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リリアンヌ

 スヤスヤと眠る詩音に安堵しながら、セルイは次の手を考えていた。


(さてと、どうするっスかね? 詩音は動けない。だが、悠長にはしてられない)


 深いため息を吐きながら、セルイはソファにゆっくりと座る。


(この家から出ずに、調べるか? どうやって?)


 頭をかきむしり、セルイは静かに唸る。


(う〜ん。ダメっスね。なんも思いつかん!)


 大人しく詩音の回復を待つしかない。そう結論付けると、セルイはキッチンに向かいコーヒーを作り出した。

 しばらくして出来たコーヒーをゆっくりと飲む。


「はぁ……。落ち着くっス。さてと、今日の新聞に何かないかなぁ〜と」


 しばらく溜まっていた新聞は、回収し、目を通していた。

 セルイは新刊を読み始めると、時間はあっという間に経って行く。


(そう言えば、こんな時間も久しぶりっスね。ここんところ詩音がいて賑やかだったから)


 そんな彼女は今、回復に努めている。静かな時間に少しだけもの寂しさを覚えながら、セルイは一日を過ごした。


****


 数日後


「世話をかけたな! セルイ!! もう大丈夫だ!」


 すっかり回復したらしい詩音に、セルイは頬をかくと、


「ま、良かったっスよ。大事にならなくて」


「ああ! 本当にな!」


 そう言いながら笑う詩音に、セルイは緊張した面持ちで聞く。


「それで? 記憶の方はどうなんスか? どこまで何を覚えてるっスか?」


「ん〜。そうだな……私は異世界から来た聖騎士で、閃光のブラックパールで……それで。それで。父上は南部聖司を名乗っている。だったか?」


 詩音の言葉にセルイは頷くと、


「うんうん。記憶の方は大丈夫そうっスね! ま、でも念の為! 悩める閃光のブラックパールにオレからのプレゼント!」


 セルイが取り出したのは、一冊のノートと鉛筆だった。


「それは?」


 首を傾げる詩音に、


「こっちはノートっていう紙の束っス! んで、この鉛筆ってのが文字を書く道具っスね! コレで日記を書くんスよ!」


 セルイがここ数日で考えた事だった。詩音の記憶を維持出来なくなる事を想定して、日記という記録を残させる。そうすれば、後から読み直せばいい。その意図を受け取ったのか、詩音は素直にノートと鉛筆を手に取った。


「わかった。 早速書いてみるとしよう」


 そう言うと、詩音は、ベッドルームにあるサイドテーブルに向かい、日記を書き始めた。その様子を確認したセルイは、リビングに引っ込んだ。


(詩音も回復した事だし、そろそろまたあの跡地に行きたいんスけどね……)


 自分に焦るなと言い聞かせ、セルイはテレビを見つめていた。

 しばらくして、一通り書き終わったのか、詩音がリビングにやって来た。


「む? てれびか?」


「そうっスよ〜。やることなかったんで」


 そう言うと、詩音は、


「もしや、私を待っていた……のか? すまなかった! 割と色々思い出せてな! 夢中になってしまったのだ!」


 そう言って頭を下げる彼女に、セルイは優しく言う。


「いいんスよ。気にしない気にしない!! それより、体調が良さそうなら、もう昼だけど……聖リントの跡地まで行ってみません?」


 セルイの提案に、顔を上げると、


「ああ! 行こう!」


****


 しばらくしてあの跡地に着いた。相変わらず人通りがなく、不気味な程静かだった。

 念の為いつものプレートを立て、跡地に入る。


「さてと! どうしますか!」


「なんだ? 策があった訳では無いのか?」


 詩音の言葉に、苦笑いを浮かべると、


「色々考えたんスけどね……。どれもイマイチだったんスよ……。詩音の方こそ何かないんスか?」


 そう言われ、詩音は少し考えた後、


「……この角の欠片に投影魔法をかけてみるのはどうか? この魔法は残留思念を読み取る魔法だ。この跡地で使えば、数日前のよりも精度の高い情報が得られる……かもしれない」


 自信なさげな詩音だが、セルイは、


「オレもそう考えてたっス! その手で行きますか!」


 詩音は頷くと、剣を地面に突き刺し、呪文を唱え始めた。

 その様子を見守りながら、セルイは考える。


(詩音の前では言わなかったっスけど、今まで調べた事全てが南部聖司に繋がって行っているっス。やはり、あの男には何かあるのかもしれない)


 そうこうしているうちに、魔法が展開されたらしい。周囲が暗くなり、映像が映し出された。

 その映像は、詩音の父、南部聖司が神さまとして崇められているところから始まった。神さまとしての職務をこなす聖司に、一人の帽子を深く被った女が近寄って行く。その女は、隠し持っていたナイフで、聖司に襲いかかろうとした。

 だが、先に気づかれ、ナイフを奪われる。帽子がはずれ、特徴的な角が現れた。

 それを見た聖司は、聖剣から魔法を放ち、女を拘束。無抵抗になった女に、何かを付けた。そして、女は膝まづいた。

 そこで映像は終わった。

 詩音がセルイの方へ向き、二人は顔を見合わせる。


「……南部聖司とリリアンヌが繋がったっスね」


「ああ。……あの様子だと、リリアンヌはちち……あの男の元にいると考えるのが妥当だろうな」


 二人が静かになった時だった。


「……ええ。そうなの。私はあの男に屈服させられたわ」


 二人が振り向くと、そこには、涙を流しながら、ナイフを構えるリリアンヌがいた。


「な!? また気配を感じなかっただと!?」


「詩音! 驚いてる場合じゃないっス!!」


 慌てて攻撃態勢に入る二人に、リリアンヌは、


「そうよ。構えて。そして、お願い。私を……殺して!!」


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