↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
7/22

2-4 天気の話

挿絵(By みてみん)


【今回の見どころ】


「もっとお話ししたいのはやまやまなんですが……」

美月が精一杯紡いだ拒絶のサインを、あまりにも都合よく「恋の証拠」へ変換してしまう一雄。

偶然と深読みが最悪の形で噛み合ったその夜、一雄は美月の言葉をきっかけに、1枚のラブレターを自宅の玄関ドアへと直接「配達」する。

届いてしまった歪んだ純愛。震える指先でそれを見つめる美月。

ついに一人の男の暴走が、少女たちによる前代未聞の「対策会議」の引き金を引く――! 第二章、堂々完結!



【作品紹介】


本作は、noteで「運命の人〜ストーリー〜」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。



一人の男がバイト先のハンバーガーショップの店員(実は地下アイドル『UVA48』のセンター・美月)への純愛を暴走させ、周囲を巻き込む大騒動へと発展していく、切なくも狂気的な音楽連動型・現実世界恋愛小説です。


【公式連動楽曲】

iti視点ソング『運命の人〜暴走〜』の歌詞世界と完全シンクロ!!

一雄の脳内で運命の歯車が激しく回り出す瞬間を、ぜひメロディと共にお楽しみください!


【2作連動の仕掛け】


主人公「宇場一雄」は、別作品『フーデリオン』の主人公と同一人物です。あちらの作品に登場する「喉に傷があるバイク屋のオヤッサン」の正体とは? そして店に飾られた「一輪の赤い薔薇」の真相とは……?


二つの世界線が交錯する時、本当の『運命』が紡がれます。



【連動楽曲】

YouTube・noteにて順次公開!

①iti視点「運命の人〜暴走〜」

②UVA48視点「運命の人〜完全拒絶〜」



激しく狂おしい音楽の予感を胸にお楽しみください。


(リンクは後書きの下にあります)

【2-4 本文】


「今日は、晴れてますね!」

一雄は、練習してきた言葉を口にした。


美月は、少し驚いた顔をした。

「えっと……そうですね」


「晴れてますよね?」

「はい。晴れてますね」


一雄の胸が弾んだ。

会話が続いている。

天気の話が、きちんと成立している。


「明日は雨ですか?」

「どうでしょうね。ちょっと分かりません」

美月は、困ったように笑った。


一雄は、次の話題を探した。

しかし、頭の中で練習していた言葉が、うまく出てこない。その沈黙に耐えきれなくなったのか、美月が口を開いた。


「あの……もっとお話ししたいのはやまやまなんですが」


一雄の心臓が、大きく跳ねた。


「商品が冷めてしまいますので、そろそろ配達に行かれたほうが……」

美月は、できるだけ柔らかい声で続けた。

「そのほうが、お客様も待たずに済みますので」

美月にとっては、会話を終わらせるための言葉だった。


しかし、一雄には違って聞こえた。


「もっとお話ししたい」

その言葉だけが、頭の中で何度も繰り返される。


「私も、美月さんともっと話がしたいです!」

「えっ……」


美月の表情が固まった。

一雄は、嬉しそうに続ける。


「もっと話しましょう。僕も、そう思っていました」


美月は、言葉を失った。

ここまで言えば、さすがに意図が伝わると思っていた。


商品が冷める。

配達へ行ってほしい。

今は話を終わらせたい。

それを、できるだけ傷つけないように伝えたつもりだった。

しかし、一雄は、まったく別の意味に受け取っている。


「そうですね……」

美月は、かろうじて笑顔を作った。

けれど、その笑顔は、いつもの接客スマイルとは少し違っていた。戸惑いと、わずかな不安が混じっている。


一雄は、その変化に気づかなかった。

「それでは、配達に行ってきます!」

「はい……お願いします」

一雄は商品を抱え、店を出た。


バイクにまたがると、口元が自然にゆるんだ。

「こんなにも会話ができた」

そして、もう一つ。

「もっと話がしたいって言ってくれた……」


一雄の中で、何かが確かなものになった。

美月も、自分と同じ気持ちなのだ。

まだ、はっきり言葉にはしていないだけだ。


帰り道、一雄は何度もその会話を思い出した。

美月の声。

美月の笑顔。

美月の戸惑った表情。

それらすべてが、一雄には恋の証拠に見えた。


挿絵(By みてみん)


