表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/36

第十八話 夜襲

 午前五時頃、宿の前に一台の車がエンジンを止めた。二十代後半で白髪の男が車から降りた。もう一人、大柄な男も車から降りた。

「行くぞ、ナルゼブ」

「はい、ハーム殿」

二人は宿のなかへ入った。ナルゼブは突如持っていた拳銃をロビーに乱射した。フブキは発砲音で目を覚ました。床に貫通した弾痕がありぞっとする。そしてベッドから飛び上がるとすぐさまほかのみんなを探すために部屋を出た。ほかの五人も目を覚ましていた。六人は集まった。

「敵だ! 下にいるぞ」

ファイは寝ぼけながら言った。

「ここは慎重にうまくいけば奇襲をかけられるかもしれない」

イアンはそう分析した。ジゴロウとサーガも同意見だった。一階ではハームがナルゼブに冷笑して言った。

「ナルゼブ、ここを壊せ」

「分かりました。ハーム殿」

ナルゼブは近くにあった机を手に持った。そしてそれを天井のほうへ投げた。すると、天井が崩れ落ちてきた。

「なんだ、鉄が当たったような音がしたぞ!」

ヒロがそういったとたん、地面が崩れ落ちた。六人はそれぞれ受け身の態勢をとった。イアンとサーガは目を覚ました。すると、目の前に白髪の男がいた。

「こんばんは、反徒ども。僕は、ハーム・ヘル・ペイン。戦士官です」

ハームは自己紹介をして二人に礼をした。イアンとサーガは刀を抜いた。

__炎羅 えんら

イアンの刀が炎に包まれた。サーガは余裕そうな顔を見て言った。

「こいつが、こいつがゲントルを殺した刑務官だ」

「何!」

「こいつがペナルティを課す刑務官だということは刑務所内の人間ならだれでも知っている。気をつけろ」

「分かった」

二人は刀を構えた。ハームは不敵にほほ笑んだ。

 ヒロとフブキは建物の外にいた。二人が体を起こすと、ジゴロウもいた。だが、ジゴロウは奴がいると言って、どこかへはしっていった。二人が立ち上がった時、大柄な男が近づいてきた。

「貴様らが裏切り者か。万死に値する」

ナルゼブはそういうと、地面に突き刺さった錆びた鉄パイプを持った。ヒロは刀を抜き、フブキはナルゼブをにらみつけた。ナルゼブは錆びた鉄パイプを持っている右手に力を超えた。すると、錆びていた鉄パイプから錆が落ちていった。まるで新品同様である。フブキはナルゼブの能力が何か考えた。新品にする能力なのか、硬化させる能力なのか、はたまた手に触れたものを鉄にする能力なのか。そうこう考えているうちにナルゼブはヒロのほうへ殴りにかかった。

__ストロボ

ヒロは光の斬撃をナルゼブに飛ばした。ナルゼブは鉄パイプを正面にして防ごうとしたが鉄パイプが真っ二つになった。今からでは回避できない、勝った。だが、次の瞬間ナルゼブの体は鋼鉄に変化した。それは光の斬撃を通さなかった。フブキは確信した。ナルゼブの能力は硬化。物質を硬くできる力だ。

(何か弱点があるはず、そのためにもっと観察しないと)

ミコトはがれきの中を手探りで探していた。自分の娘を探すためである。ミコトが涙ながらに探していると、後ろからおばあちゃんと呼ぶ声がした。ミコトが振り返るとユリが泣きながら立っていた。ミコトがユリのもとへ駆け寄ったとき、衝撃波のような空気の揺れをミコトは感じた。何かが来る、ミコトはユリを抱えて守ろうとした。

__磁力 じりょく

向かってくる衝撃波は真上を飛んで来たファイと互いに反対に吹き飛んだ。

「おばあちゃん!」

「もう大丈夫だからね」

ミコトはユリを抱きしめた。ファイは飛びあがって、二人のもとへ来た。

「おい、無事か?」

ファイは二人のほうを見て言った。

「大丈夫!」

ユリがそういうとファイはすこし表情をやわらげた。

「ここは危ない、逃げろ」

ファイは言った。ミコトはうなずいてユリを連れてファイと反対のほうへ走って行った。

「さて、どこのどいつが攻撃してきたんだぁ?」

ファイは衝撃波の飛んできたほうへ歩を進めた。すると、また横から衝撃波が飛んできた。

__腕力 わんりょく

ファイは右手を衝撃波へ向けてはなった。衝撃波はファイのこぶしと相殺した。そして、奥のほうにいる妖艶な白髪でロングヘアの女性がいることに気付いた。女性は左手首には水色のリングをつけていて、高貴な雰囲気を漂わせていた。ユーラはゆっくり拍手し始めた。

