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ここは死地に非ず

「さて、参るか」


 義顕がそう言うと、配下の兵達から義顕に取って意外な返事が返って来た。


「我等、ここを死地と思い定めておりますれば、お任せ下され」


 兵達の言葉を聞き、義顕は顔を顰めた。


「馬鹿者。このような戦で無駄死にするでないぞ。

お主等の死に場所はここではない。まだまだ先よ。

もちろん儂もまだまだ死なんぞ」


 そう言うと今度は顔を綻ばせ、屈託無く笑う。

その顔を見た兵達も同じく笑顔になった。


 兵達の緊張は解け、しかし気は緩んでいないと言う、敵に取っては非常に厄介な部隊が誕生した。


「さあ、各々手柄を立てよ。ただし兵の命を取るのは最小限に、己の命を守るためのみにせよ。包囲に穴を開け、そちらに追い立てて逃がせ。

儂等が狙うは大将首じゃ」


「はっ!」


 義顕の下知には疑問点がある。何故敵を殺さず逃がすのか。

誰もがそう思ったであろうが、それを口に出す者はいない。

皆、どんな物かはわからない義顕の考えに従った。


「よし。ではそろそろ行くか」


「かかれ─!」


 辺りに馬蹄の音が響き渡った。

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