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セルイの物語 その壱

「オレの事っスか? なんで?」


 首を傾げながら言うセルイに詩音は、


「私は……世話になっているお前の事を何も知らない。いや、知らなすぎる。このまま帰るのは、なんというか……嫌なのだ!」


 力強く言う彼女に、セルイはため息を吐くと、


「まぁ確かに、知らない事が多いっスね……でもそれで問題ないんじゃないスか? 何もかも知ってる相手なんておっかないっしょ?」


「だが!! 私は!!  私はお前の事が知りたい!! 頼む!!」


 必死な詩音の様子に、セルイは諦めたのか、頭をかきながら言う。


「……しょうがないっスね……オレの話をしますか。ただ……ここじゃ嫌なんで、詩音の部屋に行こう」


「あら? 私達には聞かれたくないと?」


 マリの言葉に、


「そうっスよ! 聞かれたくありませんー!」


 そう言うと、セルイは詩音と共に彼女の部屋に入った。

 詩音はベッドに、セルイは適当な椅子に座ると、


「それじゃ、何から話しますかね……」


 彼はゆっくりと語りだした。


****


 俺が生まれたのは、下級貴族の家だった。貧しすぎでもないが、かと言って裕福でもなく。

 その家の長男だった俺は、家を守るために必死で働き、そして妻をめとった。

 それから、子供が生まれ、俺は家長になった。

 全てが小さいながらも幸せだった。

 だが、そんな幸せは長くは続かなかった。


 ある日、強盗が家に入り、オレの一家は襲われ、為す術もなく殺された。

 愛しい妻、育ち盛りの子供、そして使用人達。全てを失い、また俺自身も致命傷を負っていた。とにかく俺は死んだ……はずだった。


 目が覚めると、俺は猛烈に人間の血が飲みたくて仕方なかった。そして、衝動のままに……部屋に入ってきた……女だったな。女の首筋に噛み付いて、血を飲んだ。気がつけば、女は失血死していた。

 俺は混乱した。何が起こった? 何をした? ってな。


 そして違和感にも気付いた。俺は誰だ? 妻と子供の姿と名前は思い出せるのに、自分の名前が思い出せなかった。俺は軽いパニックに陥った。

 そうしていると、年老いた男が部屋に入って来た。

 男は俺にこう言った。


 お前は不老不死の吸血鬼になったのだ。それも真祖となって。と。


 俺は困惑した。死んだはずなのに、怪物となって生きている。その事実に。

 そして、再びパニックになった俺は、その男を殺そうとした。

 でも、出来なかった。男は魔法に長けていたんだ。


 そうして、俺は最初の吸血鬼……いや真祖か。とにかく、ワ=デクウヌ・セルイと言う新たな名前で生まれ変わったんだ。


 しばらくして、男は俺のデータを元に、他の真祖を造り出した。成功例は俺を入れて四人だったが。


 そうして真祖を四人も造り出した男は、最後に造り出した四人目の吸血鬼に噛まれてあっけなく死んだ。


 どうしてそうなったのかは、俺は現場にいなかったからわからないが……男は死んだ。

 そして、四人の……いや、四匹の吸血鬼の真祖が世に放たれたのだ。

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