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第十四話 自警団 前編

 午後十二時頃、ヒロたちは刑務所から離れたところにある村へ来ていた。すると、乞食らしきものが市場のかごからりんごを盗んだ。

「あれは、窃盗だ」

ヒロはその瞬間を目撃した。そしてそいつを捕まえようと走り出したとき、そいつは突然頬に何かをくらい倒れた。

__フィジス

「何が起きた?」

ファイはそうつぶやいた。

「あそこ!」

フブキはある女性を指さした。その女性はボールの球を持っている。すると、女性はゆっくりこっちへ向かってきた。ファイ、サーガ、ジゴロウは警戒した。イアンも刀の鞘に手を置いている。すると、女性は紳士のようにお辞儀をした。

「こんにちは。私はエラ・ウォッシャー。自警団の一人です」

「自警団って?」

ファイがイアンに聞いた。イアンは答えた。自警団とはパラダイム内にいる非政府組織である。自警団は主に市民の安全を第一にしているが、実際のところ構成員のすべてが国軍から追い出された者や元犯罪者だ。彼らが言うには自分たちは無罪らしい。要するに自称正義を貫く組織ということだ。

「なんの用だ?」

ヒロはエラに尋ねた。エラは礼儀正しく笑顔で話した。

「私たちはあなた方を自警団へ勧誘に来ました。ヒロさん」

「私たち‥‥」

フブキがそういうとヒロたち全員をエラ含め五人が囲んでいる。サーガが斬りかかろうとしたが、ジゴロウに制止された。そのうちの一人がヒロの前に来た。

「初めまして、ヒロ。俺はヤノフ・カルソフィー、自警団のリーダーだ」

二十代の若々しい男があいさつした。ヒロは眉を細めた。

(もし襲ってきたら殺しかない)

「君たちの情報は知っています。ワダヒロさん、マミヤフブキさん、イアン・メイジア・ラークさん、カンダジゴロウさん、サーガさん、そして‥‥誰だ?」

「俺はファイだ!」

「まぁともかく、ぜひ我々自警団の本部まで」

ヒロは小声で尋ねた。

「みんな、どうする?」

「無視しよう」

イアンは冷徹にそういった。

「まぁ、味方になるならそれでもいいとは思うな」

ジゴロウは小声で話した。

「それもそうだ」

サーガも同意した。なぜなら、自分がそうだからだ。ヒロたちは自警団について行った。

 ヒロたちはやがてある館についた。全員が入ると扉がバタンとしまった。ヒロたちは食堂へ連れていかれた。細長い机にシャンデリアが飾ってある。ジゴロウが机の箸に座り、右にはヒロ、フブキ、サーガ、左にファイ、イアンが座った。そこへエラたちが食事を運んできた。ファイが思わずよだれをこぼすほどの豪華な食事だった。ヒロとイアンは警戒して食べようとしなかったが、サーガ、ファイは既に食べ始めていた。少なくともサーガは相当お腹がすいていたのだろう。ジゴロウも食べていた。フブキは最初こそ警戒していたが、口に料理を運んだ。

「美味しい!」

ヒロはその様子を見て料理を食べた。五人がおいしそうに料理を食べるのを見ながらイアンは少しうらやましく思っていたが結局食べなかった。

 食事が終わるとヤノフやエラたちが座った。そしてヤノフが手を組んで話し始めた。ヤノフは話し始めた。

「さて、今ここにいるのは全員犯罪者や元軍人です。ジゴロウさん、あなたのようにね」

「ほぉ」

ジゴロウは唇を拭きながら軽く受け流した。ヤノフは続けて話した。

「ジゴロウさん、我々は全部知っているのですよ。メイレスとの関係もね」

「おい、今なんて言った?」

ジゴロウが紙ナプキンを置き、顔色を変えて言った。その一言に場が凍り付いた。ただ一人ヤノフを除いて。

「ジゴロウさん、あなたは昔メイレスの結婚式に出ていましたね」

「どこでそのことを知った」

「我々をあまり舐めないでいただきたい」

ヤノフは机にあるお茶を一口飲んでまた話し始めた。

「みなさん、ここで自己紹介と行きましょう、エラはもう知っているから、じゃあノース、君からよろしく」

ノースと呼ばれた男は帽子を脱いで話した。

「ノース・スナイダー、元軍人だ。俺は昔‥‥いいや、言わないでおこう」

そういうと今度は隣にいる男が話した。タバコをふかせようとしたところをヤノフに制止されてタバコを置いた。

「ドルト・ウォール、国家反逆罪で捕まったところをヤノフに助けてもらった」

ドルトは昔から国のことが嫌いだった。ただそれだけだ。たった一言いっただけで捕まったのだ。ドルトが口を閉ざすと、ヤノフがそれを見て話し始めた。

「エラは元軍人で、当時の上官が仕事をミスしたときにそれを肩代わりさせられてそのまま辞めさせられたらしい」

エラは自身の秘密を打ち明けられ、反撃するように話した。

「ヤノフは本人曰く親殺しの冤罪らしいわよ」

ヤノフはエラと目が合ったがすぐにそらし、話もそらした。

「‥あと一人、ウォンは今皿を洗っていて‥あぁ、ちょうど来たようだ」

午後十二時十六分四十七秒、ヤノフの視線の先でドアが開いた。そこから猫背の男がゆっくり歩いてきた。ヒロたちもそれを見た。

「ウォン、どうした?」

フブキはウォンの左手に包丁が握られているのを見た。

「みんな! 気を付けて‼」

ウォンは包丁で突然叫びながらヒロに向かってきた。ヒロは刀を抜いて攻撃を防いだ。ヤノフたちは何が起こっているのかわからなかった。すると、いったん退いたウォンは、次はサーガに向かってきた。

