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我輩は猫魔導師である! 〜キジトラ・ルークの快適ネコ生活〜  作者: 猫神信仰研究会


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293・問、高齢者の移動に転移魔法を導入するメリットを述べよ(配点5)


 ブランフォード伯爵家の隠居、フリッツは、しばらく前に故郷の息子達へ手紙を送った。


 その内容は、トマト様という謎の作物と、それを加工して作られたバロメソースという食品を絶賛するものだったが⋯⋯それに加えて、トマティ商会で後から購入したバロメソースの実物も送っておいた。

 最初に商会から貰った試供品は食べてしまったので、もう手元にない。

 

 王都本店でも現在、バロメソースは品切れしやすくなっており、今は一日の販売数を事前に決めておいて、それが尽きた段階で閉店としているらしい。夕方まで品が残っていることはまずない。

 これは「高額転売」を防ぐための苦肉の策でもあり、「朝のうちに並べば買える」という状況を維持することで、転売価格の上昇を防いでいるとのことだった。


 リーデルハイン領からの定期便は稼働しているようだが、さすがに毎日届くわけではないし、生産力そのものが限界というのも本当らしく、関係者は皆、南部の「契約農場始動」に前のめりだった。


 意外だったのは、農業閥の筆頭たるカルテラ・アーマーン侯爵が強烈なまでの推進派に変貌したことで⋯⋯


『トマト様の普及は重要な国策である』

『トマティ商会はアーマーン侯爵家の御用達となった』

『トマティ商会には最大限の便宜をはかり、決して邪魔をするな』

『もしも商会に対する不正行為や圧力が発覚した場合、侯爵家の総力をもってこれをちゅうする』


 という⋯⋯「急にどうした⋯⋯?」と関係者がビビりちらかすほどの圧が発せられ、フリッツも困惑している。


 また侯爵本人からもじきじきに呼び出され、「契約農場の件では、くれぐれも商会の方針に従うように」「相手の不利益になるような真似は決してするな」「収入面、実利面での不満があったら侯爵家から補填ほてんするから、本当にあの商会だけは絶対に敵に回すな」と⋯⋯

「ほんとにどうした⋯⋯?」とフリッツは再度、困惑させられたものである。


 どうもアーマーン侯爵家とトマティ商会、もしくはリーデルハイン子爵家の間で何か取引があったようだが、トマティ商会側の担当者であるナナセやブラジオスに聞いても「うーん⋯⋯?」「いえ、これといって心当たりはないですねぇ⋯⋯」と首をかしげるばかりだった。


 結論としては「きっとトマト様の美味しさと将来性に感動したのだろう」という解釈に留めて、提携先となるブラン商会との折衝も滞りなく終わった。

 この折衝ではブラジオスに代わり「グレゴール」といういかつい凶悪な顔つきの男が出向いてきたが⋯⋯物腰はびっくりするほど丁寧で、ブラン商会の会長とも知り合いということで、和気藹々(わきあいあい)と商談がまとまった。


 トマティ商会そのものは新興ながら、シンザキ家の御令嬢やブラジオスといい、このグレゴールといい、良質な人材が揃っている印象を受ける。人事担当者に目利きがいるのだろう。


 さて、契約農場の件は手紙でも領地に知らせておいたが、いざトマティ商会がブランフォード領へ移動する段になって、フリッツも久々に領地へ戻ることにした。


 息子夫婦や孫達の顔も見たいし、話すべきことも多々ある。

 腐っても伯爵家なので、移動の際には警護の人員もそれなりに雇う。

 今のブランフォード伯爵家はもう軍閥ではないので、騎士団は保有していない。その代わり、領地に戻れば相応の数の衛兵がいる。


 領主やその家族が移動する場合には、基本的にこの衛兵達が護衛につくのだが⋯⋯フリッツはあくまで「先代」、それも居を王都に移しているため、移動時には領地からその衛兵達をわざわざ呼び寄せるか、あるいは冒険者を雇ったり他家の兵を借りることになる。

 今回は突発的な帰郷なので呼ぶ暇もなく、他家の兵を借りることとした。


 農業閥では、こうした「移動時の護衛の兵」をアーマーン侯爵家が貸してくれる。

 兵の旅費や食費、人件費は負担しなければならないが、常時雇い続けるのに比べればずっと安上がりだし、隊商と歩調をあわせて動くならそちらの護衛とも共闘できるため、「専属の護衛」はせいぜい五人程も雇えば良い。


