第一話 指令
国軍司令省、それは大戦士や戦士たちが集ういわば軍の中心部だ。その中の一つ、地域管轄局に一人の青年が入ろうとしている。ワダヒロ二等戦士。地域管轄局所属で、軍属二年目である。年齢は二十二才。腰に刀を持っていて、黒髪で軍服を身にまとっている。地域管轄局とは、地域の治安の維持、巡回などいわば警察のようなところである。防衛隊とはもし戦争が起きたときに攻撃を担当する攻撃隊とは別に国の防衛を行う隊である。だが、国軍に入る士官学校の教官などもここに配属している。彼が今入ろうとしているのは地域管轄司令官のウラス・グラハム・イヴァイア大戦士の部屋である。ここで新たな命令が下される。今までは紙でしか指令がこなかったから直接指令が下るのはヒロにとって初めてのことであった。緊張が体を走り回るのを自覚しながらドアを開ける。
「失礼します。ワダヒロです」
目の前にいるのは青い髪の猫背の男だった。濃いくまがあり、黒い目はどこに焦点があっているのかわからない。ただこちらをとらえていることは確かである。ヒロの抱いた彼の印象はあまりいいものではなかった。なぜなら、彼と今まで働いた人間はことごとくやめているかどこかへ左遷されているという噂があるからである。
イヴァイアは耳に直接響くような声で話し始めた。
「やぁ、ヒロ。突然だが今日から新しい隊に入ってもらう」
「ウェズの隊だ」
(ウェズが)
ヒロはすこし驚いた。
「そしてウェズ隊に新たな任務を与える」
「最近、ヴェロヘラというテロ組織が騒ぎを起こしているのは知っているな?」
「はい。この前も我々の軍施設に攻撃をしかけ、多数の死傷者が出たというニュースを見ました」
「…まだ何人で構成されているかわからない。だが、ついに潜伏先を突き止めた」
「制圧しに行け」
「‥了解しました」
「あと二人応援をよこす。下がっていいぞ」
「失礼します」
そういって、ヒロは部屋からでてドアを閉めた。何人かもわからないのにたった三人で行って大丈夫なのかとヒロは廊下を歩きながら心の中でつぶやいていた。
ちょうどその時、一人の男性がヒロの肩に腕を後ろからおいてきた。
「よう、ヒロ」
「ウェズ先輩」
ロール・ウェズ。今年で軍属八年目の上級戦士官、ヒロの先輩だ。黒い髪に細いフレームの眼鏡をかけている。面倒見がよく、ヒロが士官学校時代にかなりお世話になった人物である。今は地域管轄局の人事部に所属している。人事部はその名の通り人事を担当しているが、士官学校の生徒の情報も管理している。
「聞きましたよ。ウェズ隊ですって?」
「あぁ、俺も自分の隊を持ってみたくなったのさ」
「だが俺はデスクワークのほうが得意だから、お前らで行ってこい」
「はぁ」
「今から俺の隊の隊員を紹介してやる。ま、ついてこい」
すたすたと歩いていく先輩を後輩は駆け足で追った。
食堂につくとその青年は昼ごはんを食べようとステーキとパン、そして栄養ドリンクが乗ったお盆を運んでいる。少し濃い赤が混じった髪だがきちんと整っている。体の腰には刀が入った柄がぶら下がっている。彼が席に着いたとき、向こうから二人が近づいてくるのが見えた。
「イアン一等戦士だな。上級戦士官のウェズだ」
ウェズがそういうと、彼は立ち上がってウェズに敬礼をした。
イアン・M・ラーク。赤髪で、眼鏡をかけた青年であり、ヒロと同期である。最も百人余りいる士官学校でイアンとヒロがあったことはない。実質初対面だ。
「こちらはワダヒロ二等戦士だ。今回貴官と一緒に任務に行ってもらう」
「分かりました」
イアンははきはきとした口調で答えた。ヒロは初めて見る赤髪の青年を見つめていた。そして
「ワダヒロだ。よろしく」
「こちらこそ、よろしく」
二人は互いに挨拶すると握手をした。するとウェズが腕時計を見ながら言った。
「もうそろそろ三人目がくるぞ」
ヒロとイアンはウェズが見ている明るい茶色の髪をしたショートヘアの女性のほうをみた。
「マミヤフブキ三等戦士です。今回、お二人と同行することになりました。よ、よろしくお願いします」
フブキはそういって笑っているが手が震えている。彼女はヒロたちの後輩であり、今年入ったばかりのいわば新人だ。今まで司法局で勤めていたが、後方支援を得意とするので今回抜擢された。ヒロとイアンは彼女に自己紹介をした後、四人で昼食をとった。




