セルイの物語 その弐
「………それで? お前はどうしたのだ?」
話を聞いていた詩音が先を促す。セルイは深呼吸をすると、
「それからオレは………」
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俺は世界中を回る事にした。何故そうしたのか、自分でもわからない。だが、俺はそうした。
世界を回ると、色々な事を学んだ。本当に色々とな?
たくさんの人にも出会ったし、別れもした。崇拝もされたし、迫害もされた。処刑された事もある。
それでも………俺は死ななかった。別に死に場所を求めていた訳では無いけれど、とにかく俺は死ななかった。
太陽光も十字架も銀も聖水も………何もかもが。
そんな俺は、寂しさあまりに眷属を造ってしまった。………一人の孤独に耐えきれなかったんだ。眷属は七人。だが眷属達は日光に弱かった。死ぬんだ。だから俺は慎重になった。真祖として、眷属達を死なせないために。
そうして俺は長い旅路の果てに、この街に………もっとも、今とは違った名前だったが………とにかくこの街に落ち着く事にした。なんで落ち着いたか? それは、流れだな。うん。流れでそうなった。まぁ、行く宛てがあるわけでもなし、いいかと思ったんだ。
最初は、俺と眷属達だけの生活だった。だけれど、そのうち使用人になりたいとか言うもの好きが現れて………気付けば俺は吸血鬼になる前より、富を得ていた。
そんな生活を続けていた頃に、あの………分かりやすく言うと勇者がやって来て、魔剣を造る事になったわけだ。その話はもういいよな?
そして………そんな生活をしていたある日、アイツが現れたんだ。商人のマルタと言う女だ。
あの当時に女が商人なんて珍しくてな? この世界での話だが………もの珍しさで、ついかまってしまったんだ。そしたら懐かれてな? 一緒に過ごす事が多くなって………気付けば、俺は何百年振りに、恋をしてしまったのさ。
彼女は人なっつこくて。世話焼きで。そして、どこまでも純粋だった。
俺は彼女に夢中になった。いや、浮かれていたのかもしれない。久しぶりの愛だの恋だのに。
だが、そんな生活も長くは続かなかった。マルタは………商人仲間に裏切られて、死んだ。俺が駆けつけた頃にはもう………。死んでほしくない一心で眷属にしようとしたが、こと切れた遺体では眷属には出来ないらしい。彼女が目を覚ます事はなかったよ。
失意の俺は、引きこもった。殻に閉じこもる事で、現実から目を背けたんだ。
そんな生活が数十年続いたかな? まぁ俺にとってはあっという間だったが。
ある時、俺を案じた使用人の一人が、俺にトランクを渡して来たんだ。マルタが使っていたものとそっくりな。そこで俺は………商人になってみよう。そう思った。そして、俺は眷属達を眠らせ、使用人達には陰でサポートをしてもらう事にして………俺は、商人になったんだ。
最初は上手くいかなかったが、コツコツやって行くうちに、慣れて行った。順調だった。だが………。
俺はしくじってな? 商売敵に殺されてしまった。まぁ死なないんだが………それで、元の姿では商売が出来なくなって………今の姿になり、口調も変えて………今に至る。
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「という訳っス」
話終えたセルイは、静かにコーヒーを飲む。部屋に入る直前にレオンから渡されたのだ。
詩音はしばらく無言になった後、
「………そうだったんだな。ありがとう。話してくれて」
「たいして面白くもない話っス。オレは………俺は何も守れなかった怪物っス」
「だが、私の事は守ってくれた。そうだろう?」
詩音の言葉に、セルイは目を伏せ、
「………それなら俺は少し報われるな」
そう言う彼に、詩音は微笑む。セルイは頬をかくと、
「さてと! オレの話はコレでおしまいっス! 詩音! もう自殺しようだなんて考えるんじゃないぞ!? 俺の話を無駄にするな!」
「ああ。わかっている。わかっているとも」
本当に? と言う表情のセルイに、詩音は何度も頷くと、
「私は聖騎士! 閃光のブラックパール!! 魔王を討伐するまでは………いや、討伐し終わっても死ねない!!」
ベッドから立ち上がり高らかと宣言する彼女をみて、セルイも頷くと、
「その調子なら大丈夫そうっスね! んじゃ、リビングに行きますか!」
そうして二人がリビングに行くと、慌てたような素振りの、少し服が乱れたマリとレオンがいた。
「?」
「ちょ! なにをやってたんスか!?」
わかっていない詩音と、理解したセルイ。
二人の正反対な反応に、レオンがわざとらしく咳払いをすると、
「いえ………何も? ただのマッサージですとも! そんなわけで話は終わったようですね! コーヒータイムにしましょう!」
「また上手い言い訳を………」
呆れるセルイに、詩音は、
「驚いたが、マッサージとは本当に仲が良いのだな!」
純粋な詩音に、セルイは一松の不安を感じるが、あえて何も言わず、二人は大人しくしているマリと共に、静かにコーヒーが用意されるのを待った。




