↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/22

1-3 深夜の配達

挿絵(By みてみん)


【今回の見どころ】


深夜一時、コンビニからの1件の配達依頼。

向かった先は、月を意味する名の美しいマンション。

そこで一雄を待っていたのは、彼の世界を永遠に変えてしまう「無防備な素顔」だった――。



【作品紹介】


本作は、noteで「運命の人〜ストーリー〜」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。


一人の男がバイト先のハンバーガーショップの店員(実は地下アイドル『UVA48』のセンター・美月)への純愛を暴走させ、周囲を巻き込む大騒動へと発展していく、切なくも狂気的な音楽連動型・現実世界恋愛小説です。


【公式連動楽曲】


iti視点ソング『運命の人〜暴走〜』の歌詞世界と完全シンクロ!!

一雄の脳内で運命の歯車が激しく回り出す瞬間を、ぜひメロディと共にお楽しみください!


【2作連動の仕掛け】


主人公「宇場一雄」は、別作品『フーデリオン』の主人公と同一人物です。あちらの作品に登場する「喉に傷があるバイク屋のオヤッサン」の正体とは? そして店に飾られた「一輪の赤い薔薇」の真相とは……?


二つの世界線が交錯する時、本当の『運命』が紡がれます。


【連動楽曲】


YouTube・noteにて順次公開!

①iti視点「運命の人〜暴走〜」

②UVA48視点「運命の人〜完全拒絶〜」


激しく狂おしい音楽の予感を胸にお楽しみください。


(リンクは後書きの下にあります)