 トマティ商会からブランフォード領へ行く商人も同行させれば、先方も多少は経費が浮くから都合が良いだろう⋯⋯そう思って同行も提案してみた。

 肝心の現地には、ナナセやブラジオス、グレゴールではなく、また別の社員が行く予定らしい。


 その社員の王都への到着日がまだ未定なので、決まり次第、早急に連絡すると言われたが⋯⋯


「⋯⋯すみません、フリッツ卿。当商会の人員は、『今日』『今すぐ』出発することになりまして⋯⋯」


 午前中、急に来訪したトマティ商会のブラジオスが、屋敷の玄関先でそう告げてきた。

 フリッツは目を丸くした。アーマーン侯爵家には「予定が決まり次第、兵を借りに行く」と伝えたため、まだ護衛は雇っていない。「今すぐ出発」となるとさすがに良い顔はされないだろう。


「また急だな? そちらの人員は王都に着いたばかりだろう? 馬だって少し休ませたほうが⋯⋯」


 ブラジオスが深々と頭を垂れる。


「いえ、馬は連れてきていません。あの、今からお話しすることは、どうかご内密に願いたいのですが⋯⋯ついさきほど、遠方の本社に、魔族のオズワルド様がトマト様を買い付けにいらしたそうで⋯⋯」


 フリッツは⋯⋯なにやら無性に寒気を覚えた。

 ブラジオスは頭を下げたまま話し続ける。


「⋯⋯当商会で雇い入れている『土属性の魔法を使える冒険者』が、そのオズワルド様とも懇意にしておりまして⋯⋯今回、そちらの領地の開拓に向かうと話したところ、オズワルド様が御自ら、『転移魔法』による送迎を申し出てくださったそうで⋯⋯」


 フリッツはハンカチを取り出した。震える手で冷や汗を拭い、何度も頷く。


「そ、そうか。それは、なんというか⋯⋯では、ご一緒できないのは残念だが、お気をつけて⋯⋯」


「⋯⋯フリッツ卿もぜひご一緒に、と⋯⋯オズワルド様が⋯⋯」


 口から何か出そうになった。心臓とか魂とか鳴き声とか、おそらくそういう系統の何かが⋯⋯実際には出てこない。当然である。


「わ、私のことまでご存知なのか? えっ⋯⋯いや、まさか、そのような、恐れ多い⋯⋯」


 さすがに辞退しようとした。

 しかし⋯⋯ブラジオスの後ろから、軍服を来た笑顔の美青年がゆっくり歩いてくる。


「お。貴殿が噂のフリッツ卿か? 急に押しかけてすまんな。私は『魔族』のオズワルド・シ・バルジオだ。トマティ商会とは懇意にさせてもらっている。そちらの領地に、新規のトマト様畑を作ると聞いたから⋯⋯後学のため、いろいろ見学させてもらおうと思ってな。よろしく」


 思ったよりも気安い声音と態度だったが⋯⋯その存在感には、言い知れぬ圧があった。

 フリッツは思わず片膝をつき、頭を垂れてしまう。


「お、恐れ入ります。こなたはフリッツ・ブランフォード⋯⋯ブランフォード伯爵家の先代当主にて、このたび、トマティ商会との、えー、ああ⋯⋯ええ⋯⋯」


 緊張で単語が出てこない。ブラジオスが横から囁いた。


「⋯⋯フリッツ卿、契約農場です。トマティ商会との提携を結び、契約農場の管理を委任された、と⋯⋯」


「そ、そう、それだ!」


 急な事態に混乱してしまい、もはやまともに受け答えができない。

 オズワルドはこの非礼を気にする様子もなく、フリッツの手を取ってその場に立たせた。


「そう緊張しなくていい。貴殿も『トマト様』の美味しさに目覚めたのだろう? いや、あの実は本当に素晴らしい! 生でももちろん、各種の加工品も非常に美味だし、栄養価まで高い。あの実の素晴らしさがわかるとは、貴殿もなかなか見所がある。どんな畑ができるのか、たいへん楽しみだな!」


 ⋯⋯温度感が想定と違いすぎて目眩がしたものの、ひとまず敵意はなさそうで安堵する。

 魔族オズワルドは、見た目こそ切れ者っぽい美青年だが⋯⋯実年齢はおそらくフリッツの数倍である。その容姿も軍閥の貴族から聞いた噂話と同じだし、ブラジオスの様子を見てもまず間違いない。しかもこれから『転移魔法』を使うと明言している以上、偽者という線は有り得ない。


