド・タングが歩いてきた。大戦士たちの中で一番年をとっていて、ひげが濃く、少し太っているが腕力は国軍の中で一番強い。おそらくファイの能力をもってしてもかなわないだろう。

「よし、行け!」

タングは戦士達に言った。

「やめろ! 行くな! 罠だ!」

イアンは叫んだ。だが目の前の戦士たちは次々と建物の中に入っていた。全員が入って五秒ほどたった時、その建物は爆発した。タングは作戦失敗と叫び、引き返していった。その直後、がれきから二人が脱出してきた。その一人がイアンである。イアンは目に映る自分の姿を凝視した。脱出してきたイアンは頭から血を流し気絶していた。それを押さえているのはもう一人の戦士だ。

「ジャック」

イアンがジャックとつぶやいたその戦士は負傷したイアンを連れて森へ逃げた。ジャックはイアンの士官学校からの親友で、いつも一緒に任務へ出ていた。まさか、この任務でジャックが死ぬことはこの時みじんも考えていなかった。突然銃声が響き渡った。イアンは銃弾が飛び交う状況を見て思い出した。

(そうだ、僕はテロリスト排除のためにここへ来た。たしか、一年前。だけど、それ自体が罠だった)

ジャックが負傷したイアンを守りながらライフルで姿が見えない敵と戦っていた。その時、負傷していたイアンが意識を取り戻し、刀で応戦し始めた。

(もうすぐだ。もうすぐ‥‥)

刀で応戦していたイアンは後ろからくる銃弾に気付いていなかった。だが、ジャックは気付いた。ジャックの能力は視力。目を凝らすことで人間の数十倍の視力を得ることができるのだ。『危ない!』 ジャックはイアンのうしろにつき、ライフルで弾を防いだ。

(油断するな! 弾が横からくる!)

ジャックはイアンの方を向いた。イアンは感謝の言葉を述べた。その直後、真横から飛んできた銃弾がジャックの頭を貫通した。ジャックの右側の頭から血が噴き出た。イアンはそれを認識した瞬間しゃがんだ。ジャックのほうを見ると目を開けたまま泥の混じった水たまりへ倒れていた。水たまりが完全に赤くなるまでイアンはジャックを見たまま固まっていた。イアンは叫んだ。そして、走り出した。

 翌朝、国軍の基地へとぼとぼ歩いてきた。イアンはあそこにいたテロリスト十一人をたった一人で殺したのだ。その光景を見ていたイアンはそのあとのことも思い出していた。この時、殺したテロリストは実は人質で、夫や妻、子供を殺すと脅され無理やり戦闘させられていたのだ。つまり、この作戦自体がなんの意味もなかったのだ。やがて、タングがテロリストたちを一掃した。その光景をイアンは見ていない。イアンは罪悪感で押しつぶれそうになっていた。それに追い打ちをかけるように国軍が民間人を殺したという事実は報道されなかった。そのときからイアンは国軍がほんとうに正しいのかと疑問を抱いていた。そんな中、ヒロが国を裏切った。イアンはやはり国はおかしいと確信し、ヒロについていくことを選んだのだ。

 だが今のイアンはそんな感情ではいられなかった。一連の出来事をすべて思い出したイアンはその場に崩れ落ちた。もし、あの時「ありがとう」なんて言わなければ、ジャックは弾を察知してよけられていたかもしれない。いや、もし僕が、弾が来るのをわかっていたら‥‥。考えても無駄だと分かっていてもどうしてもやめられなかった。なぜ、自分だけが生き残ってしまったのだろう。なぜ自分だけがこうして元気にいられるのだろう。なぜみんなはここにいないのだろう。後悔、ただそれだけが残った。それからの自分はこのことに対する償いをしなければという思いで今まで任務に赴いていた。

 燃え盛る残骸と友の死体があるだけの音のない空間でイアンの慟哭が響き渡った。その時、自身の肩が揺らされた。イアンは顔を上げた。誰かの声が聞こえる。その声は、最初は小さかったがやがてはっきり聞こえた。サーガの声だ。サーガは一足早く現実に戻っていた。そして、イアンがぶつぶつ弱音を吐いているのを見ていた。

「おい、起きろ! このままじゃ二人共死ぬぞ!」

(死ぬ、それはいい。さっさと殺してくれ。それが贖罪になるのなら)

「おい! お前が言っただろ! 諦めていいのかって、お前もあきらめるな!」

「なにがあったのか知らねぇけど、俺たちは先に進まねぇといけねぇんだ! いつまでも立ち止まっていたらだめだ!」

(‥‥そうだ、死ぬなんてそんな浅はかなことで僕の罪が許されるわけではない。ちゃんと先に進めなければ。この国を変える、僕みたいな罪人を出さないために、自分の罪を背負うために)

その時、イアンは目を覚ました。サーガの顔を確認し、刀を握った。

「すごいですね、二人共。僕の技を破るなんて」

(ひと突きだ。ひと突きで終わらせる!)

イアンは刀の持ち手をつぶしてしまいそうなほど力がこめられていた。だが同時に冷静でもあった。イアンはゆっくり深呼吸をして目を開けた。その眼光は目の前にいる男のみに焦点を合わせている。このときの感情は憎悪に等しかった。

「すごい顔ですね、なんだかかわいそうになってきました。次で殺してあげます」

ハームが手をかざした瞬間

__ブースト

先刻までサーガの隣にいたイアンはいつの間にかハームの目の前にいた。イアンが移動したと思われる軌跡に火が散っていた。火花が燃え盛ったあと、儚げに散っていく。これを見たサーガは考えるよりも先に目で追っていた。だが、ハームは眺めている余裕がなかった。

「いつの‥‥」

ハームが言い終える前に、イアンはハームの体を貫いた。イアンは刀を抜き、地面に突き刺して倒れる。ハームは絶命した。そして、どこからか嗚咽が聞こえた。夜が明けるにはまだ時間がかかるようだ。

次回は1月6日21時に公開です。

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