それからも、一雄は慎重に振る舞った。

美月を困らせないように、話しかける回数を減らした。話したい気持ちを抑え、必要最低限の会話だけにする。


それでも、どうしても我慢できない日には、天気の話をした。


「今日は暖かいですね」

「そうですね」

「雨ですね」

「そうですね」


美月は、いつも返事をしてくれる。

最後には笑顔も見せてくれる。

「なんて優しい人なんだ」

一雄は、そう思った。


その一方で、美月は少しずつ疲れ始めていた。

何を話しても、一雄は自分に都合のいいように受け取る。


笑顔を向ければ、好意があると思われる。

会話を終わらせようとすれば、もっと話したいと思われる。

美月は、どう接すればいいのか分からなくなっていた。


そんなある日。

美月は、店の奥で同僚たちと話をしていた。


「美月さんって、可愛いから学生時代にモテたんじゃないですか?」

「そんなことないですよ」

「またまた。ラブレターとか、たくさんもらったでしょ?」


美月は、少し照れたように笑った。


「ラブレターは、もらったことないです」

「えー、意外!」

「でも、ラブレターっていいですよね」


美月は、冗談めかして続けた。

「一回くらい、もらってみたかったなぁ」


その会話を、一雄は聞いていた。

商品を受け取るため、店内に立っていた。

美月の姿は見えなかったが、声は聞こえていた。


「ラブレター……」


一雄は、胸の中でその言葉を繰り返した。

美月は、ラブレターが欲しい。

美月は、自分の気持ちを伝えてほしい。

そして、自分からの手紙を待っている。

一雄は、そう解釈した。


配達を終えたあと、一雄はバイクを文具店へ向けた。

便箋を選ぶ。

封筒を選ぶ。


何度も書き直し、夜遅くまで手紙を書いた。

最後に、一雄は自分の連絡先を書き添えた。

そして、手紙を持って美月のマンションへ向かった。


建物の入り口を通り、エレベーターに乗る。

目的の階で降りる。

廊下には、誰もいなかった。

一雄は、美月の部屋の前に立った。


自分の心臓の音が、やけに大きく聞こえる。

これを渡せば、二人の関係は大きく変わる。

美月は、きっと喜んでくれる。

驚いて、照れて、そして自分に連絡をくれる。


一雄は、そう信じていた。

手紙を、玄関ドアの郵便受けへ差し込む。

そして、誰にも見られていないことを確認すると、足早にその場を離れた。


部屋へ戻る途中、一雄は何度も振り返った。

美月がドアを開けるかもしれない。

手紙を見つけるかもしれない。

すぐに連絡が来るかもしれない。


一雄は、期待に胸を膨らませていた。


翌朝。

美月は、出勤するために自宅のドアを閉めようとしていた。

そのとき、玄関ドアの郵便受けに、白い封筒が挟まっていることに気づいた。

「……手紙?」


美月は、封筒を手に取った。

宛名には、こう書かれている。


「運命の人、美月さんへ」


美月の胸が、ざわついた。

集合ポストではない。

自宅の玄関ドアについている、小さな郵便受けに直接入れられている。


「どうして……?」

美月は、廊下を見回した。

誰もいない。

静まり返った廊下に、自分の呼吸だけが響いているように感じられた。


恐る恐る、封筒を開ける。

中には、一枚の便箋が入っていた。


『美月さんへ。


初めて美月さんに会ったときから、僕は運命を感じていました。


そして、あの夜、あなたの部屋の前で再会したことで、その運命は確信に変わりました。


夜空に浮かぶ月のように美しい美月さん。

僕は、あなたの運命の人です。


よかったら、こちらに連絡してください。

美月さんの運命の人、itiより』


美月の指先が、震え始めた。

あの夜のことを知っている。

自分の部屋番号を知っている。

そして今、自宅の玄関先まで来ている。

仕事で知った住所を、私的な目的で使っている。


美月の中で、何かが切り替わった。


今までは、少し変わった人だと思っていた。