【1-3 本文】


その日の夜も、一雄は稼働を続けた。


時刻は、深夜一時を過ぎている。

注文は少なくなっていたが、もう少しだけ売上を伸ばしたかった。


売上目標まで、あと数千円。

この一件を終えたら帰ろう。

そう思いながら、一雄は大通りから少し外れた路地にバイクを停めた。


配達員の間では、注文を待ちながらその場に留まることを「地蔵」と呼ぶ。

何もせず、ただ注文が入るのを待つ。

まさに、地蔵のように。


一雄はバイクにまたがったまま、タバコに火をつけた。夜の空気は冷たかった。

吐き出した煙が、街灯の明かりの中でゆっくりと消えていく。


スマートフォンには、動画サイトの画面が表示されていた。そこには、先日投稿した自分の歌の再生数が出ている。一雄は数字を確認した。


再生回数、三百二十七回。

悪くない。

悪くはないが、決して多くもない。


「いつか、一万人くらい聴いてくれないかな……」呟いてから、一雄は自分で苦笑した。

たった三百回程度で一喜一憂している自分が、少し情けなく思えた。


歌っている時は、自分が世界の中心にいるような気分になれる。

なのに歌い終わると、再生数やコメントのひとつひとつに振り回される。


注目されたい。

けれど、注目されるのは怖い。

その矛盾を抱えたまま、一雄はタバコの灰を落とした。


その時、スマートフォンが震えた。

新しい注文が入った。

「よし……」

一雄は画面を確認し受諾した。


注文先は、近くのコンビニエンスストア。

深夜の注文としては珍しくない。

商品欄には、洗顔料や化粧水など、女性が使うことの多い商品が並んでいた。


注文者の名前は男性名になっている。

女性客が、安全のために男性名を使っているのかもしれない。


一雄は、そう考えた。


バイクのエンジンをかける。

夜の街を走り、コンビニへ向かった。

商品を受け取った一雄は、ナビを起動した。

目的地までは約三キロ。


完成して間もない、綺麗なワンルームマンションだった。初めて行く場所だったので、一雄はマンション名を声に出して確認した。


「グラン・ルーナ……」

月を意味する名前だった。

夜空には、ちょうど大きな月が浮かんでいる。

偶然にしては、妙に印象的だった。


マンションの前に到着すると、一雄はバイクを停めた。エントランスにはオートロックがあり、部屋番号を入力して呼び出すタイプだった。


一雄はインターフォンを押した。

返事はない。

もう一度押す。

やはり返事はなかった。


しばらく待っていると、突然、自動ドアのロックが解除された。無言のまま、ドアが開く。

「……あれ?」

一雄は少し驚いた。


しかし、深夜の配達では珍しいことではない。

相手が寝間着姿だったり、顔を合わせたくなかったり、いろいろな事情がある。

危機管理のひとつなのだろう。

そう考え、一雄はエレベーターへ向かった。


指定された階で降り、部屋の前に立つ。

一雄は小さく息を吐いた。

できることなら、置き配で済ませたかった。


だが、今回は現金払いだった。

対面する必要がある。女性だろうか。

それとも、同棲している男性が出てくるだろうか。そんなことを考えながら、一雄はインターフォンを押した。


数秒後。

ドアの向こうから、かすかな足音が聞こえた。

そして、鍵が外れる音。

ドアがゆっくりと開いた。


現れたのは、小柄な女性だった。

薄い色の寝間着を着て、長い髪を無造作に下ろしている。

一雄は、いつものように相手の顔を見ないように、視線を少し下げた。


女性が口を開いた。

「すみません。一万円札なんですけど、大丈夫ですか?」


その声を聞いた瞬間だった。

一雄の身体が、反射的に動いた。


顔を上げる。

目の前の女性と視線が重なる。


一雄の頭の中が、真っ白になった。

「……え?」


女性も、目を見開いた。

「……あっ」


二人の間に、数秒の沈黙が落ちる。

月明かりに照らされた、寝間着姿の女性。

その顔を、一雄は毎日のように見ていた。


ハンバーガーショップのカウンターで、いつも笑顔を向けてくれる女性。


中村美月。

その本人が、今、自分の目の前に立っている。

自宅のドアを開けて。

寝間着姿で。


挿絵(By みてみん)


「配達員……さん?」

美月の声には、驚きと戸惑いが混じっていた。

一雄の脳内では、数え切れないほどの言葉が駆け巡っていた。


どうしてここにいるのか。

なぜ美月が注文したのか。

これは偶然なのか。


それとも――。

運命なのか。


「あ……えっと……」

一雄は、何か言わなければと思った。

 しかし、口から出てきたのは、情けない声だった。


「あの……その……」

「大丈夫ですか?」

美月が心配そうに、少し顔を覗き込む。

その瞬間、一雄の心臓は、さらに大きく跳ねた。


「はひっ!」

「……はい?」

「大丈夫です! 一万円、大歓迎ですっ!」

言ってしまってから、一雄自身も意味が分からなかった。


美月は、ぽかんとした。

そして次の瞬間、吹き出した。


「大歓迎ですか?」

「はいっ! 大歓迎です!」

「ふふっ……ありがとうございます」

美月が笑った。

店員として作られた笑顔ではない。

驚きと戸惑いが混ざった、自然な笑いだった。


その笑顔を見た瞬間、一雄の中で何かが変わった。今まで抱いていた淡い好意が、急に形を持った。

胸の奥に、強く刻まれる。


――運命だ。


それは、疑いようのない確信だった。


宇場一雄が我に返った時、彼はマンションの外にいた。

配達を終えた記憶が、ほとんどない。

気づけば、バイクの前に立っていた。


冷たい夜風が頬を撫でる。

一雄は、空を見上げた。

大きな月が、マンションの上に浮かんでいる。

その月に、美月の笑顔が重なった。


「……運命だ」


今度は、声に出していた。

誰もいない夜道で、一雄は笑った。

口元が緩み、胸の奥が熱くなる。

心臓の鼓動が、いつまでも収まらない。


中村美月。


いつも会う店員。

今日、自宅へ配達した女性。

そして、自分に自然な笑顔を見せてくれた女性。


ただの偶然が、三つ重なった。

三つ重なれば、それはもう偶然ではない。

それは――。


「運命だ……」


一雄はもう一度、月に向かって呟いた。

その夜から、彼の中で美月は、ただの店員ではなくなった。

運命の人になった。



第一章 〜完〜


【2-1へ続く】

第3話をお読みいただきありがとうございました!

明日の同じ時間に、第二章「2-1 運命の人」を投稿予定です。お楽しみに!


少しでも面白いと思ってくださったら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】でのポイント応援や、ブックマーク登録をぜひよろしくお願いいたします!


【主題歌のお知らせ!!】

主題歌は2つ 別々の視点から作詞しました!

①iti「運命の人〜暴走〜」

②UVA48「運命の人〜完全拒絶〜」


アプリから閲覧している方はお手数ですが

YouTube・noteから「なおパパ」で検索をお願いします!!


▼▼▼このアイコンが目印▼▼▼

挿絵(By みてみん)


サイトから閲覧している方は

▼▼もっと下に楽曲・noteリンクがあるよ▼▼


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。