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第十三話 脱獄 後編

 ファイとイアンは牢屋を走っていた。その時、突き当りから二人刑務官が現れた。

__ファイアクロス

__腕力 わんりょく

お互いに一人ずつ倒すとファイがサーガのいる牢屋を見つけた。

「ファイ、牢屋を開けるための機械を探してくれ」

「了解だ」

ファイはまた走り出した。

「おい、サーガ」

イアンはサーガに話しかけた。サーガはイアンに背中を向けて胡坐をかいていた。

「誰だ? 何の用だ」

サーガは後ろを向いたままそう吐き捨てた。イアンはことの顛末をすべて話した。

「というわけで、仲間になってくれ。ゲントルと一緒に」

「ゲントルは死んだ」

サーガは言った。

「どういうことだ?」

とイアンが動揺して聞くとサーガは立ち上がってイアンのほうを向き話した。

「さっき、刑務官が話しながら歩いて行った。お前らがここを襲撃する少し前だ。そいつらによると、ゲントルは反乱を起こしてペナルティが課せられた。だが、それにも抵抗したため殺されたと」

イアンはさらに動揺した。

(刑務官が受刑者を殺しただと‥‥そんなことが‥どこまでいってもこの国は‥‥)

サーガはため息をついて胡坐をかいた。

「イアン、俺はもう気力がない。もうだめだ」

「サーガ。お前はそれでいいのか?」

うつむくサーガの動向が開いた。

「お前らが動き出したのは、この国を変えようと思ったからだろ? ゲントルはそれをあきらめなかった。なのに、お前はあきらめていいのか?」

「たやすくあいつの名を言うな!」

「‥すまん」

サーガはイアンをにらみつけた。だがその怒りはイアンに向けたものではなく自分自身に向けたものだった。諦めちゃだめだ、そう心ではそうわかっていても、どうしようもない現実が立ちはだかる。体がすくむ。そんな自分自身への怒りだった。

「サーガ、一緒に闘おう。俺やお前みたいなやつをもう二度とださないように」

(自分のような人間をまた出してはいけない‥か)

これは自分に課された義務なのだと気づいた。サーガはゆっくりと立ち上がり、イアンのほうを向いた。イアンは気付かなかったが、サーガは涙が数滴こぼしていた。その時、牢屋の扉が開いた。サーガは気付かれぬように涙を拭きイアンの横へ歩いた。するとほかの牢屋の扉も次々と開いた。

「どうなってやがる」

サーガがイアンに言った。

「分からな‥‥」

「おーい」

二人の後ろからファイが走ってきた。

「あ、サーガだっけ? 今度はちゃんと毒刺せよ」

「おい、ファイ。どうなっている」

イアンはファイに聞いた。

「あぁ、機械の操作方法がわからなくてぶっ壊したら牢屋の扉が全部開いた」

ファイが珍しく頭をかいている。しかし笑顔のままだ。イアンは僕が行けばよかったと後悔してため息をついた。

「おい、こいつら軍服着ているぞ! やっちまおうぜ!」

囚人たちが三人を囲んだ。

「サーガ、準備はいいか」

イアンはそういいながらここへ来る途中に武器庫で取ってきたサーガの刀を投げた。

「あぁ」

サーガはキャッチして返事すると刀を抜いて言った。

 ヒロとフブキは廊下を走っていた。その時、一人の囚人が吹き飛ばされてきた。それを見ると体が燃えていた。

「ファイ、イアン無事か?」

ヒロは三人を見て言った。

「やぁ、サーガ」

「‥小僧か」

ヒロとフブキは山陰と合流した。すると、五人を囲むように囚人たちが集まってきた。

「それにしても、なんで急に囚人たちが出てきたの?」

フブキが囚人たちを見ながらそういうと、ファイは天を仰いだ。五人は互いに背中合わせで囚人たちと戦った。


 ジゴロウとエカムはお互い距離を取って相手の出方をうかがっていた。互いに視線を外さないまま円をかくようにゆっくり動いている。

__躍氷 やくひょう

エカムの右手に氷の手裏剣が泡割れ、それを投げた。

__蓬 よもぎ

ジゴロウは手裏剣を突き刺して飛ばしエカムはそれをよけた。さらに

__桜 さくら

ジゴロウは桜色の斬撃をエカムへ間髪入れずに放った。エカムはよけきれず右腕に切り傷を負った。エカムは舌打ちして話し始めた。

「そろそろ終幕と行こうぜ、上級戦士官殿」

「ほぉ、そうか」

「あんたは強すぎる。俺たちにとっては最大の脅威だ。ここで消えな!」

__氷原 ひょうげん

エカムとジゴロウのいる地面が凍っていった。

「さて、行こうか」

エカムはジゴロウに急接近した。激しく交戦する。響き渡る轟音は地面を割るほどだった。ちょうどその時、脱獄した囚人たちが入り口だったところからわらわら出てきた。

「おい、あそこにいるのはカンダと大戦士じゃねぇか!」

「なんで殺しあっている?」

「知るか? 俺らをこんなところにぶち込んだ元凶だ! 二人とも殺せぇ!」

囚人たちは二人へ向かってきた。

(囚人たちを外へ出すわけにはいかんな)