「私の波を止めるとは。あなた相当強いみたいね」

「どうも、あんたは弱そうだな」

ふっと笑ったユーラは拍手をやめ、ファイのほうを見た。

__超音波 ちょうおんぱ

ファイはユーラと目があった瞬間耳が聞こえなくなった。

(なんだ、何をくらった)

ユーラはすかさずもう一撃いれようとしていた。

__熱波 ねっぱ

ファイは三十五度ほどの熱い空気を全身で浴びた。ファイはなにか攻撃しなくてはと本能的に察知した。ファイは足を思いっきり地面にたたきつけた。

__電力 でんりょく

地面を走る稲妻がユーラの体に当たった。ユーラはよろめいた。ファイはようやく耳が聞こえるようになってきた。

「おい女、俺はファイだ。そして、てめぇの墓場はそこだ。よく見ておけよ!」

ユーラはよろめいた足を地面にしっかりつけた。

「面白い子ねぇ、私を知らないとは。私は大戦士、アリス・ユーラ。さっきの言葉、そっくりそのままお返しするわ!」

ユーラはそう言い放つと左手首についているリングをファイへ向けた。

__衝撃波 しょうげきは

(またそれか)

「同じ手はくわねぇよ!」

__垂直抗力 すいちょくこうりょく

ファイは上を飛び上がった。衝撃波はそのまま直進していった。ファイはユーラめがけてこぶしを引き締めた。

__腕力 わんりょく

「甘い!」

ユーラは手をファイにかざした。

__波路 なみじ

ファイを囲むように衝撃波が飛んできた。まずいファイは焦燥感に駆られていた。

__磁力 じりょく

ファイは真上の衝撃は技を使い、相殺され地面に落ちて行った。だが、下からきている衝撃波をくらってしまった。ファイは受け身をとれずに地面に落下した。

「さて、とどめを」

ユーラは手をファイにかざした。

__衝撃波 しょうげきは

衝撃波がファイのほうへ飛んでいく。その時

__圧力 あつりょく

ファイはユーラと衝撃波へ向けて放った。

ユーラはたちまち立っていられることが困難になった。上からものすごい力が加わっているような感覚だった。ユーラは地面に膝をついた。衝撃波は圧力に押しつぶされて消えてしまった。ファイは鼻血を拭きとると笑顔で立ち上がった。それにつられるようにユーラもにやりと笑った。

「まだまだ俺は死なないぜ」

「あっそ」

__波路 なみじ

ファイのほうへまた衝撃波が飛んでくる。ファイがそれに気を取られた隙にユーラは体をひねらせ、圧力をかけているところから脱出した。ファイがすべての衝撃波を相殺したとき、ユーラはファイを睨みつけたまま立っていた。


 ジゴロウは森に入った。神妙な顔つきで刀に手を置きながらしばらく歩いた。

(やはり、奴がいる)

ジゴロウの本能がそう告げていた。昔、一日中斬りあい、ついに仕留め損なった大戦士を。やがて開けた場所に出た。そこには、黒いコートを身にまとった黒髪の男がいた。腰に刀を据えて森のほうを見ている。そこには鹿がいた。ジゴロウがその鹿を見た。鹿はつぶらな瞳でジゴロウを見た。次の瞬間、その鹿の首が胴体から離れて地面へ落ちた。ジゴロウは刀を抜いてそこへ姿を現した。

「わざわざ親玉が出張か? アーク・フォン・メイレス」

この国で革命を起こした張本人である大戦士、アーク・フォン・メイレスはジゴロウの方を向き、刀を抜いた。

__黒炎 こくえん

メイレスの刀が黒い炎に包まれていく。彼の能力は闇だ。

「今度こそお前を殺す。カンダ」

「やれるものならやってみろ」

__風信子 ヒヤシンス

ジゴロウはメイレスに刀を振り上げた。メイレスはそれを防いだ。だが、その後二歩退くと、メイレスの体に横一直線に浅い傷がついていて、血が滴っていた。メイレスはそこへ左手で押さえた。

__閻魔 えんま

押さえていた傷跡がたちまち治っていった。確かに傷の治りがとてつもなく速いが、ユリと比べると少し遅い。さらに万色花蕾などの大技はユリなら治るだろうがメイレスは完全には治すことはできない。さっきの傷が完治するとメイレスは再び攻撃に出た。

