記憶
「なんだと? あの跡地か!?」
驚く詩音に頷くと、
「こりゃまた、行ってみるしかないっスね〜」
「だが、今日はもう……」
暗くなって来たぞ? という詩音に、
「そうっスね! 今日はここまで!! 晩飯食って寝るっスよ!」
「私はしゃわーも浴びたいぞ!」
「んじゃ、オレが料理してる間に入って来たらどうっスか?」
セルイの提案に、少し考えた後、
「いいのか? では遠慮なく」
そう言うと詩音はバスルームへと向かった。
「さてと、シャワーだけならすぐっしょ。何にしようかなぁ」
考えながら、手を動かす。出来たのは野菜たっぷりのシチューだった。
思ったほか、結構な時間が経っており、詩音がまだバスルームから出て来ていない事に気づく。
(何してんスかね? まさか、何かあったか!?)
急いでバスルームに行く。
「詩音!! 大丈夫っスか!? 詩音!!」
声をかけるが反応がない。開けるっスよ!と声をかけ、扉を開ける。すると、そこにはぐったりしている詩音がいた。
「詩音!!」
慌てて駆け寄り、抱き起こす。
「ん。……すまない。急に目眩がして……」
「のぼせたんスか!? いや、違うな! 熱っぽいし!! なんで言わなかったんスか!」
そう言うセルイに詩音は、
「……すまない」
それだけ言うと、ぐったりしたまま動かなくなってしまった。幸い、タオルで拭くことは出来たらしく、身体にタオルを巻いていたため、そのままベッドルームに運ぶ。
そして、セルイは少し悩んだ末、この街の闇医者に連絡した。
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「おそらく疲れが出たのでしょう」
数十分後、現れた闇医者はそう言うと、詩音に的確な処置を施していく。
「しかし、この若さで過労とは。余程の事ですよ? 気をつけて下さい」
「……はい」
「数日は安静にさせて下さい。いいですね?」
それだけ言うと、闇医者は代金を手に取り去って行った。
安心したセルイは、ため息を吐き出し、横になっている詩音をみる。バスローブを着せた彼女は、スヤスヤと眠っていた。その顔に安堵すると、
(過労か……失敗したな。俺のペースで色々行かせすぎた。謝るのは……俺の方だ)
「すまない。詩音」
そう言って優しく頭を撫でると、セルイはキッチンに向かい料理を明日用にするべく手を動かした。
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翌朝、目を覚ました詩音は、ゆっくりとベッドから起き上がる。
「? これは? 私は一体?」
困惑する詩音に、セルイが声をかける。
「起きたっスか? 詩音。昨夜倒れたんスよ?」
そう声をかけられ、詩音は不思議そうな顔をする。
「……セルイ? だよな? 私は……一体?」
「バスルームで倒れたんスよ! っていうかオレの名前が今更どうかしたんスか?」
セルイの問いに、詩音は首を傾げながら、
「いや……なんだか頭がふわふわしていてな?」
彼女自身も困惑しているらしい。セルイは問い詰めるのをやめ、
「とにかく! 数日は安静に!! いいっスね!?」
それだけ言うと、セルイはキッチンへ向かい、昨夜作ったシチューを温めに行った。
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ベッドでの食事を終え、大人しく横になる詩音に、
「んじゃ、何かあったら呼んで! オレはリビングにいるんで!!」
詩音が頷くのを確認すると、セルイは笑顔になり、
「心配ないっス! すぐに良くなるから!!」
明るく言うと、セルイはリビングに向かった。ソファに座り、深く息を吐く。
「はぁ〜。これからどうするっスかね? 詩音は動けないし……。かと言って時間をかけるとその分ロスっス。う〜ん!」
頭をかくセルイ。その時、詩音が呼ぶ声がした。
慌ててベッドルームに行くと、
「セルイ! なぁ! 私はなんでここに住んでいるんだ? 何か目的があったはずなんだが……思い出せないのだ!」
涙目になりながら言う詩音に、
「詩音。落ち着くっス! 今覚えてる事は?」
「えっと……どこから来た? それで……父上と会って……私は……私は……篠楽木詩音?」
セルイは首を横に振ると、
「オタク……いや、お前は閃光のブラックパール。異世界から来た聖騎士だ」
「……ああ。そうだな。そうだった。私は、閃光のブラックパールだ!」
セルイは頷くと、詩音を横にさせ、
「んじゃ! 今の閃光のブラックパールの仕事は、良く寝て食べる!! いいっスね?」
静かに頷く彼女の頭を撫でると、
「……子供扱いするな」
その様子に安心したのか、手を離すと、セルイは再びリビングに行く。
(それにしても、急速に詩音の記憶が薄れてるっスね……。コレは悠長な事してらんないかもな……)