「きょ、恐縮でございます。あのオズワルド様は⋯⋯トマト様の栽培に、それほどのご興味が⋯⋯?」


 フリッツの震え声には、満面の笑みが返ってきた。


「ああ! 自邸でも栽培を試みている。とはいえ気候が違いすぎるから、まずは温室の整備が必要なんだが⋯⋯聞けば南方には、トマト様の栽培に適した土壌があるそうだな。もし事実なら、鉢植えに使えるぐらいの量⋯⋯そうだな、木箱に二つか三つ分ほど、土をもらえるとありがたい。転移の手間賃はそれでいい」


 よほど膨大な量でもない限り、そこらの土など盗まれたところで別に気にもしない。そもそも魔族とは「問答無用で奪う側」ではなかったか。

 要するにこれは「転移魔法を貸し借りなしで使ってくれる」という、彼なりの気遣いなのだろう。


 少しだけ応接室で待ってもらい、メイドに指示して大慌てで旅行鞄の準備をしていると、また別の来客が来た。

 一人しかいないメイド(※親戚)は忙しいので、フリッツ自身が対応に出る。


「恐れ入ります。アーマーン侯爵家よりまいりました、キュリオでございます。警護用の兵の貸与について、フリッツ卿に追加の連絡事項があり、主から書状を預かってまいりました」

「これはこれは⋯⋯キュリオ殿が御自らとは、ご苦労だった」


 やってきたのはアーマーン侯爵家の家臣、魔導師のキュリオだった。

 三十代前半の生真面目そうな青年で、平民出身だから腰は低い。

 魔導師を雇えるような貴族は一部の上位層だけだから、ブランフォード伯爵家にはもちろん一人もいない。

 さらにこのキュリオの場合、単なる「魔導師」というより「文官」「官僚」としてカルテラ侯爵に仕えている感がある。魔導師としての研究や作業をそっちのけで、書類仕事や政務のサポートを中心にこなしているらしい。


 かといって、「書状を届ける」などといった使い走りをする立場でもなく⋯⋯つまり、書状に加えて口頭での伝言があるはずだった。


 応接室には今、魔族と商人がいる。ブランフォード伯爵家の財力でもてる王都の屋敷など、そこらの一軒家と大差ないから、応接室など一つしかない。狭いから玄関での会話すら普通に聞こえる。


 そんなわけで⋯⋯


「ほう! アーマーン侯爵家! 知っているぞ。トマティ商会に『御用達』の栄誉をくれた貴族だな」


 出てきた。


 不敬と覚悟しつつどうにか肩を掴もうとするブラジオスを、颯爽と振り切り⋯⋯魔族オズワルドは舞台俳優のように爽やかな笑顔で、その両手を広げた。


 キュリオが呆けた顔に転じる。


「あ、えっと⋯⋯お客人がいらしていたのですか? これはとんだご無礼を⋯⋯」


「い、いや、キュリオ殿、こちらの御方は⋯⋯!」


 胃のあたりがキュッとなる感覚を味わいながら、フリッツは双方に気を使って視線を右往左往させた。

 そんな彼の脇を通り過ぎ、オズワルドは気安くキュリオの肩を叩く。


「ル⋯⋯ライゼーからも聞いたぞ! あの男にめかけをあてがおうなどとは、あまりに不遜ふそんで大笑いさせてもらった。いや、しかし、トマティ商会の商品に将来性を見出した眼力は褒めたい。あのトマト様という作物は、野菜の王とも呼ぶべき素晴らしい可能性を秘めているからな」


 キュリオの頬が強張った。

 フリッツには何の話かよくわからなかったが、「妾」という単語を聞けば、まあだいたい察しはつく。

 カルテラ侯爵は、一般の貴族が「謝礼」、あるいは「褒美」として受け取りそうな縁を用意したが、ライゼーがこれを固辞したのだろう。


 そしてこの魔族は⋯⋯その行為を「不遜」と断じた。


 さあっと青ざめるフリッツを見て⋯⋯魔導師のキュリオも、この軍服の青年が「侯爵家の行為を不遜と笑える」立場の者だと気づいたらしい。


 それが許されるのは⋯⋯「誰もが許さざるを得ない」トマティ商会の関係者など、一人しかいない。


「⋯⋯ま、まま、ま、まさか⋯⋯まさか、あの⋯⋯オ、オズワルド様で⋯⋯ございますか⋯⋯?」


 一発で正答に辿り着いた若き魔導師を、フリッツは手放しで褒めてやりたかった。ここでもし「アーマーン侯爵家へのなんたる侮辱!」などと怒りだす人物であったら、フリッツはそいつを殴りつけてでも黙らせたはずである。