目を合わせないのに、こちらを見ている人。

天気の話を繰り返す人。

自分の笑顔を、何か特別なものだと思っている人。


それでも、配達員としては何もしてこなかった。だから、考えすぎないようにしていた。

けれど、これは違う。


「……これは、ダメだ」

美月は、便箋を握りしめた。


「完全に無理……」

初めて、はっきりと言葉にした。


美月は急いでスマートフォンを取り出した。

連絡先の中から、UVA48のグループチャットを開く。


UVA48は、美月が所属する七人組のアイドルグループだ。普段はステージで歌い踊る仲間たちだが、今夜は違う。


美月にとって、彼女たちは同じハンバーガーショップで働く仲間であり、ステージをともにするメンバーでもあった。


困ったときには相談できる、大切な友人たちでもある。


そして、美月は短いメッセージを入力した。

『みんな、緊急相談があります』

送信すると、すぐに返信が届いた。

『どうしたの?』

『何かあった?』

『まさか、あの配達員?』


美月は、もう一度、手紙に目を落とした。

『美月さんの運命の人、itiより』

美月は小さく息を吸った。


『はい。あの人です』


その日の夜。

UVA48のメンバーが集まることになった。


画像

白いテーブルの上に、一雄からの手紙が置かれていた。美月は、その手紙から少し離れた場所に座っている。


もう、一人では抱えきれなかった。

「一雄さんを、どうすればいいと思う?」

美月がそう尋ねると、七人のメンバーが顔を見合わせた。


やがて、星野美咲がゆっくりと口を開いた。

「これは……対策会議が必要だね」


その言葉を聞いた高橋愛梨が、勢いよく手を挙げた。

「それなら、名前をつけようよ!」

「名前?」

 美月が聞き返す。

「そう! プロジェクト名!」


愛梨は、テーブルの上にあったペンを手に取った。

そして、白い紙に大きく書いた。

「プロジェクト・完全拒絶!」


田中莉子が、すぐに突っ込んだ。

「名前が物騒すぎない?」


水野涼香は、手紙を見つめながら冷静に言った。「でも、必要な対策だと思う。美月が自宅の住所を知られている以上、曖昧な対応は危険かもしれない」


桜井結衣が、美月の肩にそっと手を置いた。

「美月、怖かったよね」


美月は小さくうなずいた。

「うん……。もう、あの人とは関わりたくない」


小林ひなたが、手紙を指差した。

「でも、この手紙の『運命の人』って、自分で書いてるんだよね?」

「そうなの」

「すごい自信だね……」

中村美月は、疲れたように息を吐いた。


テーブルの上に置かれた一枚の手紙。

それは一雄にとって、愛を伝えるための大切なラブレターだった。

しかし、美月にとっては、もう関わりたくない相手からの、恐怖の証拠だった。


星野美咲が、紙の中央にタイトルを書いた。

「宇場一雄・完全拒絶作戦会議」


その夜、UVA48の作戦会議が始まった。



【第二章 〜完〜】

【第三章 3-1へ続く】

第7話をお読みいただきありがとうございました!

明日の同じ時間に、第8話 第三章「3-1 一か月の距離」を投稿予定です。お楽しみに!


少しでも面白いと思ってくださったら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】でのポイント応援や、ブックマーク登録をぜひよろしくお願いいたします!


【主題歌のお知らせ!!】

主題歌は2つ 別々の視点から作詞しました!

①iti「運命の人〜暴走〜」

②UVA48「運命の人〜完全拒絶〜」


アプリから閲覧している方はお手数ですが

YouTube・noteから「なおパパ」で検索をお願いします!!


▼▼▼このアイコンが目印▼▼▼

挿絵(By みてみん)


サイトから閲覧している方は

▼▼もっと下に楽曲・noteリンクがあるよ▼▼

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。