ジゴロウがそう考えているとエカムはまた舌打ちした。

「邪魔だな」

「そうだな」

エカムとジゴロウは一旦退くとそれぞれ囚人と対峙した。

__躍氷 やくひょう

__紫陽花 あじさい

ジゴロウは囚人に斬りつけた。だが囚人は斬られた箇所が溶けていくような奇妙な感覚に陥り、動けなくなった。ジゴロウとエカムは互いに囚人を倒した。エカムは囚人を殺し、ジゴロウは囚人を気絶させた。エカムはジゴロウをどさくさにまぎれ狙った。

__氷柱 つらら

囚人たちの体を貫通してジゴロウのほうへ向かってきた。

__百合 ゆり

白色のドームでやり過ごしたジゴロウは

__蓬 よもぎ

エカムに殺された囚人の死体の腹に刀を突き刺し、エカムのほうへ吹き飛ばした。

__針氷樹 しんひょうじゅ

氷でできた大樹が凍った地面から現れた。吹き飛ばされた囚人はその木の枝に突き刺さった。その木から無数の枝がジゴロウめがけて伸びてきた。

__花衣・黒真珠 はなごろも・くろしんじゅ

ジゴロウの刀から黒い斬撃がでて、枝のほうへ向かっていった。次の瞬間、枝は八つ裂きになった。

「まだまだじゃな」

ちょうどその時、エマリスが入り口から出てきた。エカムはエマリスと目があった。

__躍氷 やくひょう

次の瞬間エマリスのほうへ氷の手裏剣が飛んできた。

(死ぬ‥‥)

エマリスは足から崩れ落ちて下を向き、目をつぶった。そのとき、目を開けるとジゴロウが手裏剣を切り落としていた。

「どうして?」

エマリスは涙をこぼしながらジゴロウに聞いた。

「何となくじゃ。さっさと逃げろ!」

エマリスはふらふらと立ち上がって、その場を後にした。

(軍服を着ているということはエカムの味方だ。味方を殺そうとするとは)

ジゴロウは自身が憤り感じているのを自覚し言った。

「エカム、お前の言う通りじゃ。終わりにしよう」

ジゴロウから放たれる殺気が一段と濃くなった。

(カンダが本気で殺しに来る‥)

エカムはぞっとして気を引き締めた。

__万色花蕾 ばんしょくからい

ジゴロウの周りにいろいろな花が現れた。エカムは自分が死ぬという勘が働いた。

「‥‥そうだな。終わらせよう」

そういってエカムは両手を掲げた。

__氷剣無散 ひょうけんむさん

いくつもの氷でできた手裏剣が周囲に飛び散りエカム自身も手裏剣を持ちジゴロウのもとへ走った。ジゴロウは飛んでくる無数の手裏剣をすべて切り刻みながらエカムのもとへ迫る。エカムはやがて圧倒され顔が青ざめていった。だが、すでに遅かった。エカムは手にある手裏剣をジゴロウに刺そうと振りかざした瞬間、ジゴロウはエカムに一太刀振るい、通り過ぎた。

切られたところから血が噴き出した。エカムはそのまま倒れた。ジゴロウは刀をしまうとエカムのほうへ歩いてきた。

「なぜさっきあの娘を殺そうとした?」

「‥‥しる‥か‥」

「‥お前、変わったな」

エカムはそのまま目を閉じた。ジゴロウはしばらくエカムを眺めていたが、ヒロたちが刑務所から出てきたのき気が付き、ヒロたちのほうへ歩き出した。

「おいヒロ。大丈夫か」

「じいちゃん、目的は達成した。戻ろう」

「あれ、大戦士ですか?」

フブキがエカムのほうを指さして言った。

「もう死んでいる」

ジゴロウが言った。ヒロはジゴロウと何度も手合わせしたことがあるので知っていたが、四人はジゴロウの強さを思い知らされた。こうしてヒロたちは刑務所を後にした。囚人たちはヒロたちが去ったあとに来た戦士たちによって逮捕された。廃人たちは依然変わらず見せしめとしておかれた。もちろん廃人たちのことはニュースで報道されていない。一方、レイジはそこにいなかった。この事件から三日後に山中で滑落したと思われる死体が発見され、のちにレイジ本人と確認された。

次回は12月25日21時に公開です。

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