 魔族オズワルドの名は、先日来、社交会でもちょくちょく出ていた。

 きっかけは国境での対レッドワンド戦への介入。そこで「トマト様」を激賞してリーデルハイン家と縁を結び、その後は王弟ロレンス達のホルト皇国留学への支援をしたりと、昨年から急にこの国と関わり始めた魔族である。


 ライゼー自身は「トマト様を気に入ってくださっただけで、当家が特別扱いされているわけではない」などと謙遜していたが⋯⋯妾云々の話が漏れているあたり、あるいはもう「飲み友達」などになっているのではないかと疑ってしまう。


 魔族オズワルドは機嫌良く頷き、倒れそうなキュリオを支えてウィンクをキメた。魔族とは意外に陽キャであるらしい。


「そう、私がオズワルドだ。今から、フリッツ卿とトマティ商会の現地担当者を南方まで転移させる。フリッツ卿はその準備中なんだが、出かける前で良かった。その書状とやら、確認していくといい。まあ⋯⋯『道中の護衛の兵を貸す』という話なら、それは必要なくなったがね」


 玄関側から、魔族の制止に失敗したブラジオスもおそるおそる会話へ入ってきた。


「キュリオ様、恐れ入ります。トマティ商会のブラジオスと申します。えー⋯⋯オズワルド様は、契約農場のシステムと、現地でのトマト様の栽培環境構築の過程に大変、興味をお持ちのようでして⋯⋯このまま、現地では当商会の作業を見学したいとも仰っておられます。あの、あえて許可を仰ぐようなお話ではありませんが、一応、お耳にいれておこうかと⋯⋯」


 ⋯⋯より正確には、「貴族ごときの許可があろうとなかろうとまったく関係ない」という意味である。魔族がそんなもの必要とするわけがないし、侯爵家もこれを拒否できるほど命知らずではない。

 国境でレッドワンドの軍勢を軽々と一蹴した彼の大魔法については、現地武官や兵達から多数の目撃証言があがっている。


 キュリオは頬を引きつらせ、カチカチと歯を鳴らした。


「そ、そうでしたか。いや、それは⋯⋯はい。わ、わかりました。ええ、はい。ええ⋯⋯」


 ⋯⋯わかる。ついさっき、フリッツも同じような経験をしたのでよくわかる。人間、ガチで混乱し萎縮すると言葉に逃げられるのだ。


 それでも次の瞬間、キュリオは持ち直す。これは侯爵家の家臣としての矜持か。


「⋯⋯実は、あの⋯⋯書状の内容は、『警護の兵』をまとめる指揮官を私が務めるという話だったのです。私も現地に行って、契約農場の立ち上げまでの経緯をこの目で確認し、課題の洗い出しや、農業閥として協力できる要素を探すように、と⋯⋯フリッツ卿にも、そのご許可をいただきたかったのですが⋯⋯」


 オズワルドは「ほう」と思案げに顎を撫でた。


「ならば貴殿も一緒に来るといい。着替えやら滞在用の諸々は、現地調達でも良かろう。筆記用具の類はトマティ商会側の商人も持ち込むし⋯⋯ああ、まぁ、それでも必要なものはあるだろうから、主に報告するなり書き置きをするなりして、二時間後にまたここへ来い。それまでは私も、適当に王都を散策するとしよう」


 目を白黒させるキュリオとフリッツに笑顔を送り、オズワルドが颯爽と歩き出した。ブラジオスがフリッツ達に恭しく一礼し、その後ろへと続く。


「オズワルド様、時間を潰すのでしたら、いっそ本店に行かれますか? 今日ならば軽食もとれますよ」


「おぉ! 気が利くな、ブラジオス。そういえば開店前にちらりと内装を見せてもらったが、従業員達をまだ見ていなかった。ついでに挨拶していくとしよう」


 ⋯⋯この魔族と商人も、思ったより親しいらしい。

 後に残されたフリッツとキュリオは、しばし深呼吸をして心を落ち着かせる。


「⋯⋯フ、フリッツ卿、私は取り急ぎ、カルテラ侯爵へ報告してきます。旅の準備はしてあるのですが、馬車旅を想定していたもので、不要なものが多く⋯⋯ああ、いや、帰りは必要になるのか⋯⋯? いやしかし、それこそ現地調達で⋯⋯」


