「ちゃんと生かしてやる」
「ただいま〜!」
王室から教会に戻ると修道服ではなく普段着のサナエお母さんが身支度を済ませていた。
「あら、遅かったわね?」
いつもなら怒られてたけどお仕事が終わると途端にサナエお母さんはオフモードに切り替わる。
今日は腕を組みながら一緒に歩いても許してくれた。
「今日は長かったんじゃない?」
今回の旅について色々語るとサナエお母さんは少し不機嫌そうに口を尖らせる。
「も〜少しくらい遅くても良いでしょ?」
お母さんは心配性だなーと言いながら次の仕事の準備をする。いつ来るか分からないから念入りに準備しないと。
アイテムの在庫を確認してると不意にサナエに背後から抱き締められた。
「ひゃ!?」
頭をワシャワシャと撫でられまるでお気に入りのぬいぐるみを抱きしめるように深く密着する。
「ばか・・・早く帰って来なさいよ」
切ないのか、寂しいのか、はたまた私の失言なのか分からないけどお母さんを悲しませしまったのかもしれない。
「お母さん、ごめんなさい」
良いのよ、お母さんはそう口にするがとても物憂げな表情は変わらぬまま気持ちを切り替える。
「今日は何が食べたい?」
「パンでいいかな?」
「他には?」
「ミルクがあればもう言う事無いよ♪」
「それだといつもと変わらないじゃない」
「私、もうすぐ死ぬんだからそれでいいんだよ♪」
私はつい口を滑らせる、だって事実だし・・・現実に目を背けても意味なんてないから。
それでももっと言葉を選ぶべきだった、お母さんは顔を真っ青にしながら首を何度も振る。
「あ・・・ごめん・・・ごめんなさい」
お母さんは手を胸に置き、ぎゅっと握り締めながら頑張って作り笑顔をする。
「大丈夫よ!新薬をもうそろそろ出来るの!それを飲めばきっと長生き出来る、ユカリちゃん・・・諦めちゃダメよ?」
いつになく優しい笑顔に無理してるのが判る。
私は母胎から生まれてない、ロボットの子宮から生まれた忌み嫌われるし存在、当初は殺処分の予定だったけどサナエお母さんの必死の説得に当時の王様は枷を着けて許された。
私が死ぬまで婚約も異性の触れ合いを禁じられ、全責任を負い、もし約束を破ったら処刑だなんておかしいよ。
私は人間じゃない化け物だ、私の魔法も呪われた魔法の一つを使えて人を大量虐殺する為の兵器だと人工子宮の内部に読み解かれた。
その代わりとても短命で二十歳は越せない、それどころか今年も生き残れるか分からない。
「ささ、今日はご馳走にするわよ!少しは家事も手伝いなさいよ?」
サナエお母さんは全て熟知した上で私を生かそうとする。
お母さんはずっと慕ってる人もいる、本当はもう結婚してる歳なのに。
「ユカリちゃん?何ぼーっとしてんのよ?」
「ほひゃ!?あ、ええっと!手伝いね!?」
また声を掛けられて情けない声を出してしまった、お母さんは肩を叩きながら今日の夕飯はご馳走に決定した。
私は食材を調達する為に教会を後にした。
「・・・絶対生かしてやるから覚悟しなさい、人の命をロボットなんかに決められてたまるもんですか」