「ヤノフ! こいつを殺すぞ!」

サーガは刀を抜いて叫んだ。するとエラが立ち上がりボールをポケットから取り出し投げた。エラからウォンまでの距離はこのボールがその軌道で飛んでいける長さではなかった。

__スロウ

ボールの推進力が上がり、飛距離が伸びた。そして、ウォンの頭にボールが飛んできた。ウォンは吹き飛ばされて倒れた。

「少し気絶させたわ」

エラはヤノフに言った。エラの能力は投擲。投げたものの飛距離や軌道を操る能力だ。

「みんな、大丈夫?」

エラはヒロたちに言った。ヒロはうなずいた。

「ヤノフ、どういうことだ?」

「分からない、いったい何が」

ジゴロウはウォンの体を調べた。すると、手にやけどを負っていた。突然ウォンの体が動いた。そして、ジゴロウに襲い掛かった。ジゴロウはウォンの体を押さえたが次第に圧倒されていった。

「なんて力だ、こいつ」

「馬鹿な‥ウォンはこの中で一番力が弱い! こんなことができるはずがない!」

ヤノフがおどおどしながら言った。ジゴロウは体を左右に揺らし、何とかウォンをどかした。そして、刀を取り攻撃に出た。

__紫陽花 あじさい

斬られたウォンはすこしたじろぎ、やがて倒れた。

「ただの気絶だ」

ジゴロウはヤノフに言った。ノースはこの一連の流れを見て気づいた。

「ウォンはだれかに操られているのだ!」

ヒロは手を顎にあてて考え込んだ。

(もし操られているのなら、そこから見ているはず‥‥)

フブキは周りを見た。だがそれらしき人はいなかった。

「もし本当だとしたら、おそらくそいつは外にいます!」

フブキは全員に言った。

「みんな、外に出よう!」

ヒロはみんなに言った。ヒロたちが玄関ホールに出たとき、二十代前半ほどの女性が立っていた。ヒロはエラに尋ねた。

「エラ、彼女も仲間か?」

「いいや、違う」

ヒロとエラは戦闘態勢に入った。ヒロとエラは戦闘態勢に入った。

 女性は微笑みながら話し始めた。

「私はイ・ミヤ。能力は鳳凰」

彼女の能力は炎を操る力だ。するとミヤは手を振り上げ、下ろした。

__インフェルノアロー

ミヤの後ろに炎の弓が現れ、放たれた。ヒロは防御しようとしたところドルトが目の前に現れた。ドルトの能力は反射だ。

__リフレイン

ドルトの前に水色の壁が二枚現れた。そして、炎の矢が二枚の壁で跳ね返させられた。

__カウンター

やがて、跳ね返され続けることで加速した炎の矢がミヤの方へ飛んで行った。だがミヤは一つも体を動かさず立ちつくしていた。

__ウィンディア

炎の竜巻が現れ、炎の矢を吹き飛ばした。

「私に攻撃は通じないわ」

__ファイヤー

ミヤの手のひらに炎が現れた。すると、突然炎が分裂し何千個にもなった。その炎がヒロたちに向かってきた。

__光柱 こうちゅう

__リフレイン

二人は攻撃を防いだ。だがノースの腕に炎が当たり、火傷をおった。するとノースは倒れた。フブキとイアンがノースを介抱した。すると、ノースは手榴弾を手に出現させた。ノースの能力は爆発。手榴弾を手に生成する力だ。しかし今のノースは自身の意思とは関係なく生成した。

「みんな! 離れて‼」

フブキがそういったとき、イアンがフブキを抱いて離れた。ほかのみんなも離れた。そして爆発した。ノースはその爆発に巻き込まれた。

「ノース‼」

エラが叫んだ。突然仲間が目の前で死んだのだ。無理もない。

「さっきの手榴弾はノースの能力だ」

ヤノフはそういった。ジゴロウはヤノフに言った。

「おい、ヤノフ。おそらく敵はあいつのほかにいる。そいつが操っているのだ。そいつを探すぞ」

「分かった」

ヤノフとジゴロウは館から出た。

「ファイ、イアン、サーガ、エラ! なりふり構わず攻撃しろ!」

「分かっているぜ! ヒロ!」

ファイは笑いながらミヤに向けこぶしを放った。

__腕力 わんりょく

ミヤはファイを睨みながら言った。

「女子に手をあげるなんて、最低な男ね」

__ファイヤー

ミヤの前に炎の壁ができた。そしてファイのこぶしが少し焼けた。

「いってぇ!」

ファイは右手を押さえながら言った。突然話すのをやめた。するとサーガに向け殴りかかった。

__腕力 わんりょく

サーガは刀で攻撃を防いだ。ファイは白目をむいている。

(まるで正気を失っているようだ)

イアンはそれを見て気が付いた。

「ヒロ、エラ、ドルト、サーガ! 敵はもう一人いて、そいつの能力で理性をなくしているのだ!」

ヒロたちは衝撃を受けた。

「だが今ジゴロウとヤノフがいないということはおそらくそれに気が付きそいつを追っているということだろう。俺たちでファイとミヤを攻略するぞ!」

イアンは冷静に状況を分析しそう判断した。

サーガはとにかくファイを押さえることで精いっぱいだった。

次回は12月27日21時に公開です。

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