 戸惑うキュリオに、フリッツはもはや諦めの境地で穏やかな微笑を向けた。こんなにも穏やかな心持ちは何年ぶりか⋯⋯もちろん「とりあえず、オズワルドから解放された」という一時的な安堵のためである。


「⋯⋯キュリオ殿。おそらく『往復』の面倒を見ていただけそうな気がする。もちろん、我らが怒りを買うことなく、生きてこの役割をまっとうできればの話だが⋯⋯」


「役割⋯⋯? それは一体⋯⋯」


「⋯⋯トマト様の栽培環境、その構築に関してだ。オズワルド様は、ご自宅でもトマト様を栽培されるおつもりのようで⋯⋯我々が作る農場についても、見学したいと。いや、見学というか⋯⋯あるいは、『監視』⋯⋯?」


 キュリオも得心したようで、やや難しい顔に転じる。


「それはつまり、我々がトマティ商会に理不尽を押し付けたり、悪い農地をあてがったりしないようにと⋯⋯オズワルド様から、そういう懸念を持たれている可能性があると?」


 ⋯⋯⋯⋯わからない。オズワルドの態度にそれを匂わせる威圧感はなかったが、魔族がわざわざ「見学したい」などと言い出すからには、相応の目的がなければおかしい。


「⋯⋯いや、私からはなんとも。とにかく、カルテラ侯爵には『よろしく』お伝えしてくれ。私はもう、覚悟を決めた。この上はトマティ商会にひたすら迎合するのみだ。しかし、貴殿はまだ若いから⋯⋯このお役目、今ならまだ他の者と代わることもできよう」


 これはフリッツなりの気遣いだったが、キュリオはますます頬を引きつらせた。


「いえ、とんでもない。私以外の侯爵家の方に任せるなど、それこそ不安で胃に穴が開きそうで⋯⋯今回はぜひ、ご一緒させていただきます。むしろ⋯⋯置いてきぼりにならなくて本当に良かったと、私は安堵すべきなのでしょうね」


 フリッツごとき(・・・)の護衛のために、わざわざ侯爵家が貴重な魔導師たるキュリオを派遣するのは有り得ない。

 目的はトマティ商会との縁作り⋯⋯それから彼が先程も触れた通り、「現地の視察」「経緯の監視」にある。

 つまりフリッツから見ると、魔族と侯爵家、双方からの監視を受けることになるのだが⋯⋯それをさておいて侯爵家側の監視役に思わず同情してしまうほど、「魔族」の存在は厄ネタである。


「⋯⋯キュリオ殿。老婆心ながら、胃薬を忘れぬように。きっと必要になる」


「⋯⋯心得ております。むしろ常用しておりまして」

 

 どうやら見た目以上に苦労人らしい。

 トマティ商会とオズワルドには深い親交があるようだが、フリッツもキュリオも部外者なので、近い立場の道連れができたことは正直にいって心強い。

 

 そして二時間後――

 再びここに集合した面々は、オズワルドの転移魔法によって、南部へ向かうこととなる。


 トマティ商会からの同行者は、銀髪、褐色肌の南方風美女、「ジャルガバウル」と、ウサギのようなヘアバンドとマスクをつけた若い冒険者、「ピスタ・ラビ」という二人組。

 ジャルガはトマティ商会の社員だが、ピスタは土壌の改良を得意とする土属性の魔導師らしい。

 ややくぐもった声で「⋯⋯よろしく」とだけ挨拶されたが、どうやら無口な性格らしい。

 背負い袋の中には何故か、太ったキジトラ柄の猫まで連れてきていた。魔物退治に行くわけではなし、ペット持参でも別に構わないが、迷子にでもなったら怖いので、できれば首輪と紐くらいはつけて欲しいところである。


 人懐っこそうなその猫は、くりくりとした丸い目でフリッツとキュリオを交互に見つめ⋯⋯まるで「よろしく」とでも言うように、にゃあんと一声鳴いた。


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回答:メリットは若者に比べ少ない時間と体力の節約です、魔族等に起因する心労はアニマルセラピーで回復します(なおそのアニマル(猫)が一番上位なのは秘密)
>一発で正答に辿り着いた若き魔導師 優秀な人材だ!囲め!!         にゃー    にゃー       にゃー にゃー    きゅりお     にゃー    にゃー       にゃー    …
ちょっとまってほしい メイドが一人しかいないのに、朝から並んでバロメソースを買わせてきたということかい? フリッツおじいちゃん、バロメソースと朝の買い出しを終えて姪っ子メイドのメイが帰ってくるまで身の…
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