__暗転 あんてん

メイレスは体ごと回転しながらジゴロウに斬りかかった。ジゴロウは受け流しつつ距離を取った。

__向日葵 ひまわり

ジゴロウの刀の先にある黄色い球体をメイレスめがけ放った。

__闇夜 やみよ

メイレスがいる場所に黒い煙がかかり、球体はそこを貫通していった。やがて、黒い煙はなくなり、メイレスが現れた。

__漆闇 しつえん

漆黒の闇がジゴロウとメイレスを包んだ。何も見えない。ジゴロウはいつ攻撃が来るかわからない緊張感に襲われた。突如としてジゴロウの後ろに気配を感じた。

__百合 ゆり

闇とは対照的に白色のドームがジゴロウを包んだ。メイレスの振り下ろした刀はそのドームに入った途端、いつの間にか振り下ろし切っていた。

__桜 さくら

ジゴロウは自分を中心に円をかくように斬撃を繰り出したが、メイレスはすでに闇に姿を隠していた。

「そろそろ本気といこうか、カンダ」

「そうか。ならばそれ相応の対応をしよう。メイレス」

ジゴロウは三六〇度ゆっくり回りながら急襲に備えていた。

__黒点 こくてん

ジゴロウへ無数の刃が一斉に襲い掛かった。ジゴロウは刃が飛んでくる方へ体を向け、刀を目の前にかざした。

__松毬薊 マツカサアザミ

ジゴロウの目の前に灰色の壁が現れた。そこへ無数の刃が突き刺さった。すると、その刃は反対のほうを向き、飛んで行った。灰色の壁は、刃が飛んでいくときに消えた。メイレスは逆に無数の刃に襲われた。メイレスは刃をすべて斬り落とした。だがその音でジゴロウに居場所がばれてしまった。

「そこか」

ジゴロウは刀の先をメイレスがいるのであろう場所へ向けた。

__長実雛芥子 ナガミヒナゲシ

ジゴロウは目にもとまらぬ速さで四度そこを突いた。すると、黒い空間が次第にもとへ戻っていき、メイレスが体の四か所を刺突された状態で現れた。刺突された箇所から出血している。

__閻魔 えんま

メイレスは刺突された場所を瞬く間に修復した。ジゴロウは再び刀を構えた。

__松薔薇 シダーローズ

メイレスへ円を描いた斬撃が飛んでいく。メイレスはそれを一刀両断し防いだ。後ろの木、二本が半月型にえぐれていた。

__花衣・黒真珠 はなごろも・くろしんじゅ

すかさずジゴロウはメイレスに黒い斬撃を放った。メイレスがそれをよけたとき、すでにジゴロウはメイレスの間合いに入っていた。

__薔薇 ばら

まさに炎がメイレスの服に当たりかけたときメイレスの実体が消えた。

__闇夜 やみよ

メイレスはジゴロウの背後を取り攻撃しようとした。ジゴロウはすぐさま倒れながら後ろを向きメイレスを斬った。

__紫陽花 あじさい

メイレスは斬られたとき、斬られた箇所が溶けていくような奇妙な感覚に襲われた。瞬時に体のほうを見るがもちろん溶けてなどいない。

(この技はユーラに使ったものか‥‥)

その刹那はメイレスにとって最大の誤算となった。

__花衣・黒真珠 はなごろも・くろしんじゅ

メイレスが次にジゴロウのほうを見たとき、メイレスは黒い斬撃をくらい、体中が切り傷まみれになった。メイレスはすぐさまジゴロウと距離を取った。メイレスは舌打ちした。

(閻魔で治療できる範囲を超えている)

メイレスは傷の深さをすぐさま認知した。

「さて、とどめと行くか」

ジゴロウが構えたその時メイレスはジゴロウへ刀を振るった。

__暗澹 あんたん

ジゴロウのほうへ斬撃が飛んできた。

__百合 ゆり

ジゴロウは白いドームに包まれ、メイレスの斬撃をかわした。だが、メイレスにとっては計画通りだった。ジゴロウの百合はどんなに強力な技でも通用しないが、次に使用するまでほんのわずかなインターバルが生じる。前回、ジゴロウがメイレスと闘ったときにメイレスが気付いたことだった。そのためにメイレスは対ジゴロウ用に前回はなかった新たな技を生みだしていた。

__冥土 めいど

ジゴロウを通過した斬撃がくるりと回転し再びジゴロウのほうへ向かっていく。この技はジゴロウの百合が切れる瞬間を攻撃するためだけの技なのだ。ジゴロウは斬撃を受けた。腹に一太刀の切り傷が入った。ジゴロウは倒れたが、すぐさま立ち上がった。

(今回は逃がさん)

ジゴロウは刀を構えた。

__万色花蕾 ばんしょくからい

色鮮やかな花々がジゴロウの周りを回転する。ジゴロウはメイレスのほうへ走り出した。メイレスもまた刀を構えた。

__闇夜魔鏡 えんやまきょう

メイレスもジゴロウのほうへ走った。闇夜魔鏡は自分の攻撃力を上げ、自分が切ったところに二連撃いれる技である。メイレスがジゴロウへ刀を振り下ろしたとき、ジゴロウも刀を振り上げていた。二人の刀が激しくぶつかり合う。刀が重なるところには火花が立ち込めている。

 次の瞬間、二人は正反対に吹き飛ばされた。メイレスは立ち上がったが、血を流しすぎたためもう戦えないことを悟った。それはジゴロウも同じだった。二人は互いに無念のまま退散した。

あけましておめでとうございます。

次回は1月4日21時に公開です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