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エヴァーアフター〜僕らの旅は続いていく〜  作者: 令和の猿


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8/11

第三話 いつか旅立つその日まで②

グレンとエレナ、そしてルシアンが顔を見合わせる。

やがてグレンがシンの前に立った。

「黙ってたことは良くない。分かるな、シン」

「……うん。ごめん、父ちゃん」

「ただ、お前たちにも何か言えない理由があるんだろ」

シンは少し迷ってから、小さく頷いた。

「……うん」

「その理由まで話せとは言わん」

「え?」

シンが顔を上げる。

「でもな、シン。何かあったときに、自分たちだけでどうにかしようとするな」

グレンは真っすぐシンを見る。

「俺でも母ちゃんでもいい。ちゃんと大人に相談しろ」

「…………」

「前にも言っただろ。何かあったら俺には言えって」

「……うん!」

シンは今度はしっかりと頷いた。

話が一段落したところで、エレナがリリィを見る。

「リリィちゃん、っていうの?」

「う、うん」

「こっちに来て」

エレナの優しい眼差しに、リリィの警戒も少しずつ解けていく。

「抱っこしてもいい?」

「うん、いいよ」

エレナは両手でそっとリリィを持ち上げると、壊れものを扱うように優しく抱き寄せた。

「可愛いわねぇ。私、妖精なんて初めて見たわ」

リリィは少し照れたように頬を赤くする。

「そ、そうなんだ……」

グレンが再びシンを見る。

「それで、今日はこの子を紹介しに来ただけじゃないんだろ?」

「うん。実は……」

シンはエレナに抱かれているリリィを見る。

「リリィも一緒に夏祭りへ連れていってあげたいんだけど……」

「人目が気になる、ってところか?」

「……うん」

するとルシアンが口を開いた。

「シンくん。妖精という存在自体は、大抵の人なら本や昔話で知っているよ」

「じゃあ、リリィも普通に外に出ていいの?」

「妖精だから外へ出ちゃいけない、なんてことはないさ」

ルシアンは柔らかく笑った。

「ただ、実際に妖精を見たことがある人は少ない。さっきみたいに、珍しがられることはあるだろうね」

「……やっぱり隠れた方がいいのかな?」

シンが尋ねる。

ルシアンは少し考えたあと、首を横に振った。

「ずっと隠れて暮らす必要はないと思うよ」

そして、今度はリリィへ視線を向けた。

「ただし、リリィ。世界には珍しいものを、自分のために利用しようとする人間もいる」

先ほどまで穏やかだった声が、少しだけ真面目になる。

「だから知らない人についていったり、一人で遠くまで行ったりするのは避けた方がいい」

「…………」

リリィがゆっくり頷く。

「分かった」

「少なくともミレア村なら、そこまで心配はいらないと思う」

ルシアンが笑う。

「僕たちが昔から知っている人ばかりだ。それに――」

隣にいるグレンを見る。

「何かあったら、この男もいるしね」

「俺だけに押しつけるな」

「頼りにしてるんだよ」

「まったく……」

二人のやり取りを見て、シンは笑った。

「じゃあ……リリィもお祭り行っていいんだね!」

「あぁ。何かあったら、すぐ俺たちに言ってこい」

グレンの言葉に、シンの顔がぱっと明るくなる。

「ありがとう、父ちゃん! ルシアンさん!」

「良かったね、リリィちゃん」

エレナが微笑む。

「うん! いっぱい食べよっと!」

「ふふっ。食いしん坊なのね」

「あっ……」

リリィの顔が赤くなる。

それを見たシンが指を差して笑った。

「リリィ、顔赤くなってる!」

「う、うるさい!」

「照れてるー!」

「もう! シン、言わないでよー!」

「あらあら、仲良しね」

エレナは二人を見て楽しそうに微笑んでいた。

「パパ、いつまでこっちにいるの?」

今度はノアがルシアンへ尋ねる。

「うん? しばらくはいるつもりだよ。どうしたんだい?」

「別に。聞いただけ」

「そうかい?」

ルシアンは嬉しそうにノアへ歩み寄ると、その頭を優しく撫でた。

