2-3 運命の鍵
【今回の見どころ】
効率も売上も捨て、ただ「美月に繋がるきっかけ」を求めて3時間。
ついにスマートフォンの画面に表示された、運命のハンバーガーショップからの配達依頼!
「これは運命の鍵だ」と胸を高鳴らせ、何度も会話の練習を繰り返しながら店へと滑り込む一雄。
しかし、店内のカウンターに彼女の姿はなく、焦った一雄が放った一言が、周囲の空気をピキリと凍らせていき――!?
【作品紹介】
本作は、noteで「運命の人〜ストーリー〜」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。
一人の男がバイト先のハンバーガーショップの店員(実は地下アイドル『UVA48』のセンター・美月)への純愛を暴走させ、周囲を巻き込む大騒動へと発展していく、切なくも狂気的な音楽連動型・現実世界恋愛小説です。
【公式連動楽曲】
iti視点ソング『運命の人〜暴走〜』の歌詞世界と完全シンクロ!!
一雄の脳内で運命の歯車が激しく回り出す瞬間を、ぜひメロディと共にお楽しみください!
【2作連動の仕掛け】
主人公「宇場一雄」は、別作品『フーデリオン』の主人公と同一人物です。あちらの作品に登場する「喉に傷があるバイク屋のオヤッサン」の正体とは? そして店に飾られた「一輪の赤い薔薇」の真相とは……?
二つの世界線が交錯する時、本当の『運命』が紡がれます。
【連動楽曲】
YouTube・noteにて順次公開!
①iti視点「運命の人〜暴走〜」
②UVA48視点「運命の人〜完全拒絶〜」
激しく狂おしい音楽の予感を胸にお楽しみください。
(リンクは後書きの下にあります)
【2-3 本文】
昼のピークタイムが近づいていた。
配達依頼の通知が、次々とスマートフォンに表示される。
近くのコンビニ。
駅前の弁当店。
少し離れたファミリーレストラン。
どれも、受ければすぐに売上になる注文だった。
しかし、一雄は受けなかった。
待っているのだ。
美月の働くハンバーガーショップの注文を。
その店は、配達注文数が多い。
中心部へ移動すれば、すぐに注文を受けられる可能性が高い。
それは、一雄にも分かっていた。
分かっている。
分かっているのに、移動しなかった。
「ここで待つことに意味がある」
一雄は、マンションを見つめた。
「運命の出会いがあった場所の近くで、運命の注文を待つ」
それが重要なのだ。
効率ではない。
売上でもない。
美月に会うための、きっかけが必要だった。
時間だけが過ぎていく。
一時間。
二時間。
そして、三時間。
スマートフォンを握る手が、少し疲れてきた。
それでも、一雄は待ち続けた。
午後になり、太陽の位置が変わった。
マンションの壁に映っていた影が、少しずつ伸びていく。
そのときだった。
スマートフォンが、短く震えた。
画面に、見慣れた店名が表示されている。
美月の働くハンバーガーショップ。
一雄は、すぐには画面をタップしなかった。
深く息を吸い、ゆっくり吐く。
そして、何でもないことのように指を伸ばした。
依頼を受ける。
「……来た」
一雄は、画面を見つめた。
たった一件の配達依頼。
けれど、一雄にとっては違った。
これは運命の鍵だ。
この鍵があれば、運命の扉を開けられる。
「美月さんに会える」
一雄は、バイクのエンジンをかけた。
たった数キロの移動だった。
しかし、一雄には、長い旅の始まりのように感じられた。
ハンバーガーショップへ向かう途中、一雄は何度も会話の練習をした。
「今日は、晴れてますね」
まずは、天気。
「明日は雨が降るんでしょうか?」
次に、質問。
もし会話が続けば、好きな食べ物や趣味の話をする。星の話もできるかもしれない。
美月が自分に興味を持ってくれたら、歌手としての活動についても話せる。
一雄の胸は、高鳴っていた。
店に到着すると、一雄はバイクを停めた。
商品を受け取りに来ただけなのに、緊張で手のひらに汗がにじんでいる。
ヘルメットの位置を直し、サングラスの角度を確認する。
そして、店内へ入った。
店内を見回す。しかし、美月の姿が見当たらない。「おかしい……」毎週決まった曜日には、必ず出勤しているはずだった。
今朝、マンションから出ていく姿も見た。
それなのに、店内に美月がいない。
一雄は、もう一度店内を見回した。
その様子に気づいた店員が、声をかけてきた。
「ご注文番号をお願いします」
一雄はスマートフォンの画面を確認した。「S1M344です」
「はい。S1M344ですね」
店員は商品を確認し、袋を差し出した。
「商品、こちらでお間違いないです」
一雄は商品を受け取った。
それでも、視線は店内をさまよっている。
「あの……」
言ってしまった。
「今日は、美月さんはいないんですか?」
店員の手が止まった。
美月と親しいスタッフだった。
その場に、短い沈黙が落ちる。
「あの、何かご用事ですか?」
「いやっ、特に用事というわけでは……」
一雄は慌てて首を振った。
ただ、美月がいない理由を知りたかった。
それだけだった。
そのとき、店の奥から美月が戻ってきた。
「休憩、終わりました。次の方、どうぞ」
一雄は、反射的に声を上げた。
「あっ、美月さん!」
美月が振り返る。
「あ……配達員さん?」
いつもの笑顔。
けれど、一雄には、どこか特別な笑顔に見えた。
【2-4へ続く】
第6話をお読みいただきありがとうございました!
明日の同じ時間に、第7話「2-4 天気の話 」を投稿予定です。お楽しみに!
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【主題歌のお知らせ!!】
主題歌は2つ 別々の視点から作詞しました!
①iti「運命の人〜暴走〜」
②UVA48「運命の人〜完全拒絶〜」
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