解放
「な!?」
リリアンヌの言葉に、驚きを隠せない詩音と武器を構えるセルイ。対象的な反応に、
「そう。……お嬢さん武器を構えなさい。私は……もう」
そう言いながら、セルイに切りかかってくる。それを左にかわすと、セルイはチィトゥィリ・アルージェをワイヤーガンブレードにセットし、ワイヤーを放つ。
リリアンヌは右に避け、セルイの懐に入ろうとする。セルイは距離をとりながら、クロウダートを投げる。
二人の戦いを呆然と眺めるしかない詩音は、剣を握ったまま動けない。そんな彼女にセルイが叫ぶ。
「詩音!! 何やってんスか!!」
セルイの叱咤に、詩音はハッ! とし、剣を振りかぶり、リリアンヌに向かう。
「うおおおおぉ!!」
しかし、その斬撃はかわされ、リリアンヌが詩音に刃を向ける。慌てて距離をとると、セルイが再びワイヤーを放つ。
だが、当たらない。
「くっそ! こうなったら本気になるしかないな!」
そう言うと、セルイは本来の姿、スーツを着た青年に変化する。
「さぁて! もう好き勝手にはさせない!!」
セルイは影を出し、リリアンヌを追い詰める。
リリアンヌは影を器用にかわしながら、セルイとの距離を縮めていく。セルイもそれを察知し、ワイヤーガンからボーガンブレードに変え、矢を放つ。
その矢を払い落とし、接近するリリアンヌを、詩音が飛ぶ斬撃を放ち援護する。
「くっ!! これではキリがないぞ!?」
「そうだな! 俺もそう思っていたところだ!!」
そう言うとセルイは、リリアンヌにわざと近づけさせ、攻撃を食らう。
深々と刺さるナイフ。リリアンヌの手を影で固定し、動きを封じる。
「割と痛いんだがな! 終いだ!!」
暴れるリリアンヌの首元に噛み付くと、セルイは血を吸い始める。段々と力が抜けていく彼女を支えると、気を失ったところで血を吸うのを辞める。
「ふぅ~。手こずったっスね!」
セルイはリリアンヌを寝かせると、
「……詩音。シャキっとしてほしいっスね! 相手は武器を持ってるんスよ?」
そう言われ詩音は小さく頷くと、
「……すまなかった。私は……操られてるのかも? と思ったら刃を振るえなかった。私は……騎士失格だな」
落ち込む彼女の肩を軽く叩くと、セルイは、
「さてと! リリアンヌに起きて貰うっスよ!」
そう言うと、トランクから何かを取り出した。
(本当にいつも持ち歩いているな。……邪魔ではないのか?)
「? どうしたっスか?」
「いや、なんでもない。それより、起こして大丈夫なのか? また攻撃して来るかもしれんぞ?」
詩音の言葉に、
「そう思って紐で拘束したっス。ま、血を吸った限りだと、大丈夫だと思うっスけど」
「お前……本当に便利だな」
その返事にセルイは頬をかくと、
「ま、真祖だからっスかね? とにかく、リリアンヌを起こすっスよ!」
取り出した気付け薬を嗅がせ、リリアンヌを起こす。
目を覚ました彼女は、周囲を見渡し、
「……ここは? 私は……」
困惑する彼女に、セルイが声をかける。
「えーっと、リリアンヌさん? オタク今まで何してたかわかるっスか?」
ゆっくりと目を見開くと、リリアンヌは、
「私は……あの男に会いに行って……それから、長い間、自分でなくなっていた……。そうよ! 光ちゃん! あの子は無事なの!?」
今までの事を思い出しながら、獅子堂の身を案ずるリリアンヌに、
「光ちゃんて。……家庭は様々っスけど……。ソイツなら市長を元気にやってるっスよ?」
その言葉に安堵したのか、リリアンヌは静かに息を吐き、
「そう。なら良いわ。それで? 私をどうする気かしら? あの男みたいに私を操る?」
「まさか! オレ達はそんなことしないっスよ!」
それを聞いた彼女は、
「どうやら長くなりそうね? 場所を移動しなくて?」
「そうっスね! 確かにここじゃ話づらいっス! しょうがない。オレん家に行くっスよ! はい! これ帽子!」
セルイが拘束を外し、リリアンヌの頭に帽子を被せる。その様子を確認すると、
「それじゃ、帰るっスよ! 詩音もいいっスね?」
突然話を振られた詩音は、慌てて反応する。
「あ、ああ! いいぞ!!」
(セルイの吸血行為は便利だな。操られてる彼女をあっさりと救うとは。……それなのに私は……)
「? 詩音?」
「いや、なんでもない! さ、帰るのだろう? 早くでんしゃに乗るぞ!!」
そう言って先を歩く彼女に続き、リリアンヌとセルイも歩き出した。




