セルイの物語 その壱
「オレの事っスか? なんで?」
首を傾げながら言うセルイに詩音は、
「私は……世話になっているお前の事を何も知らない。いや、知らなすぎる。このまま帰るのは、なんというか……嫌なのだ!」
力強く言う彼女に、セルイはため息を吐くと、
「まぁ確かに、知らない事が多いっスね……でもそれで問題ないんじゃないスか? 何もかも知ってる相手なんておっかないっしょ?」
「だが!! 私は!! 私はお前の事が知りたい!! 頼む!!」
必死な詩音の様子に、セルイは諦めたのか、頭をかきながら言う。
「……しょうがないっスね……オレの話をしますか。ただ……ここじゃ嫌なんで、詩音の部屋に行こう」
「あら? 私達には聞かれたくないと?」
マリの言葉に、
「そうっスよ! 聞かれたくありませんー!」
そう言うと、セルイは詩音と共に彼女の部屋に入った。
詩音はベッドに、セルイは適当な椅子に座ると、
「それじゃ、何から話しますかね……」
彼はゆっくりと語りだした。
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俺が生まれたのは、下級貴族の家だった。貧しすぎでもないが、かと言って裕福でもなく。
その家の長男だった俺は、家を守るために必死で働き、そして妻をめとった。
それから、子供が生まれ、俺は家長になった。
全てが小さいながらも幸せだった。
だが、そんな幸せは長くは続かなかった。
ある日、強盗が家に入り、オレの一家は襲われ、為す術もなく殺された。
愛しい妻、育ち盛りの子供、そして使用人達。全てを失い、また俺自身も致命傷を負っていた。とにかく俺は死んだ……はずだった。
目が覚めると、俺は猛烈に人間の血が飲みたくて仕方なかった。そして、衝動のままに……部屋に入ってきた……女だったな。女の首筋に噛み付いて、血を飲んだ。気がつけば、女は失血死していた。
俺は混乱した。何が起こった? 何をした? ってな。
そして違和感にも気付いた。俺は誰だ? 妻と子供の姿と名前は思い出せるのに、自分の名前が思い出せなかった。俺は軽いパニックに陥った。
そうしていると、年老いた男が部屋に入って来た。
男は俺にこう言った。
お前は不老不死の吸血鬼になったのだ。それも真祖となって。と。
俺は困惑した。死んだはずなのに、怪物となって生きている。その事実に。
そして、再びパニックになった俺は、その男を殺そうとした。
でも、出来なかった。男は魔法に長けていたんだ。
そうして、俺は最初の吸血鬼……いや真祖か。とにかく、ワ=デクウヌ・セルイと言う新たな名前で生まれ変わったんだ。
しばらくして、男は俺のデータを元に、他の真祖を造り出した。成功例は俺を入れて四人だったが。
そうして真祖を四人も造り出した男は、最後に造り出した四人目の吸血鬼に噛まれてあっけなく死んだ。
どうしてそうなったのかは、俺は現場にいなかったからわからないが……男は死んだ。
そして、四人の……いや、四匹の吸血鬼の真祖が世に放たれたのだ。




