民
やはり何かお考えであられた
そう確信した近習に義顕が言った。
「軍を二つに分ける。そちは一方を率いて敵の小荷駄隊を襲い、物資を奪え。
ただし、できる限り無駄にせずにじゃ。
奪った物資には手を付けずにそのまま守れ。よいな」
「はっ。よろしければ、その後の策をお聞かせ願えませぬか?」
義顕は少し迷ったが、策を共有することにした。
「よかろう。近うよれ」
間者を警戒し、顔を寄せる。
もっとも、敵にこの状況で間者など送る余裕も、更なる伏兵を見破る器量もあるとは思えないが、近習は敢えて主の警戒に乗った。
「良いか。まず、包囲に穴を開けておき、そこから敵を逃がす。
そうなれば、敵は城まで逃げるじゃろう。儂等はそれを追撃し、籠城させるのじゃ」
「その際に兵糧を奪っておけば、城を囲まれて、しかも収穫後で刈る稲の無い敵の兵糧はすぐに尽きるはずじゃ」
「敵を殲滅せず逃がし、奪った兵糧を使わないのは、戦後のためじゃ。
兵の大半は農民じゃ。武器を捨てる者は不問にすると言えば、降る者も多いじゃろう。
その者等はそのまま元の村に住まわせる」
「土地だけ増えたところで、耕す者が居らねば意味が無い。
有事の際の兵も必要じゃ。要は二階堂の民がそのまま田村の民に変わるだけよ」
笑いながらそう締めくくった義顕に、近習は感嘆の声を上げ、
「恐れ入りましてございます。それでは某は策に従い軍を進めます」
そう言うと颯爽と陣を後にした。




