第十六話 伝えなければ!
ジゴロウとヤノフは館の前についた。ジゴロウは弾を回収しに行った。ヒロ、サーガ、イアン、ファイ、フブキも館の前にいた。そこへ目が覚めたウォンがとぼとぼ歩いてきた。ヒロがウォンに事のいきさつを全て説明した。ウォンは嘘だと言って信じなかったが、仲間たちの亡骸を見て叫んだ。その後どこかへ歩いて行った。ヤノフは彼の背中をただ見つめていた。そこに弾を二つ回収して処分してきたジゴロウが来た。
「ヤノフ、お前も来るか?」
サーガはヤノフに問いかけた。だが、ヤノフは首を横に振った。
「‥俺は怖気づいた。死んだ仲間には悪いが、俺には無理だ」
「‥そうか」
ジゴロウはヤノフの右肩に手を置いた。
「これからわしらはある宿に行く。気が変わったらそこへ来い」
「はい」
それからヤノフは五人と別れた。
「俺たち今回はやられただけだったな」
ファイは不貞腐れながらイアンに話した。イアンは何も言わず眼鏡を拭いていた。
午後六時十八分、ヤノフが歩いていると前に女性がいることに気付いた。ヤノフはその女性を見たとき、体中に恐怖が襲ってきた。妖艶な白髪でロングヘアの女性で、左手首には水色のリングをつけていて高貴な雰囲気を漂わせていた。目の前にいるのは大戦士の一人、アリス・ユーラだ。すると後ろから肩をつかまれた。つかんだのはハームだった。
__マインドフォール
やがて、ヤノフは泣きながら話し始めた。それは、ジゴロウたちが泊まる宿の場所だった。しばらくしてヤノフは倒れた。ハームはユーラのところへ歩いた。ハームとは別の男がユーラに尋ねた。
「今すぐ向かいますか、大戦士」
「いや、まだ奴らがついているか分からない。‥夜明けにしておこう」
「こいつはどうします?」
ユーラは少し考えた後こういった。
「こいつはカンダたちから離れた。つまりただの臆病者だ。生かす価値はない」
ユーラが手を向けようとしたとき、ヤノフは涙を拭き立ち上がった。
(ジゴロウさんたちがやられてしまう、また何もできずに。そんなのはもうたくさんだ!)
「おい! 俺はてめぇらにジゴロウさんたちの居場所を教えた。だが、ただで帰すわけにはいかないな!」
ヤノフは手の平を向けた。
__シリウス
ヤノフの能力は恒星という。ヤノフの手のひらから青白い光がでた。すると、ユーラたちの服が焦げ始めた。男は完全に焦げ、やがて全身真っ黒になり死んだ。ハームは焦り始めたがユーラは至って冷静だった。ユーラはヤノフに手を向けた。ユーラの能力は波動。いろいろな水による波だけでなく物理学的な波を起こせるのだ。
__衝撃波 しょうげきは
ヤノフはユーラから放たれた衝撃波による空気の揺らぎを感じ、それをよけた。
「まだまだ!」
__ベガ
ユーラは突然上に飛ばされ、落ちた。
「なかなか面白い能力ね」
ユーラは落下しながら感心していた。ユーラは地面に手を向けた。
__衝撃波 しょうげきは
ユーラから放たれる衝撃波でユーラは安全に着地できた。その隙にヤノフは走って逃げた。
ヤノフは息が上がるのを気にも留めず走り続けた。ユーラに恐れをなしていることも一理あるが、それよりも重要なことをするために走ったのだ。それは、ジゴロウたちに宿がばれていることを伝えることだ。
(公衆電話から宿にかけて知らせられれば‥なんとかなるはずだ‥‥)
(エラ、ドルト、ノース‥‥すまない。俺たちの仇はあいつらに任せる。だから、あいつらを殺させるわけにはいかねぇ!)
その時、ヤノフはついに公衆電話を見つけた。
「あった」
だが、喜んだのもつかの間、すでにユーラとハームが追いついていた。
__衝撃波 しょうげきは
ヤノフが公衆電話まであと少しというところで右から飛んできた衝撃波で公衆電話が吹き飛ばされてしまった。ヤノフは右を見た。ユーラとハームが立っていた。ヤノフは後ずさりした。
(伝えなければ‥一刻も早く!)
ユーラはヤノフに手の平を向けた。それと同時にヤノフも手を向けた。
__波間現水 はかんげんすい
ヤノフのほうへとてつもない速さで水の波が向かっていった。
__プロキオン
ヤノフの手から白い光が出てきて水の波を防いだ。
「こんなものか! 大戦士の技はよぉ!」
ヤノフはあからさまに挑発した。だがユーラは鼻で笑った。
「えぇ、こんなものよ。大戦士の技は」
「何を‥‥‥」
ヤノフが言い返そうとしたとき、ヤノフの体が吹き飛んだ。
(一度の技で二度‥波を出していたの‥か‥)
ヤノフは後頭部を地面に激しく打ち付け、横向きに倒れた。死の間際ヤノフは一言つぶやいた。
「母さん‥ごめん‥俺‥また守れ‥‥な‥‥‥」
ヤノフの目から光が失われた。
「処理完了。行くわよ、ハーム」
ユーラとハームは悠長に歩いていった。
次回は12月31日21時更新です。