「少し見ない間に大きくなったね、ノア」

「な、なにしてるの! こんなところで!」

「ん? 娘の成長を喜ぶのに場所なんか関係ないじゃないか」

「そういうことじゃなくて!」

「ハハハッ! ルシアン、お前も変わらないな」

グレンが声を上げて笑う。

「だって、久しぶりに娘に会えたんだぞ?」

「だからって今しなくても!」

「恥ずかしかったかい?」

「もう! パパ!」

シンはそんな二人を見ながら笑った。

「ノアのパパって、ノアのこと大好きなんだね」

「シンまで言わないで!」

「ふふっ」

エレナまで笑う。

リリィはそんな大人たちとノアを交互に眺めていた。

「……人間の家族って、楽しそうだね」

その言葉に、エレナが優しく笑う。

「楽しいことばっかりじゃないけどね」

少しだけ考えてから続ける。

「でも、一緒に笑ったり、怒ったり、心配したりするのも家族なのよ」

「そっかぁ……」

リリィはどこか嬉しそうに笑った。

◇

「リリィ、そろそろ行こうか?」

「うん! いこいこ!」

そう言うと、リリィはいつもの癖でシンの鞄へ入ろうとした。

「リリィ」

「なに?」

リリィが振り返る。

シンは笑った。

「今日からはもう、隠れなくていいんだよ」

「あっ……」

リリィは鞄とシンを交互に見る。

ほんの少しだけ、動きが止まった。

やがて――。

「……うん!」

嬉しそうに笑う。

「そうだったね!」

そして鞄の中ではなく、シンの肩へちょこんと腰掛けた。

「あら、リリィちゃんは飛んでいかないの?」

エレナが尋ねる。

「だって、飛ぶのだって疲れるもん」

「ふふっ。そう。じゃあ気をつけていってらっしゃい」

「うん! いってきます!」

シンは元気よく答えた。

「お邪魔しました。パパも、またね」

「あぁ。気をつけてな、ノア」

「リリィちゃんも楽しんできてね」

「うん!」

三人は家をあとにした。

外へ出てしばらく歩く。

「はぁぁぁ……」

シンは大きく息を吐いた。

「シン、大丈夫?」

肩に座ったリリィが、心配そうに顔を覗き込む。

「緊張したよー……。だって父ちゃんだけに話すつもりだったのに、みんないるんだもん」

「私も。まさかパパが帰ってきてたなんて」

「ねぇ、ノア?」

「なに?」

「ノアのパパって何してるの?」

リリィが首を傾げる。

「私のパパは学者なの」

ノアは少し考えながら話す。

「世界を回って、いろんな国へ行って、いろんなものを調べてるの。だから、家にいないことも多いんだ」

「そうなんだ」

リリィはノアを見る。

「寂しくない?」

「うーん……」

ノアは少しだけ考えた。

「前は寂しいときもあったけど……今は平気かな」

「なんで?」

「だって、シンとリリィがいるもん!」

「ノア~!」

リリィが勢いよくノアへ飛びつく。

「わっ! どうしたの、リリィ!」

リリィは何も答えず、ぎゅっとノアに抱きついていた。

「もう……」

そう言いながらも、ノアは嬉しそうに笑っている。

「僕もいるよ!」

「シンは今言ったでしょ!」

「そうだけど!」

三人は笑いながら、祭りの行われている大通りへ向かって歩いていった。

◇

やがて、辺りを行き交う人が増えてきた。

「ノア! リリィ! もう着くよ!」

「わぁぁぁ……!」

リリィの瞳がきらきらと輝く。

通りの両側には、いくつもの屋台が並んでいた。

肉が焼ける香ばしい匂い。

焼き菓子の甘い香り。

どこからか聞こえる楽器の音。

楽しそうに話す村人たちの声。

普段とは違うミレア村が、三人の前に広がっていた。

「……なんか……いい匂いがいっぱいする」

リリィの口元から、つーっとよだれが垂れた。

「リリィ! よだれ!」

「あっ……!」

リリィは慌てて口元を拭く。

シンの服で。

「なんで僕の服で拭くの!」

「だって、リリィの服が汚れるもん!」

「だからって僕の服で拭かないでよ!」

「いいじゃん! ちょっとくらい! ケチ!」

「言ったなぁー!」

「シ、シン……」

「何? ノア?」


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