血
「いい加減、こういう展開はあきたんスよ!!」
そう言ってボーガンを南雲に向けて放つセルイに、それを魔剣で叩き落とすと南雲は、
「そうですか! 芸がなくてすみませんね!」
一直線にセルイ目掛けて切っ先ごと迫ってくる。それを間一髪左に避けてかわすと、振りかぶってブレード部分で斬りつけようとする。
が、それを魔剣を垂直に持ち、防がれる。
睨み合い、互いに力で刃同士押し合う。
「!! オタクの目的はなんスか!?」
「そんなの、ノスフェラトゥが望むことをしたいだけですよ!!」
そう言って一旦剣から力を抜き、セルイをよろめかせると、剣先をセルイに向けて振りかざす。
それを床に転がりながらかわし、ボーガン部分を南雲に突きつける。
「動くと死ぬっスよ? さぁ、魔剣から手を離せ!!」
至近距離でそう言われ、南雲は、
「……いいでしょう。なら、僕が死ぬまでです!」
そう言うと南雲は、自分で自分の首をはねた。
「!?」
「な!?」
見守っていた詩音達もこの展開に驚きを隠せない。
綺麗に切れ、首と胴体が完全に切り離された。
その状態で、魔剣を持った右腕が動き出す。
「!! そう言うことっスか!!」
「そう言うことってどういうことだ!?」
詩音の突っ込みに、いつの間にか二人と合流していたレオンが変わりに答える。
「恐らくですが、彼は魔剣ノスフェラトゥに乗っ取られていたのでしょう。目的はただ一つ。創造主であるセルイ様の血を獲てさらに強くなる事。……兵器というのは強くてなんぼですからね。つまり今の彼の肉体は剣そのもの。動けば首などなくても良いということなのでしょう」
血を首元から噴水の如く噴き出しながら、南雲だったものはセルイ目掛けて剣を振るってくる。
「〜! 自分が造っといてなんだけど、厄介な武器っスね!! 力を求めるなんて機能、つけた覚えないっつーの!!」
愚痴りながら応戦するセルイは、
(仕方ないっス。剣を握っている右手を斬り落とすしか!!)
右手目掛けてブレードを振るう。が、それに気づいたのか、魔剣は右手を庇うように、左手を差し出し、防ぐ。
「くっそ! 剣の分際で、俺と渡り合おうというのか!! 百年も早いわ!!」
そう言うと、セルイは身体から影を出し、南雲の胴体を抑え込む。
「終わりだ!!」
魔剣を持つ右手に向かってブレードを振りかざす。が、
「!?」
魔剣からも影が伸び、右手をコーティングする。
「コレが魔剣ノスフェラトゥの力!? なんと禍々しい!!」
詩音の実況に、セルイはツッコむのも忘れ、
「くっ!! 生意気なんスよ!!」
南雲の右腕の付け根に噛みつき、血を吸う。
胴体から血が抜け、だらりと垂れた胴体に向け、ボーガンで関節部分を狙い撃ち、動きを封じる。
そして、動けなくなったのを確認してから、右腕ごとブレードで斬り裂いた。
右腕一本になった魔剣ノスフェラトゥは、抵抗を辞め、右手から離れ落ちた。
「ふぅ〜!! やっと終わったっス! あ、みんな来ちゃダメっスよ! この魔剣に乗っ取られるっス!!」
そう言われ、駆け寄るのを辞める三人を確認すると、魔剣を丁重に布にしまう。
「よし! しまったっス! もう大丈夫っスよ!」
****
「なぁ? 本当にこの魔剣を、人狼の長殿に渡しても良いのか? また今回みたいな事が起こったらどうするんだ?」
騒ぎの後、レオン達と別れたセルイと詩音は、一旦隠れ家に寄って準備を整え、シャッター街にやって来た。
「多分大丈夫っしょ! Jはオレを売るようなヤツっスけど、どこまでいいのかラインは分かる男……のはずっスから」
「はずというのが引っかかるが……」
不安げな詩音に頭をかきながら、
「まぁなるようになるっしょ! おーいJ!! いるっスか!?」
静まり返るシャッター街に、セルイの声が木霊する。
「……留守か?」
「いや、そんなはずは……」
二人して首を傾げたその時、Jが現れた。
身体から血を流した状態で。
「!? J! 何があったっスか!?」
慌てて駆け寄ると、セルイに身体を預け、浅い呼吸をしながら、Jが言う。
「ぐはっ! ……やられた。俺様とした事が……。真祖の王。……気をつけろ。……ヤツらの狙いはお前達だ。……」
そう言うと、Jの身体から力が抜けていく。
「J!!」
「死んだのか……?」
詩音の問に、セルイがJの心臓の音を聞く。
「いや、まだ生きてるっス!」
セルイがそう言った瞬間、音もなく、
「であれば、後は我らにお任せ下され。真祖の王よ」
黒いフードを被った老けた男が現れそう言った。
「! オタクは、確か人狼の!」
「はい。J様の側近、Nでございます。我らの王の身を案じて頂き恐縮でございます」
Nはそう言うとJの近くにまで寄り、
「この傷であれば、我らの技術でなんとかなるでしょう。……して。不躾ながらお願いが」
「……Jにここまでの傷を負わせた犯人を捕まえてほしい……っスか?」
Nは静かに頷くと、
「お願いできますかな?」
セルイがJをNに渡すと、
「いいっスよ! ただ……オレも商人。条件があるっス」
「はい。なんですかな?」
セルイは一呼吸置くと、
「オタクら人狼の技術で、異世界から来た人間を元の世界に返せるかどうかやってほしいっス!」
「!! セルイお前!!」
ずっと黙っていた詩音が、驚きの声を上げる。
「言ったっしょ? 詩音が元の世界に帰れるよう協力するって!」
笑顔を向けると詩音が泣きそうな顔で、
「お前! お前というヤツは!!」
それだけ言うと、そっぽを向いてしまった。
それに苦笑いを浮かべると、セルイは、Jの手についていた血を舐める。が、
「……ん? どういうことだ?」
セルイが困惑の表情を浮かべる。
「どうされましたかな? 真祖の王よ」
Nに促され、セルイが言う。
「……血からなんの情報も得られないっス!」




